生田緑地の生物多様性保全活動

谷戸の水辺保全、ハンノキ林のアズマネザサ刈りなど
日時 2019/12/3(火) 10:00〜13:00 
場所 生田緑地 湿地地区、ハンノキ林地区
参加者 岩田臣生、岩田芳美

谷戸の水辺保全については、大雨の後の水流の観察が欠かせません。
谷戸に降りる園路の落葉が増えてきました。この日はエノキの落葉がデッキの上に広がっていました。
ハンノキ林上の池は、大雨後らしく、澄んだ水を湛えていましたが、水底が丸見えなので、泥上げをしてくれと言われているような気になりました。
ハンノキ林西の池の水は少し水位が下がっているように感じました。
堰から浸み出す流量が増えたかも知れません。
カワニナなどのために、持ってきたイネワラを少し、放り込んでおきました。

竹林下の水流は、やっと一番上の水溜まりが安定したようですが、3mほど流下した所で穴に消えていました。
この穴は踏み潰して、流心を変えるつもりで、この穴を避けるように流路を掘りました。
今年は大量の土砂が流れ出していたことが、溜まった砂礫層の深さで分かります。



この水流が湿地地区に入った所で、水路の畦に開いた穴から水漏れを起こしていました。
今年の降雨で、すっかり土が柔らかくなって、この場所は頻繁に水漏れを起こし、しかも、その水が通路部分の土を崩し始めていました。
そこで、今回は、この崩れかけた通路部分に、先日剪定して積んでおいた枝を並べて、その上に、水路に溜まっていた砂礫に近い土砂を積みました。
水路部分には、泥上げしておかなければならない土砂が、まだまだ大量にあります。
今後、数回、これを繰り返せば、崩れるのを防いで、通路として使える状態になるでしょう。



この部分の近くの対岸の園路も土が流出したのか、園路が下がって、柵が傾いていました。
大丈夫だろうかと見てみると、グラグラ状態ではなく、しっかりしているように見えましたので、来園者が健常者であれば、まだ問題ないでしょう。



この湿地地区(B05) は、特定非営利活動法人かわさき自然調査団が水田ビオトープ班を新設した 2004 年 10 月に、シンポジウム「市街地の中の里山"生田緑地"の自然をどう考え、 どう保全するか」を開催し、活動方針を見極めてから初めて手をつけた地区です。
昔は低地部から続く田圃の一番奥の田圃だったのですが、1958 年(昭和 33 年)の狩野川台風によって大量の土砂が流れ込み、地主さんは、もはや田圃はできないと考えて、畑に転用することにしました。
そして、引いていた水を入れないように土工し、排水管を埋設し、土地を乾かす努力を積んできました。
しかし、どこからともなく、水が染み出してきて、上手くいかなかったと話してくれました。
2004 年当時は、ススキ、ヤマグワ、ヒメコウゾなどが繁茂し、土地は十分乾燥していましたが、 「昔は、(一番上の田圃には)カワニナがウジャウジャいた。」、 「昔は、稀少な水草が生えていた。」 などという証言を基に、 当該地区は湿地に再生し、昔あったという水草を復活させようと考えて、水を引き入れて、湿地づくりを行ってきました。
湿地づくりは困難で、度々、水が涸れるという事態となり、水域に入っていた生物を殺してしまう失敗を何度も経験しましたが、目指した水草の復活は実現することができて、植物の強さを実感しました。
この水草は、まだ種子をつけていましたので、その下流側に落枝ダムをつくりました。
種子が流れてしまわなければ、ここで発芽してくれるでしょう。



また、この湿地地区に発芽したハンノキが育って大きくなり、ハンノキ林を広げる形になっています。
これは、歓迎すべき自然の変化と受け止めていますが、ハンノキ以外の樹木が育って、樹林をつくることは歓迎できません。
ウツギが大きく枝を広げていたり、沢山のモミジが人の背丈を超えるほどに育ってしまいましたので、これらは低い高さで伐採し、アズマネザサやススキを刈りました。
まだ少し残してしまいましたが、田圃だった頃の明るさに戻せれば、タツナミソウが復活するかも知れません。
アオジや、シロハラの声が聞こえていました。



この日は、13:30 から自然環境保全管理会議がありますので、早めに保全活動を終わらせて、竹林下デッキでランチにしました。
陽光を受けた雑木林の斜面は黄葉を始めており、2004 年の湿地づくりを始めた頃を思い出させてくれました。
帰り道、萌芽更新地区〜ピクニック広場下では、ルリビタキの声が聞かれました。

   かわさき自然調査団の活動
特定非営利活動法人かわさき自然調査団
Kawasaki Organization for nature Research and Conservation