生田緑地の生物多様性保全活動、

菖蒲池南側園路改修についての現地協議

日時 2017/7/19(水) 11:00〜12:00 晴
場所 生田緑地 菖蒲池
生田緑地整備事務所: 矢口菊子、山本栄行
かわさき自然調査団:
 種子植物班 吉田多美枝(班長)、佐藤登喜子(副班長)、吉留憲子
 事務局長 岩田芳美
 水田ビオトープ班班長 岩田臣生(生田緑地マネジメント会議自然環境保全管理会議 副会長)

生田緑地整備事務所では、菖蒲池を散策する下図のルートの段差を解消してバリアフリー化する工事を計画しています。
その工事によって自然に与えることになるダメージを極力小さくしたいと考えてくれて、工事に当たって、何に注意し、どのように進めれば良いかについて意見を求められたことから、現地での話し合いを行いました。
当該地は、今までに、絶滅危惧種トキホコリの生育地として発信していたために、こうした場合の「保全と利用のバランス」をどう考えるかという問いかけであると受け止めて考えることにしました。
話の中心は植物のことなので、植物班の活動日に合わせて、植物班にも参加してもらいました。

(1)トキホコリ
 イラクサ科ウワバミソウ属のトキホコリは、環境省絶滅危惧II類(VU)、神奈川県絶滅危惧IB類(EN)の植物で、北海道〜本州の低地の湿った場所に生える1年草で、 花期は 9〜10月です。
 ・神奈川県植物誌によれば、神奈川県内で記録されているのは、綾瀬市、鎌倉市、川崎市のみです。
 ・当該地区では、数年前までは、園路端部に帯状に分布していましたが、この日は、タマアジサイなどの枝葉の下の湿っている舗石の上に僅かに生えているだけでした。
 ・トキホコリは、舗道の表面にコケが生えているだけの場所でも根を張って生育しますが、チジミザサなど、地面を覆うような植物が繁茂するようになると消えてしまいます。
 ・一年草なので、生育に適する環境ができてくると、意外と簡単に広く繁茂してくれることもあります。

 段差解消工事は計画通り進めて構わないと思います。
 前例はありませんが、工事前に、工事区域内にあるトキホコリを移植したらどうなるか試してみてほしいと思います。
 ダメ元で移植保護を試してみるべきと思います。

(2)タマアジサイ
 本州(東北地方南部、関東地方、中部地方)に分布し、神奈川県内では樹林内や渓流に普通に見られる低木で、川崎市では麻生区、多摩区で見られます。
 花期は 8〜9 月。
 大きくなって園路上に枝葉を張り出していました。

 花が終わってから、施工に支障になる枝を剪定して、さらに全体の樹形を整える剪定をするのが良いと思います。

(3)ヤマアジサイ
 関東地方以南の本州、四国、九州に分布。県内では沖積地を除く全域の山地や丘陵の樹林地や林縁に普通に生育しています。
 当該地にも 1株確認されました。これは保護してほしいと思います。

(4)林地から園路上空に張り出している枝
 園路上空を横断している枯れたサクラは、工事に合わせて、伐採するべきと思います。
 その他の園路上空に張り出した枝等は、適宜、剪定等を行い、園路景観を考えるべきと思います。
 但し、その作業等によって園路に面した崖面を崩すようなことの無いようにしてください。
 この崖面には稀少な生物が棲息しています。
 作業は、基本的には園路内で行ってください。
 やむを得ず、林地内(崖の上)に入る必要がある場合は、作業時に、現場に立ち会わせてほしいと思います。



   かわさき自然調査団の活動
特定非営利活動法人かわさき自然調査団
Kawasaki Organization for nature Research and Conservation