日時 2016/5/21(土) 10:00〜13:00 晴
場所 生田緑地 ビジターセンター〜菖蒲池南斜面〜野鳥の森の3地区〜菖蒲池南谷戸〜中央広場南地区〜中央広場北雑木林
参加 今井田恵方、内山涼湖
(中央大学総合政策学部)澤田史香、鈴木南十星
(和光大学現代人間学部)大友舜太、庄司 彩
(資生堂)莇 清
(富士通)森 正徳、湯山 修
(生田緑地運営共同事業体)額谷悠夏
(市民部会事務局)岩田臣生、岩田芳美 12名
平成28年度第2回里山倶楽部Bは下図のコースを歩き、過去に植生管理の活動を行っている@〜Fの7地区を観察し、活動の振り返りを行うことにしました。
集合場所は東口ビジターセンター前としました。
近くの車止めにクヌギカメムシが現れました。
@菖蒲池南斜面(A20)
ここは2008年11月30日の市民部会として、川崎市北部公園事務所職員3名を含む10人の参加者でアオキの除伐を行った地区です。
目的は、東口を入って直ぐ見える場所がアオキの純林状態であるのは、生田緑地の生物多様性を考えている立場としては恥ずかしいことと思い、アオキを除伐することにしました。
除伐後の植生管理計画については、植生の変化を観てから考えることとしていました。
アオキの幹は太く、樹齢40年超でした。
除伐後の斜面は暗く、コナラの発芽もありましたが、育つことはなく、アズマネザサも生えてきませんでした。
その後、林内を少し明るくしようと考え、2013年11月16日の里山倶楽部Bにおいて、
当該斜面の上側の樹林地の常緑樹を除伐する活動を行いました。
4〜6月は野鳥の繁殖期ではありますが、この斜面の下端部であれば問題ないと考え、林内に入って、その後の変化を観察することにしました。
林床斜面の上半部は、シダ類の繁茂はあるものの、大きな変化は見られませんでした。
斜面の下の方は、傾斜が緩くなる辺りから、アズマネザサ、ヤツデなどが繁茂し始めていました。
今後の管理については、斜面下端のスギは除伐した方がいいという意見がありました。
この件は、単純にスギを伐採すればよいということではなく、タマアジサイやトキホコリ、或は希少クモ類なども含めた生物に対するインパクトを考慮しながら、公園緑地としての景観づくりも考えることだと思います。
暫く放置してあったから見ておこうという程度の軽い気持ちでモニタリングの対象に含めた地区でしたが、改めて、
この斜面下の園路付近も含めた区域の自然を保全するための管理計画を検討することを課題として受け止めることになりました。
A野鳥の森の自然探勝路付近
ここは、生田緑地では唯一のキバナアキギリの生育地だと思います。
2014年10月18日の里山倶楽部Bで、当該地の探勝路まで覆いかけていたアオキ、ヤツデ、アズマネザサなどを少し除伐する活動を行いました。
里山倶楽部Bとしては、特定の植物の生育地において、その植物の保護のために活動するというのは初めてのことでした。
活動中に、何度も踏まないように注意し続けていましたが、かなりの範囲が踏み潰されていました。
力仕事は任せておけという参加者が多い里山倶楽部Bですから、除伐に夢中になってしまうと、足元の草には目がいかなくなってしまうのです。
その後、どうなったか気になっていましたので、里山倶楽部Bとしてモニタリングすることにしました。
キバナアキギリは、無事に生育していました。
2014年の活動に参加した女性からも、株が増えているという意見が聞かれました。
増えているかどうかは兎も角として、ヤブ状態から脱して、小さな草地状の部分ができていました。
ただ、その部分は明るくなったためか、ドクダミなど、他の草本も元気になっていました。
また、刈り残した常緑樹やアズマネザサが目立つようになっていました。
キバナアキギリは、神奈川県植物誌2001によれば、県内では、丹沢、箱根、小仏山地とその周辺、三浦半島、多摩丘陵に分布し、シイ・カシ帯〜ブナ帯下部の樹林内に生えるとあります。
そして、麻生区、多摩区、高津区に記録があります。
普通の来園者が楽しめる自然として、僅かな範囲のことですから、キバナアキギリを優先させる管理を行っても問題はないと思います。
B野鳥の森の観察舎付近
野鳥の森の観察舎は、野鳥の森の中心部にあって、かつては、植栽されたと思われるヒサカキに覆われ、暗く、不気味な雰囲気を醸していましたが、野鳥観察には必要な設備なのかと思って我慢していました。
ところが、思い切って、野鳥班に尋ねたところ、使っていないという呆気ない返事でした。
必要ないものなら小舎の撤去もありとの議論になりましたが、それには手続きも必要だろうとのことから、まずは植生管理によって明るい雰囲気の場所にしてみようということになりました。
そして、2013年10月19日の里山倶楽部B(参加者5人)によって、ヒサカキやアズマネザサなどを除伐しました。
この活動による効果は大きく、辺りから暗い印象がだいぶ消えていました。
ただ、観察舎には壁があるために、積極的に利用したいと思わせる状態にはなっていませんでした。
また、当該地区には、日本固有種のコアジサイがありましたので、活動はこれの保護も兼ねていましたが、今回、丁度、コアジサイが開花していて、花が咲いている生育範囲が広がったことを確認しました。
ササヤブを後退させ、林床が明るくなったことが良い成果をもたらしたと思います。
コアジサイは、神奈川県植物誌2001によれば、県内では箱根、丹沢、小仏山地、相模原台地などに多く見られ、樹林内に生えるとあり、川崎市内では多摩区でのみ記録されています。
前回の活動から2年半経ってのモニタリングでしたが、良い効果が出ていると実感しました。
先人が整備してくれた観察舎ではありますが、益々、無い方が良いものになってきたと思います。
改めて、小舎を解体して、自然に戻すことを検討するべきだと思いました。
C野鳥の森の奥
野鳥の森の奥の園路がU字状になった辺りでは、2012年12月15日の里山倶楽部Bにおいて、
園路下側の斜面にあったアズマネザサやアオキのヤブを、野鳥班との話し合いで了承された範囲について除伐する活動を行いました。
その後、2014〜2015年?に一部で土砂崩れを起こして、土留工事がなされました。
今回のモニタリングでは、斜面の植生がかなり傷んでいる様子で、数本残してあったアオキなど汚らしくさえ思える状態でした。
もはや、2012年末の植生管理のモニタリングということは困難な状態になっていると思いました。
菖蒲池南斜面(A20)の上側の樹林
菖蒲池南斜面の上側の区域については、2013年11月16日の里山倶楽部Bにおいて、常緑樹の除伐を行いましたが、園路に面した部分のアズマネザサ刈りは行いませんでした。
園路に面した部分のアズマネザサ刈りについて意見交換を行いました。
刈ってあった方が、来園者は気持ちよく歩ける。
刈ってあると、来園者が樹林に入り易くなる。
いろいろ意見はありますが、気持ちよく歩ける公園という視点からは、ヘアピンカーブになっている辺りの園路沿い部分のアズマネザサは毎年刈り取って、開けた感じに管理した方が良いかも知れません。
これは、指定管理者の活動として検討してもらえるように、相談してみることにします。
続いて、ヒノキなどの針葉樹についても、意見交換がなされました。
D菖蒲池南谷戸上部(A19)
菖蒲池南谷戸と呼称している小さな谷戸については、2008年7月6日の市民部会に、国士舘大学文学部の磯谷先生を講師に迎えて、微地形と植生の対応関係についての勉強会を開催し、
現地に直接、微地形の遷急線、遷緩線を描く活動を行いました。
この結果は測量会社に依頼して、図面化しました。
翌2009年10月17日の市民部会では、この勉強会で学習したことを踏まえて、当該地区における植生管理について話し合いました。
その結果、目標植生は「高木層は現状程度とし、雰囲気の明るい雑木林とし、谷底部にはタマアジサイが咲く状態」とし、
具体的な活動として「尾根型の上部谷壁斜面(B5、B7)および平滑型の上部谷壁斜面(B6)を対象に、亜高木層を優占していたヒサカキを除伐すること」を合議しました。
そして、2009年12月6日の市民部会において、この活動計画を実施しました。
しかし、亜高木層の除伐だけでは林床の照度は向上してくれなかったようで、林床には、1種類の植物を除き、植物の発芽すら見られませんでした。
この裸地状態を改善するために、高木層に小さなギャップをつくり、B5、B6、B7の林床の一部を明るくして植生回復を試みることについて意見交換を行いました。
そして、このために伐採する必要がある最小限の樹木の選定を始めることを合議しました。
野鳥の森の常緑樹林化が進んでいる場所
Eへの移動途中に、常緑樹林化が進んでいる場所を観察しました。
E中央広場南地区(A23-3)
次に、中央広場南地区(A23)については、2010年10月6日の市民部会で植生管理計画について話し合い、
A23-3については、2011年9月17日の市民部会においてアズマネザサ刈りを実施しました。
今回は、当該地を1周して、外側から樹林内を観察しました。
現状はアズマネザサがかなり繁茂していましたので、参加者からもアズマネザサ刈りを実施した方が良いという意見が出ていました。
当該区域外周の自然探勝路を歩きながら観察していたら、アカショウマが1本、開花していました。
パーゴラの下で休憩
アジサイ山を見た大学生から、「違和感あり過ぎ。」との一言がありました。
F中央広場北雑木林(A26-1)
中央広場北雑木林については、2011年5月21日の市民部会で現地調査と意見交換を行い、目標植生を「ヤマツツジが咲き、ヤマユリが咲く、明るい雑木林、眺めて楽しい雑木林。
アオダモ、リョウブ、ウグイスカグラなどが所々に見られる雑木林」とすることとしました。
しかし、繁茂していたアズマネザサや竹は尋常ではなく、同年夏に業者による竹・アズマネザサ刈りを実施しました。
そして、その後、2011年12月17日の市民部会において、竹と常緑樹などの除伐を実施しました。
その後、2012年は、2012年10月20日の市民部会でアズマネザサ刈りを実施しました。
2013年は、生田緑地に近い場所にあった企業の希望で、特定の企業による里山倶楽部としてアズマネザサ刈りを計画しましたが、天候に恵まれず、2度の延期の後に、雪天中止となりました。
このため、翌年2014年3月15日には水田ビオトープ班がアズマネザサ刈りを実施しました。
更に、2015年2月7日に水田ビオトープ班がアズマネザサ刈り、
同年2月10日に水田ビオトープ班がアズマネザサ刈り、
同年9月19日に市民部会としてアズマネザサ刈りを行ってきました。
1回の活動で区域全体を刈ることはできていませんが、概ね、年1回程度の管理を行ってきた雑木林です。
一人ずつ、感想や意見を聞きました。その中から、数件を記します。
●中央広場南側地区のA23-3はアズマネザサが多いと思った。
●目黒の自然教育園などは草木が茂り放題で歩きにくかったが、生田緑地は歩きやすくて良かった。
●実際にササ刈りをした人から、変化についての話が聞けたのが良かった。
●明るさによって花の咲き方が違ってくることについて知ることができて良かった。
●植物によって好む明るさが異なるので、暗いところも意味があることを知ることができて良かった。
●どこで折り合いをつけてバランスをとるかが大変だけども大切だということを感じた。
●来園者の立場では、ある程度明るく管理されていた方が、女性1人でも歩きやすい。
●Eのアズマネザサ刈りを里山倶楽部Bで実施するなら参加したい。
●生物多様性の観点から自然に任せる所と人が手を入れて管理すべき所との境界線をどこに置くかが難しいと思う。
また、生物の立場から考えるか、利用者の立場から考えるかによっても管理の仕方が変わるので難しいと思った。
●体力を要する活動に参加する人とモニタリングに参加する人が異なっていて、分かれてしまっているのは問題で、
自然について考えることも、体を使って管理を実践することも、両方に参加してほしいと思う。
もっと参加者が増えてくれると、もっといろいろなことをやれるようになると思うので、そこが残念に思う。
●それぞれの場所の目標を決めることが第一だと思った。
集合写真を撮り、解散しました。
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