里山倶楽部
【2024/11/9 更新】

令和 6 年度第 16 回里山倶楽部
 雑木林の再生を考える会
(生田緑地の伐採更新の見学会)

日 時)2024年11月9(土) 9:30〜12:20 晴
場 所)生田緑地 中央広場(集合)
    飯室山南皆伐更新地区、芝生広場上雑木林、ハンノキ林東地区、萌芽更新地区
参加者)里山倶楽部メンバー(伊澤高行、加登勇司、佐藤優子、佐藤功一、廣瀬朗子、吉澤正一)
    武蔵野の森を育てる会(田中雅文、田中純江)
    水沢森人の会(水野憲一、本木英子、本郷一雄)
事務局)岩田臣生        参加者 12名

調査団としては、全国都市緑化かわさきフェア生田緑地会場のイベントへの協力として、 中央広場での野外展示に参加し、生田緑地の生物多様性保全の活動を写真で紹介しました。
  展示内容は こちらで閲覧できます。
また、併せて、生田緑地で行ってきた伐採更新についての現地見学会「雑木林の再生を考える会」を行うことにして、その1回目を、この日に開催しました。
伐採更新は、ナラ枯れに対する対応策として、2008年に考えたことです。
見学会参加者を募集したところ、市内菅生緑地西地区水沢の森で活動する水沢森人の会(水野憲一)、 東京都武蔵野市の境山野緑地で活動する武蔵野の森を育てる会(田中雅文代表)が参加してくれました。
伐採更新は、2011年から里山倶楽部として行ってきましたので、里山倶楽部の活動として、この見学会を行うことにしました。
今回参加した里山倶楽部メンバーは6名で、総勢12名での開催となりましたので、草の根交流としての意見交換ができたと思います。


(上図)活動場所図

(9:30 中央広場に集合)
中央広場に置かれた調査団水田ビオトープ班作成の野外展示の前に集合し、参加者の自己紹介、 調査団と市民部会などについての概略説明を行いました。

(特定非営利活動法人かわさき自然調査団とは)
青少年科学館が自然系博物館としての活動として、川崎の自然を調査・記録する活動を、1983年に、行政・専門家・市民の協働で始めました。
10年後に、この調査を行っていた公募市民の団体化を行い、「かわさき自然調査団」が生まれ、更に、若宮館長の希望を受けて、2003年にNPO法人化を行いました。

(水田ビオトープ班)
NPOとなってから、土壌動物班の要望を受けて、事務局が北部公園事務所と協議して、ホタルの里に田圃を再生することになりました。
この活動のために、自然に手をつける活動をするための班として、2004年に、水田ビオトープ班を新設し、ホタルの里に田圃を再生し、 他の班・科学館・北部公園事務所・雑木林を育てる会などの応援を受けて、初めての田植えを行いました。

(市民部会 愛称:里山倶楽部)
2006年に、生田緑地植生管理協議会の会則を変更して、市民なら誰でも参加できる、現地での活動を重視する市民部会の活動を始めました。
市民部会の当初の活動は、植生管理計画づくりでした。
この植生管理計画は、対象地区の目標植生、植生管理主体、植生管理方法などについて、関心のある市民が現地に集まって、話し合い、合議して、植生管理計画の案を作成し、 それを植生管理協議会に諮って、植生管理計画とするものでした。
2008年1月に開催した市民部会で、萌芽更新地区について、現地観察と協議を行い、萌芽更新が失敗したことを確認し、改めて、 萌芽更新を観察できる雑木林にすることを合議しました。
萌芽更新地区の伐採更新については、今回の見学会の最後に、現地を観察していただきました。

その2008年の市民部会の時に、生田緑地でも、将来、ナラ枯れが起こるかも知れないと、当時の生田緑地植生管理協議会の倉本会長から教えられ、ナラ枯れについて調べました。
すると、活力の高い健康なコナラには、カシノナガキクイムシは侵入して生活することができないと知りました。
小面積でも、若いコナラ林を育成することができれば、ナラ枯れが始まっても、そこのドングリで苗をつくることができるし、ドングリが散布されている場所であれば、 ナラ枯れコナラを伐採して雑木林を再生することができると考えました。
そこで、皆伐更新技術を取得しておきたいと思い、北部公園事務所と相談して、園路から見えない樹林を見つけて、皆伐更新を実験することになりました。
それが飯室山南皆伐更新地区で、2010年末に北部公園事務所が皆伐し、市民部会が更新管理を行って、雑木林を育成し、14年が経過した現在、若い雑木林になっていますので、 最初に、ここを観察していただきました。

そして、飯室山南皆伐更新地区から萌芽更新地区に移動する途中で、ナラ枯れが始まってから、伐採更新を計画して、 里山倶楽部が大径木伐採からの伐採更新を始めた芝生広場上雑木林とハンノキ林東地区の伐採更新を観察していただきました。

挨拶を終えたところで、里山倶楽部では恒例の集合写真の撮影を行いました。

里山倶楽部
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(飯室山南皆伐更新地区に向かう園路で)
園路脇に、ナラ枯れしているのに伐採されていないコナラを見つけた参加者から、これについての説明を求められました。
行政は、園路を通行する来園者にとって危険な枯損木は伐採するが、その危険が無い枯損木は伐採しないこと、 また、その場所は民有地であったため、伐採するには地権者の許可が必要であることを説明しました。
生田緑地は都市計画緑地であって、全ての土地が公有地化されているわけではないことを説明しました。
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皆伐更新地区へのアクセス路は整備されていません。
園路柵を乗り越えて、雑木林の林内の落枝が散乱し、アズマネザサが茂る路を皆伐更新地区に向かいました。
里山倶楽部メンバー以外の参加者は、驚いていました。
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(イ 飯室山南皆伐更新地区)
皆伐更新は、20m×20mの範囲で計画し、2010年末に、設定範囲のコナラ大径木23本、クヌギ大径木1本のほか、南側隣接地にあったイヌシデの大木などを 北部公園事務所が伐採しました。
また、業者による皆伐後に残っていたシラカシなどの常緑樹小径樹木などは、水田ビオトープ班が伐採しました。
皆伐後、雑木林が形成されるまでには7年を要するとのことから、長期間の見守り管理のために、子どもたちに声かけを行って、 母子参加型の里山倶楽部Aを組織しました。
更新管理活動は、4〜12月に、毎月1回、アズマネザサだけを刈ることとしましたが、当初の3〜4年は、アカメガシワなど、成長の速い樹木の引き抜きなども行いました。
皆伐後に植える苗が必要と考えて、別の場所で苗木づくりを行っていましたが、それは必要ありませんでした。
実生が育ってきた段階での間伐は悩んだところでしたが、基本として、コナラとヤマザクラは大事にすること、つまり、これらの成長を阻害すると思われた樹木を間伐、 その他は自然淘汰、弱った樹木を間伐対象として除伐してきました。
2017年8月の市民部会で、若齢林に育ったことを、専門家に確認してもらい、皆伐更新が成功していることを祝いました。
皆伐したら消えると考えていた草本が、樹林が形成されたら戻っていました。
樹木が成長し、太さ20cmほどに育った樹木が多くなりましたので、そろそろ、萌芽更新目的の伐採を始めようと考えています。
当該地区は、アクセスが容易ではないことを理解してもらえたと思います。
この雑木林は、人為的に種を決めてつくった雑木林ではなく、埋土種子を発芽させて、それを育てた雑木林なので、 この場所の自然が自ら構成した雑木林と言える雑木林だと思います。
生物多様性を保全した雑木林の再生になっていると考えています。
更に、今回参加した皆さんは、この雑木林が、若齢林とはいえ、魅力ある雑木林であることを知っていただけたと思います。
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芝生広場上雑木林に近い尾根路には、コウヤボウキが咲いていました。
コウヤボウキ

(ロ 芝生広場上雑木林)
2ヶ所目は芝生広場上雑木林としました。
ここは、生田緑地のナラ枯れが始まってから、里山倶楽部で、現地を調べて、話し合って、伐採更新することを決めた雑木林です。
ここの活動は、大径木伐採や高さ4mものアズマネザサのヤブを伐開することから始めなければなりませんでした。
また、分布が少ないと思われるツノハシバミ、アオハダなどがある雑木林なので、皆伐ではなく、コナラやヤマザクラが発芽し、育ってくれれば良いという発想で、 択伐的な伐採更新を考えて、2020年1月〜2022年1月に、アズマネザサ除伐、大径木伐採などを行ないました。
今年は、この雑木林の中を一周できるように、観察路をつくりましたので、そこを歩いてもらいましたが、険しいヤブ路の体験になったようでした。
里山倶楽部
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この雑木林は北向きの斜面で、樹林内には、集まって話し合いができるような場所が殆どありませんので、伐採更新の活動中にベースにしているベンチの辺りで一休みしました。
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3番目は、ハンノキ林東地区にしましたが、そこに移動する途中、谷戸の湿地地区として、水田ビオトープ班が保全管理している場所を、木道から観察しました。
そこは、かつて、谷戸に田圃が広がっていた時には、一番奥の田圃があった所で、狩野川台風による土砂崩れで、地主さんが田圃を諦めて、畑への転用を考えて、 乾燥化を進めた場所で、乾燥化によって消えていた植物の復活を目指して、2004年12月に、水田ビオトープ班が最初に自然保全活動を始めた場所であることを説明しました。
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(ハンノキ林地区)
ハンノキ林入口では、ナラ枯れが起こったことで、ハンノキ林が明るくなり、ハンノキが幹部にも枝葉をつけるようになって、元気になったことを話しました。
このハンノキ林は、環境省の特定植物群落に「生田のハンノキ林」として、指定されています。
里山倶楽部では、2022年3月に、ハンノキ林西側地区のナラ枯れコナラ伐採や常緑樹の除伐に着手しましたが、ナラ枯れコナラの伐採を行政が実施してくれるというので、 そこで中断しました。
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(ハ ハンノキ林東地区)
2022年10月〜2024年2月に、東側地区の伐採更新として、大径木伐採とアズマネザサ刈りを行いました。
ハンノキ林東側の尾根路に上がって、ハンノキ林東地区の急斜面を見下ろしました。
ここは、ハンノキ林に面する急斜面で、下方のハンノキにダメージを与えないように、大径木伐採を行わなければなりませんでした。
このため、一本一本、どのように伐倒するかを考えて、ロープを張って、ローププーラーで引っ張って、伐採しました。
陽当たりが良いということか、アカメガシワ、ヒメコウゾなどが、アズマネザサ以上に勢いよく成長してきたため、立っているだけでも辛い急斜面で、 コナラ実生を育てるための今年のアズマネザサ刈りは大仕事でした。
急斜面ではあるものの、ドングリが発根して、実生が育っていますので、苗木を持ち込んで植える必要はないと思います。
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(ニ 萌芽更新地区)
萌芽更新地区は、1998年末に、国庫補助事業によって、萌芽更新を観察できる雑木林を目指して伐採し、補植も行った雑木林です。
その時に整備されたカントリーヘッジは、今も使えるもので、役立っているので、見ていただきました。
萌芽は5年で枯れて、2008年1月の市民部会で失敗を確認し、改めて、萌芽更新を観察できる雑木林を目標植生として、植生管理することを合議しました。
そして、萌芽が育てないほど暗くなっていた雑木林の大径木の伐採を始めました。
林内が明るくなると、1998年末に捕植されたクヌギが急に成長し始めて、直径20cmを超えるようになりましたので、2017〜2019年に、萌芽更新目的の大径木伐採を行いました。
先日も、直径23cm、樹冠を大きく広げて、林床を暗くし始めていたコナラを伐採しましたので、その切り株を観察してもらいました。
里山倶楽部は、ノコギリを使って、直径50cmもの大径木も伐採できるようになれたのは、ここで、樹木伐採の経験を積んだことによるものと考えています。
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萌芽更新地区のシンボル的な萌芽株は、2017年に伐採したクヌギです。
もや分けは、萌芽の状態を観て、やがて枯れ落ちるだろうと思われる萌芽枝を伐る程度にしてきました。
現在、萌芽枝の中の2本だけが一際太く育っていましたので、この状態を観察してもらいました。
これは萌芽更新中ですが、本来の萌芽更新は、枝の状態ではなくて、完全に新しい1本の木になることだという話をしました。
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今日の伐採更新地見学の最終段階になって、感想、雑談が始まりました。

公園緑地の適切な植生管理のためには、行政と市民の適切な協働が必要だと思います。
ただ、生物多様性を保全するための植生管理は、時間をかけなければできない活動なので、市民が楽しみながら行うことが適切だと思います。
かつては、公園緑地の植生管理は、市民は関われないものだと思っていましたが、生物多様性を保全するための植生管理は、 市民が楽しめる植生管理でなければ達成できないと考えるようになりました。

ナラ枯れ後の雑木林の再生には、伐採更新が不可欠だと思いますが、市民活動としては安全第一でなければならないと思います。

1本の伐採は1日で済ませるのかという質問がありましたが、萌芽更新目的の伐採でなければ、何日かけても問題無いと思います。

助成金は使っているのかという質問がありましたが、助成金は活動終了後の事務処理が大変で、調査団の場合は、その全てを私が行なわなければならないのが現状ですので、 最近は、できるだけ使用しないようにしています。

調査研究活動は、調査対象毎に、班を設置していて、現在の班は、種子植物班、シダ植物班、昆虫班、野鳥班で、団員は 48名です。
地学班は、生田緑地観察会のみの活動で、団員は 7名です。
水田ビオトープ班は、15名です。
団員数は、現在、73名ですが、昔は、この2倍程度であったのではないかと思います。

年間活動日数についての質問がありましたが、水田ビオトープ班では、活動を義務付けることはしていません。
里山倶楽部は、調査団への入団の必要がありません。
一人の市民として、都合がよくて、活動したいと思った時に、参加すればよいことにしています。

初めての「雑木林の再生を考える会」は、結果的には、草の根交流になってしまいましたが、一方的に、説明に追われていたように思います。
雑木林再生の一つの方法として、調査団として、伐採更新を提案していますが、反論や、応援となる意見交換には進展しませんでした。
12時を過ぎてしまったので、終了することにして、中央園路まで上がって解散しました。

かわさき自然調査団の活動

特定非営利活動法人かわさき自然調査団
Kawasaki Organization for nature Research and Conservation