生田緑地植生管理協議会
第1回市民部会「目標植生を描く」
日時 2006年8月6日(日)10:00〜11:50 晴
場所 生田緑地芝生広場( 集合は北部公園事務所前 ) 
講師 倉本 宣(明治大学農学部教授、生田緑地植生管理協議会会長)
参加市民
 井口 実(生田緑地植生管理協議会副会長)、岩田芳美( 同左 )
 井口かおる、岩田臣生、加藤 左、喜多大巳、久保田浩二、土屋邦雄、土屋隆夫、寺尾隆典、寺尾トミ、中島光雄、堀内弘栄、松岡嘉代子(14名)
北部公園事務所
 伊藤将典(所長)、井上久子、鈴木修司(植生管理協議会事務局担当)、堀江 洋 (4名)
                              合計19名 

【鈴木】 生田緑地の植生管理協議会が平成14年度に発足して4年目を迎えています。今までは登録された会員の方だけの会でしたが、これからは一般市民の方にも入って戴きたいということで市民部会を作りました。その市民部会の第1回が今日になります。


【倉本宣】 植生管理協議会の会長を中島さんの次に勤めさせて戴いている倉本です。 市民部会の活動では生田緑地の林をどうしていったら良いかということを考えて行きたいと思います。その1回目として芝生広場の林を皆で見て、 そこについてどうしていったらよいかを考えます。いろいろな意見が出ると思います。どんな意見が出るかということを見くらべようと言うことになっています。


【伊藤将典】  今日は市民部会の第1回目という事で倉本先生からお話がありましたが、生田緑地(約180ha)の中には沢山の自然があります。 この自然を管理保全するのは行政だけではなかなか難しいことで市民の方々のご協力が必要となっています。 今回のような研修をこれからも続けて生田緑地をよい環境として保全をして行きたいと思います。今後とも宜しくお願い致します。


【鈴木】 最初に自己紹介からお願いいたします。

【寺尾(隆典)】 初めて出席しました。東生田1丁目に引っ越してきました。

【寺尾(トミ)】 転居して1カ月半位です。初めて参加させていただきます。

【堀江】 北部公園事務所で整備班長をしている堀江です。皆さんの生田緑地にして行くために我々もいろんなことを考えています。 一緒に理想的な緑地にして行くことができればよいと思います。

【倉本】 今度は個人的なことを話します。住んでいるのは国立で、丘陵が無いので、生田緑地に来ると新鮮な感じがします。大学の学生がいろんな場面でここでお世話になっているので少しでも恩返しができたらと思っています。

【岩田(臣生)】 宮前区在住です。かわさき自然調査団水田ビオトープ班として2年半前からホタルの里がある谷戸で田んぼの再生をしたり、湿地の再生をしたりという活動をしています。

【松岡】 東生田3丁目に先祖代々住んでいます。毎日のように生田緑地を歩いて10年になります。植生や生物のことは無知なので勉強したいと思います。 因みにコナラとクヌギの区別がつきません。向ケ丘遊園の緑を守り、市民憩い場を求める会の事務局長をしています。

【井口(実)】 雑木林を育てる会で、皆さんと活動をしています。

【加藤】 南生田から来ました。今日は市民部会の1回目なので、2回目以降も出られるようにしたいと思います。雑木林を育てる会に所属しています。

【堀内】 ばら苑の近くの宮前区平3丁目からです。ばら苑ボンティアは600人でスタートしましたが、今年は150人です。私は月に2回以上参加したいと思っています。

【喜多】 平2丁目在住です。雑木林を育てる会に所属しています。緑地の中はある程度歩いていますが知らないことばかりなので、勉強したいと思い、参加しました。

【井口(かおる)】 東生田2丁目在住です。雑木林を育てる会で活動しています。

【土屋(邦雄)】 多摩区長尾在住です。山歩きや里山歩きが好きで生田緑地にも週2〜3回来ます。生田緑地にはすごく関心が有ります。

【中島】 生田5丁目在住です。雑木林を育てる会に所属しています。

【土屋(隆夫)】 南生田の土屋です。雑木林を育てる会に2〜3ヶ月前から参加しています。住んで2〜3年なので、近辺の事も判らないし、植物のことも知らないです。なんでも伐るのが得意です。少しづつ覚えられるとよいなと思っています。

【久保田】 長尾6丁目在住。雑木林を育てる会のメンバーで活動しています。

【鈴木】 公園事務所の鈴木です。植生管理協議会の事務局を担当しています。地元は神奈川県山北町です。どこを見ても山しかない所です。そういうところの自然と都市の中の自然の保全の仕方は違うと思います。皆さんと一緒に勉強して行きたいと思います。

【岩田(芳美)】 宮前区在住です。植生管理協議会の副会長をしています。今日はその立場で受付や記録等を担当いたします。かわさき自然調査団に所属しています。生田緑地とは16〜7年関わっています。今までは昆虫が中心でしたが、今はもっと幅広く関心を持って関わっています。

【伊藤】 北部公園事務所には初めてですが、管理の問題でうかがっていました。川崎駅の近くの本庁にいた時と違い、4月からは緑の素晴らしさを特に感じるようになった。保全、管理をしていくことは特に重大なことだと思う。重ねて協力をお願いしたいと思います。

【井上】 整備班の井上です。4月から異動してきましたが、生まれ育ちは多摩区宿河原と近いので子どもの時から遊びに来ていたが、噴水広場付近で遊んでいた。大人になって広い所だと認識を新たにしている。歩けるこさとを楽しみにしています。

【鈴木】 今日の活動内容の説明をお願いします。

【倉本】 最初に申しましたように、ある林をこれからどのような林にして行こうかという目標を考えるうえで、さまざまな考え方があるということを知る。 それぞれの方の考え方を紙に描いていただき、それを皆で比べて見よう。平たく言うとそのようなことを行ないます。
芝生広場の近くの林でそのような活動をしたいと考えています。折角なので樹木の高さを測ります。これは12mまでの高さが測れます。測高竿と言います。 電線の下の高さを測るようなことにも使われますが、今日は林の断面図を描くために地面から葉の位置の高さまでを測ります。 林の断面図を描いた後、もし変えるとしたらどんなふうに変えるかを考えて見たいと思います。質問が有ったらお応えします。
実物そのものの絵を描くと言うよりは模式図を描いて林がどうなっているかを描いてもらいたい。この図はかなり先入観が入っているものです。 雑木林は基本的に4階建てです。高い木の高木層、少し低い木の亜高木層、低い木の低木層、草が生えている草本層とに分かれていると考えられていて、 その4階建ては場所によって少し違っている訳です。どの様に変形をして、その場所にあるかを見て、模式図に描いていただこうと思います。 スケッチをする訳でなく頭の中で略図に直して、その略図を描いていただくということです。
その後で、例えばこのような大きな木は要らないとか、ここの小さな木は要らないなどの考えを纏めたものをもう1枚描いていただく。 皆さんが描いた目標を比べて見ようと考えています。


【松岡】 目標と言うのは人それぞれの目標ですか。

【倉本】 人それぞれの目標です。目標を描いていただいた後の事は今ここで話しても仕方がないので後ほどとします。

【岩田(芳美)】 まず、現地に行って描いてみましょう。皆さんやった事が無いと思うので、現地を見てみましょう。

【倉本】 因みに授業で略図を描かせたら学生はまったく違うものを描きました。その場所が斜面だったので上手く描けなくて違う図になっていました。
      ■画板,筆記等を参加者に配布。
      ■芝生広場に移動
      ■芝生広場内で対象とする林を確認、ホタルの里に面した端の斜面林とする
      ■測り易い広場に面したエゴを高木の代表として高測竿を使い測量
        ・地面から纏まった葉がある枝までの高さ 6m
        ・エゴの先端まで 14m(12mから先は伊藤所長の目測を信用)
        ・目盛の読み方等を確認。協働作業に盛り上がる。
       倉本先生より高圧線下では感電をするので使えない等という話し有り。



【倉本】 先程の略図で私が描いていた高木の丸のは何mの所に描けばよいか判りますか、上が14m、下は6mです。直径は8mとなります。

【岩田(芳美)】 最初に先生の図で見ていただいた高木層の高さとなります。

【倉本】 ここは林の縁(へり)なので木の枝が開けた方向に張り出しています。典型的な形ではありませんが、斜面の中で行うのは難しかったのでここで測りました。 ここの林を4階建てと見立てるとカシの木があって笹があると見るか、4階建ての亜高木層が無くて低木層だけあると見るか。2通りの見方があることになります。 低木層と草本層があって笹は草本層。 林の断面図を模式図に表して下さい。本当の形を絵として描くよりは略した方がこの場合判りやすいですね。スケッチをしても、この場合は役に立たないです。
今度はカシの高さを測ります。

      ■倉本さん、鈴木さん、亜高木の代表として、カシの高さを測る
        ・一番下の葉(枝)の高さ 1.1m
        ・カシの先端の高さ    5.8m


【倉本】 亜高木層です。5.8〜1.1mの間に葉がついています。こういう木は、この林の中では少ししかありません。次は低木層です。上から3番目の層です。

      ■アオキを低木層として、高さを測る
        ・一番下から葉がある
        ・アオキの先端の高さ   1.6m


【倉本】 一番下から1.6m迄の高さを低木層とします。
      笹の高さを測ります。

      ■笹の高さ          0.45m

【倉本】 今、測りました数字を基に、モノサシがある訳ではないので正確にはできないでしょうが、図に描いて下さい。スケッチではなく、イメージ図です。現在の様子を描いて下さい。   ここ(林の斜面部分)は草刈りをしているのですか。

【岩田(臣生)】 2年前に勝手に笹刈りされた所です。

【中島】 ここは10年前程に、雑木林を育てる会が活動を始めた時に最初に笹刈りをし、3年くらい前までの間に3回程笹刈りをした所です。

【岩田(芳美)】  縁(へり)の部分は数年前に事件があり、徹底的に笹刈りされました。斜面部分は個人的に笹刈りをされた方がいます。

【倉本】 現在の図を描いた後で、20年放って置いたらどのような林になるかを描いて下さい。何も人間の手を加えないで20年経ったらという絵です。
その絵を描いたら、自分がこのような林にしたいという林の目標の図を描いてください。これを目標植生と言いますが、目標植生を図に描いて下さい。
この3種類の絵ができたらお互いに見せあって、意見交換をすることにしましょう。



【倉本】 では、鈴木さん、今の林のイメージを見せていただけますか。

【鈴木】 高木層があって、その間に亜高木層があり、少ない低木層があって、アズマネザサがいっぱいでている。

【倉本】 次に、この林をずうっとこのままにしているとどうなるかという図をお願いします。

【鈴木】 高木層とアズマネザサの林になるのかなと捉えています。

【倉本】 次に、自分はこういう林にしたいという図をお願いします。

【鈴木】 少し高木が多過ぎるので少し取る。亜高木の木も生えるようにして、法面なので笹を刈ると土が流れると困るのでアズマネザサは残す。という林を考えました。


【堀江】 今の鈴木と同じなのですが法面があって、高木があって、その間に亜高木があって、低木があってアズマネザサがある。これが現況ということで図にしました。
また、このままにしておくと、この斜面で太陽の光を独占できる高木がより葉を伸ばして覆ってしまう。するとますます下の方に光が当たらなくなり、亜高木や低木、アズマネザサが支配力を弱くする。
亜高木の枝払いや間伐をすることにより下に光がより当たるようになれば、亜高木や低木がもっと繁り、アズマネザサも日が当たる事によりもっと繁る。 バランスよく中間がもっと育つように将来的には間伐や枝払いなどをする必要がある。光があたり、次の世代が育っていくような環境を作る事が理想的な管理と思う。

 
【岩田(臣生)】 現況については先生が測って下さったもの、そのままですが、このような斜面があり、エゴノキ、サクラ、コナラが高木層としてあって、シラカシが亜高木層に、アオキ等が低木層にあり、アズマネザサがあるということです。
20年後は、私は意見が違うのですが、多分アオキ等が繁茂して、アズマネザサも伸びてきて下が藪になってしまう。高木層はそんなに変わらないのではと思いました。
目標の林は、私としては低木層と亜高木層を全部取ってしまう。ついでに常緑樹は取ってしまう。エゴノキだとかサクラ、コナラ等の落葉樹の林にする。 アズマネザサはもう少し密度高く管理をし、人が入り難い様にしたいのと同時に鈴木さんが言われたように土砂が流れにくくする。 2年前の笹刈りでは土砂が流れて沢が埋まってしまった。ここは斜面なので、水は勢い良く流れてきます。 土も流れるので流れないように何処かで止まるようにする必要があるのかなと思います。


【倉本】 放置された時にどうなるかということで、鈴木さん、堀江さんが考えたのは高木がはびこるということですね。岩田さんが考えたことは低木のアオキや笹がはびこって藪状態になるということです。実際にそういう風になっている所を見るのが答としては一番よいのでしょう。       一番高い所に生えているのは落葉樹なので秋から春早くの間は光合成をしません。常緑樹はその間も光合成を行うので、夏に上から光が来なくとも秋から春までは来るので常緑樹がだんだんに大きくなっていく可能性はあります。それから笹も常緑ですから、笹についても多分冬の間も光合成をしていると考えることができるのではと思います。

【喜多】 平面的に描きました。今は高木と亜高木と下草という状態だと思います。       放っておくと皆大きくなって、日当りが悪くなって、皆良くなくなる。       大きな木を切って光が入り、ある程度木が育つようにしてあげるとよいのではないかと思う。笹などを残しておくと斜面の土が流れるのをある程度防げると思いました。笹はそのままにしておくと大きくなり過ぎるので時々下草刈りをする。50cm位だと見た目もきれいと思う。

   
【倉本】 笹が成長するためにも光は必要ですね。

【伊藤】 先ほど測った時に、高木の下枝が何処にあるかを測りました。それが20年後にどうなるかということで考えました。高木については上の光があるので下枝も少し上がるでしょうけど、かなり成長して来る。シラカシも冬場の光があるので少しは成長する。下草の笹類はある程度はびこると思うが、他のものはむつかしいのではと思う。私がこう見た訳はここの林だけを見せますと割合株立ちの木が多い。ひょろっとして上に伸びていく。光を求める為にそのような成長をしているものが見られる。個人の意見ですが理想の林としては降りてくる途中に下草が刈られた所があり、木漏れ日が入る明るい林も好きです。個人の意見ですが枯れ枝や株立ちの枝を少し切る必要があるのではと思います。


【寺尾(トミ)】  初めてでわからないのですが、木漏れ日というのですか、日が当たると花が咲いたりして、素敵で。この辺は細い枝が一杯ありますが、1本切るだけでも光は沢山入るので、木を育てるにも、細い枝は邪魔ではないかなと思いました。遠くからみて、下を見ると、光がさして、お花が見えるのもいいなと思いました。


【井上】    現在は鬱蒼としているので、皆細い木になっていると思います。 このまま放っておくと、高木が大きくなって、日影を作って、篠竹は高く伸びて覆われてしまうので花木等が無くなってしまうのではと思いました。 そういう状態だと生物も余り見られないので、私としては、高木をある程度伐ってしまって、枝を横に伸ばしてあげて、亜高木や低木も生き残れるようにしたいと思います。篠竹はある程度刈って地面を見せて、たまに花が咲くようなきれいな環境にしてあげたいと思いました。


【倉本】 笹を刈ると土壌が流出するという意見の方が多かったですが、それについては如何ですか。

【井上】    それについては考えていませんでした。

【寺尾(隆典)】 現状は鬱蒼としています。下の方はよいかと思います。20年経つと全体に大きな木の高木、中木、下の方が物凄く鬱蒼とすると思う。上の方を多少間引きして、下をもう少し生い茂らせるのでなく間引きするような感じに持っていくとよいと思う。高木、中木、全体に下の方を間引きしていくのがよいと思う。


【久保田】 高木、中木、低木、草本と色々ありました。現状は高木が多い。 放っておけば高木の林みたいになる。例えばシラカシの林になる。 イメージとしては、少し高木を減らして、中層の木を増やして、下草その他は残すというイメージが明るい感じでいいと思います。


【土屋(隆夫)】 現状から20年後はアオキなどのような鳥が運んできた物が増えるような気がします。鬱蒼という程ではないが結構繁ると思います。笹も午後になると山の傾斜等で日があたらないと思うので、あまり生えないのではと思う。そこに空間もあるので竹も這い上がってくる。 理想としては高木と亜高木を少し波打たせて、ある程度光が所々に入るように持って行く。株立ちのせいで、そのように見えるのかも知れないが、木が多いように見える。木の本数はもう少し少ない方がよいように思う。そうすると、もっと明るくなると思う。経験が無いのでよく判らないが、イメージ的にはもっと明るい方がよい。


【土屋(邦雄)】 ほとんど皆さんが仰ったのと同じですが、木が混み合っているので整理して、光を入れた方がよいのではと思う。これから勉強して行きたいと思う。


【加藤】 だいぶいろいろな意見がありましたが、はたして、この高木が10年経ってどのくらい大きくなるか。おそらく立ち枯れすると思うんです。10年周期くらいに。新しい緑を良くしていくのだったら、古い木をどうするか。例えば、この下は混み合っていますね。木が太れない状態です。邪魔になる所を切って日当たりを良くして行かないと。このままでよいのかなと考えます。これからは、古い木を処分して新しい木を育てていく、ということをしないと。伸び放題ですね。その辺は、何かしないと木が伸びられません。混んでしまって。

【倉本】 いま加藤さんの言われたようなことに関しては、さっき描いていただいた図はあまり役に立たないですね。1本、1本の木がどういう関係になっているかが大事なのでその図では役に立たなくて本当の状態の図を描かないと役に立たないので、それに今日やっていただこうとしたことはつまらなかったのではと思い申し訳ないです。

【中島】 絵が下手ですが、斜面にしてみました。現在は、圧倒的に高木が多くて、亜高木、低木が少ない。草本はまあまあかなという状態だと思います。 放っておきますと、色々な所を見て歩きまして、典型的な放置された樹林地というのは多摩川の崖線の緑地では北浦緑地が一番放ったらかしなのです。まさに岩田さんが言ったように藪状になってしまいます。鳥の糞から生えた常緑樹が威張って、下草も刈ってないから人が入れないくらいゴチャゴチャになっている。おそらく20年放置したら条件は若干違うが、そんなふうになるだろうと思いました。 それから望ましい雑木林というのは、私ども雑木林を育てる会が発足以来やっていることは生田緑地全体の雑木林をこうしようということではなくて、所々に典型的な所謂、昔の里山風景を残そうよという事で考えています。ここもその一つだと考えて、望ましい雑木林は、今の形ではあまりに混み過ぎているので、もう少し本数を少なくしたいこと、それから常緑樹はできるだけ排除して雑木林を中心にした林にしたいということ。それから、中木や低木は沢山なくてもよい、極端に言うと無くてもよいと思っています。何故かというと、20年ぐらいで高木の萌芽更新をして、伐採により新しい芽を育てるという形で雑木林を更新していくのが望ましい雑木林だと考えました。


【松岡】 私も今は高木が多くて中、低木が無くて、笹はそれなりに刈ってあるという状態だと思います。放っておくと、我が家の裏山は40年放ったらかしで今回開発になるという所ですが、そこは圧倒的に常緑樹、特に、サカキ、アオキ、シュロがいっぱい生えて、アズマネザサも私の背よりも高いのですが、そういうグチャグチャの林になってしまうと思います。 私の理想図ですが、向うに緑が見えるので、思いきって高木を何本か間引きをして、向うの緑が見える風景にしたいなと思います。ここに書いているのは岩田さんで、その頃岩田さんが「いいな」と言って見ている絵です。で、2枚目は倉本先生で、20年後は白髪です。描かなかったのですが、ここは斜面なので皆さんが言われるように、笹は残した方がいいと思いました。


【井口(実)】 私も、斜面とか、方角とか、一切気にしないで描きました。 20年後は高木層が密閉した感じになって、かなり上の方に緑があり、下は暗い、ひょろひょろとした感じになるのかな。下の方は笹とアオキとか、ヒサカキとかが混在した藪状になるのかなと思います。 目標の方では、高木は株立ちになっている枝を整理して、枝を一杯伸ばしても密生しないような、ある程度日が差すようにしたいなと。低木も常緑の低木ではなく、落葉の幼樹、苗でも実生でもよいですが、年数の違う木が混在するような林で、下の方には笹もよいのですが、花も咲いて欲しいなと。以上です。


【井口(かおる)】 今は見てのとおりで4種類の高さの木が混在していますが、20年後は上が、日の当たらない状態になり、低い木がみな無くなり、大きな木が倒れた所に光が入って草が生えたり、また、低い木が生えたりという状態と思います。 理想の林は、木と木の間がすごくあって光が入って、私も中島さんと同じですが、常緑樹じゃなくて、落葉樹が多いのが理想です。そうすると地面に日が当たるので春になると花が咲いたりするのが楽しめるような林が理想です。アオキやシュロは全部退治してやりたいと思っています。


【堀内】 皆さんと殆ど同じなんですが、現在はこんな感じ、高木、亜高木、その下に低木があり、笹がある。笹は短いですね。これが現在です。       20年というと想像するのに、ここにシラカシの小さいのがありますが、20年でシラカシはどのくらい大きくなるかなと思ったのですが。シラカシは意外と伸びるのが遅いような気がするのですよ。中間位のはみな高木になるのでは、弱ってくる木もあるのではと。その下に草本がある。4層から2層になるのかなという感じがしたのですよ。 目標植生としては、こうしてみると弱そうな木がありますね。そういう木は切ってしまってよいのかなと私は思うのです。思いきって。そうすると太陽の光がすぽっと当たる所で出てくるのではと。亜高木、低木と順繰りのサイクルのようにしたいなと。そこに、皆さん花と言われますが、春先に咲く。落葉樹と落葉しないものがありますね。バランスよく作って真ん中に日が当たってスプリングフラワーと言ってよいか知りませんけれど、この辺はエビネとかランとか咲くと思うのですよ。それを覗いてみたいなと思っているのです。大きな木が20〜30m位あって、真ん中に太陽があたるような所があったらいいのじゃないかと思いました。


【倉本】 陽光があたる所は人間が作るのですか。
【堀内】 そうですね。手前の木も危ないし、思いきってズバッと切っちゃう。そうすると空きますね。よく日が当たるから何か生えてきて、当然ながらアズマネザサは毎年刈ってもよいと考えます。毎年刈ると3年くらいで無くなっちゃいますよね。そこに草本みたいなのが出てきて、スプリングフラワーが出てくるのではないかと私は思う。個人的にアズマネザサは大嫌いです。
【倉本】 私は将来ですけど、中島さんが仰った事と同じなんですけど。萌芽更新をして藪ができているという絵を描きました。それは、そういう案があっても面白いと思ったからです。僕は時間があまりなかったので具体的に何処ということは余り考えてはいないのですが、昔、公園で働いていた時には農家の人から、役所は斜面だから萌芽更新できないと言うが萌芽更新をしないと地面が揺すぶられて崩れるから萌芽更新をしてくれと言われました。萌芽更新をすることは大きな木になってからやる事は大変ですけど、一度やってから、その後はそんなに大変ではなくなるはずなので、サイクルを決めてやっていけばそういうことも出来ると思います。


【伊藤】 すいません。萌芽更新をやっていたから株立ちが多いわけですか。

【倉本】 はい、そうですね。

【堀内】 この地域は萌芽更新をしていいとか、クヌギ、コナラ林にするとか、一度、皆さんで勉強をしたいような気がするのですけど。全部コナラにしても面白くない。地域を区分してやっていくのがよいと思います。

【倉本】 ええそうですね。多様性が無くなりますね。

【中島】 全部はできないですね。モデル地区をつくって。

【岩田(芳美)】 ここの現況は落葉の高木層ばかりで、亜高木、低木は常緑樹少しです。草本は笹が密生している。 次に20年このまま放置したらどうなるかというところで、高木層の高さはこれより心持ち成長してもう一回り大きくなっている。そこにある亜高木のシラカシと低木アオキについてはどんどん大きくなり、アオキは亜高木に近い大きさになっているのじゃないかと思います。アズマネザサはどんどんと大きくなり、このまま放置すると2〜4mの高さが当たり前の状態で密生している。中で頑張っているのはアオキだけという状態になると想像します。 理想の林は高木層については株立ちを間引くか、枝を少し落す。亜高木層と低木層の常緑樹は全部取る。その後に新しく落葉樹が実生で出てて来ることを希望します。亜高木層まで伸びたコナラ数本とか、低木もコマユミとかカヤブムラサキ等の花とか実の美しいものがいっぱい出てくるのが理想です。アズマネザサはできたらウグイスの営巣の為に1m以内に管理をするとよいと思います。笹の管理は必要と思います。


【倉本】 皆さんありがとうございました。学校の勉強みたいなことをさせられてつまらなかったかも知れないのですけど。最後に皆さんがそれぞれ言って下さった将来の目標ですが、将来の目標の中には大きな木は切ってでも光を入れるという案もありました。逆に大きな木は残して真ん中の層を無くすという案もありました。全部の人の意見をそのまま足し算して、ここで何かをすることはできません。例えば、ここで何かをする時には全部の人の意見をそのまま足したら出来ないのです。ここに来て植生管理をやっていく人が居るそうですけど、全部の方がそれぞれ朝早く来て自分のやりたい植生管理をやると個々の林は目茶苦茶になってしまいますね。両立しないことを銘々がやる事になりますから。皆で、ここの林をどうするかという事を決めないと、林の管理は出来ないということになります。既に植生管理計画というものを一度作った事がありますが、それでほんとうに十分なのか、それが実際に使われる物にはなっていません。そういうものをもう一度見直すことも必要だと思います。今は目標について話していただきましたけれど、話して下さったことの中には目標の林に誘導していくにはどうしたらよいかということも含めて話して下さった人もいました。最初の方は目標とする植生、後の方は植生管理計画と言います。植生管理計画については目標が同じでも手順が違う人もいらっしゃるかも知れない。ですから、目標についてまず合意をした後で、どのようにやっていくかということも決めていかないと実際にその場所の植生の手入れは出来ないということになります。今日は1回目という事でいろいろな場面で皆さんが意見を纏めないと公園の自然を管理する、或いは公園の林を管理することは出来ないということを学習しました。どうやって意見を纏めるかということは今日は話せませんが、意見を纏める事が必要なんだという事を今日は考えるということと、皆がいろんなアイデアを持っていることを理解したり、感じたりする事が出来るようにこのような企画を用意しました。やっていることは大学の授業とほぼ同じです。これに懲りないで次からは段々進んでいくようにしたいと思います。最終的にはこの場所ならこの場所をどうするか、市民の皆さんと行政の方とで協議しながら決めて行けるようにして行く事が必要だと思います。そういうレベルまで行こうと思います。これからも宜しくお願い致します。

【鈴木】 これから今日の感想をいただければと思います。お疲れさまアンケートをお願い致します。皆さんと行政の合意で、ここをどうしていくかということを決めて行かなければなりません。継続的に参加していただく事で、それが成し遂げられると思います。周りの方も誘っていただいて、参加していただけるよう宜しくお願い致します。

【岩田(芳美)】 今回は調査団の参加者が少なかったので、次回は野鳥や昆虫等まったく違う視点で違う物が言えるメンバーにも声をかけたいと思います。そうすると今日の場所でも植物以外のもの、例えばホタルをどうするかとか、ホタルとこの場所との関係とか話しが膨らむと思います。

【松岡】 この市民部会というのはちゃんとした組織としてではなく、このような形で継続を考えているのでしょうか。メンバーは決めるのでしょうか。

【鈴木】 メンバーは決めます。参加は自由です。興味を持った方は枠にとらわれず興味を持った時点で参加できる様にします。今日参加をしていただいた方には次回のお知らせは行くようにいたします。住所を描いていただいた方は参加登録をしたと考えています。
次回はチラシにありますように11月の第2日曜日を予定しています。

【岩田(芳美)】 雑木林を育てる会の活動日に合わせています。

【伊藤】 どうも長い間ありがとうございました。生田緑地の管理というのは恒久的に続くものだと思っています。管理の内容を1回で決めるのでなく、これから皆で見ながらその場所にあった管理内容を出し合っていけたらよいのではと思っています。行政だけでは管理は出来ないので、皆さんの協力を得て、市民の方との協働で管理の向上に勤めて行きたいと思っています。これからも宜しくお願い致します。

かわさき自然調査団の活動

特定非営利活動法人かわさき自然調査団
Kawasaki Organization for Nature Research and Conservation