里山の自然学校2024
第07回《夏の里山》
【2024/8/25 更新】
日時 2024年 8月 25日(日) 10:00〜15:00 晴
場所 生田緑地 谷戸と芝生広場上雑木林、市民活動室 参加(里山の自然学校 1年生)富岡橙生、山崎晃汰、峰和菜子、横山芽立 応援サポーター 伊澤高行、廣瀬朗子 講師・事務局 岩田臣生 合計 7 名 図)活動場所図 今日は20年目の里山の自然学校の<夏の里山>です。 今年は、何となく、生きものが少ないように感じていましたので、中止することも考えましたが、 里山の自然学校MLで尋ねたところ、参加希望が4人いましたので、開催しました。 里山の自然学校では、水田ビオトープ班や里山倶楽部の自然保全活動時とは異なる感覚で、現状を観察することができるので、その意味でも大切だと思っています。 活動は、比較的気温の低い午前中はフィールドワークを行い、午後は室内で、フィールドワークで出会った生きものや、感じたことなどを 壁新聞の形にまとめて、発表する活動を行いました。 生田緑地は、園路や広場以外は立入禁止にしていますので、普段は、雑木林に入ることはできません。 しかし、私たちが保全活動を行っている雑木林では、状態観察も大切だと思いますので、 伐採更新中の芝生広場上雑木林に子どもたちを連れて入ることにしました。 都会の子どもたちは、道は舗装されているものと認識していて、育成中の雑木林の中を歩くことは、新鮮な体験になると思いました。 芝生広場上雑木林へは、生田緑地整備事務所裏から出て、尾根路を降ります。 ハギの花が咲き始めていました。 ハギは、樹林を伐採した跡などに、まず生えてくるパイオニア植物で、数種に分類されています。 また、マメ科植物であり、キタキチョウの食草ですので、皆が観察している時にも、キタキチョウが飛来していました。 タマムシは、夏の生田緑地では、園路を歩いていて、普通に出会えますが、そのタマムシの折れた翅が落ちているのを、子どもたちが見つけました。 タマムシは、エノキ、ケヤキ、サクラなどの広葉樹林の生きもので、枯死木に産卵しますので、雑木林に枯木が残されていることも大切です。 オトコヨウゾメが、まだ黄緑色の実をつけていました。 オトコヨウゾメはガマズミの仲間で、日本固有種の低木です。 この尾根路は整備事務所から芝生広場上雑木林への最短ルートなのですが、 この尾根路にあったナラ枯れコナラなどが伐採されて、明るくなった場所には、新たな植物が生え始めていました。 ナラ枯れで通行禁止になっていた間は、園路にもアズマネザサなどが繁茂していましたが、現在は、刈られて、歩き易くなっていました。 カラスアゲハが現れましたが、片方の後翅が無いようでした。 カラスアゲハの食草はミカン科の植物なので、この辺りでは、サンショウ、イヌザンショウ、カラスザンショウなどでしょうか。 シラカシなどの常緑樹とコナラなどの落葉広葉樹が混在する、この尾根を越えるようにチョウの道があるのか、黒い翅のアゲハチョウがよく観察される尾根路ではあります。 園路の柵に絡みついて、ヘクソカズラが咲いていました。 可哀そうな名前ですが、葉などを潰すと悪臭を放つことから「屁糞かずら」と名付けられたようです。 この臭いの成分のお蔭で、虫に食われることから免れているのですが、ただホシホウジャクという蛾だけは、これを食草にしているようです。 ホシホウジャクは、スズメガの仲間で、谷戸のツリフネソウの花に吸蜜に来ますので、9〜10月の田圃周辺で出会えると思います。 コクワガタ(メス)を見つけたようです。 ヒカゲチョウも、近くに出て来ました。 ヒカゲチョウの食草はイネ科のササなどですので、林縁のアズマネザサの茂みが生活場所になるようです。 日本固有種ですが、樹液や腐った果実などを好みます。 芝生広場上雑木林の植生管理に使っている出入口は、来園者が入りたくならないように、管理しています。 芝生広場上雑木林は、6/29(土)の里山倶楽部で、アズマネザサ刈りを行い、観察路づくりを行ったので、問題無いと思っていたのですが、 2ヶ月弱が経過しただけで、夏草が茂っていました。 そのためでしょうか、子どもたちは恐くて動けなくなり、なかなか入ろうとしませんでした。 雑木林に入って、直ぐ、ツノハシバミを観察しました。 実を包む総苞片の先が角のように伸びていることから付いた名前らしい。 丁度、実の季節なので、実を観察しました。 ヤマノイモの葉上に、アミガサハゴロモがいました。 しかし、これは外来種のチュウゴクアミガサハゴロモかも知れません。 チュウゴクアミガサハゴロモは、2018年頃から各地で報告されるようになった中国原産の外来種です。 昔のアミガサハゴロモの写真と比べると、僅かの差ですが、異なります。 この日、出会った3匹が全て外来種だとすると、既に、相当広がっていると思われます。 目立たない生物なので、駆除は難しそうですね。 ツリバナが実をつけていました。 ツリバナは、マユミと同じニシキギ科の落葉小高木です。 現在は、球形の果実が沢山ぶら下がっています。 雑木林の中は決して歩き易い状態ではありませんでした。 後ろの方からブツブツと文句を言う声が聞こえていましたが、観察路上側を辿りました。 ところが、下りに入って、少し降りた所で、クヌギの陰からスズメバチが現れて、私の脚部周りを飛び回りましたので、引き返すことにしました。 静かに歩いて通り過ぎれば問題無いと思いましたが、ハチを恐れて、騒いでいる子がいましたので、戻って、反対側を歩くことにしました。 斜面下方では、ヤマノイモが花をつけていました。 雑木林の中でも、ヘクソカズラが蔓延って、開花していました。 最下端部のベンチの辺りには、ヌスビトハギが咲いていました。 種子は簡単に衣服などに着くので、ヒッツキムシと呼ばれて、遊ばれます。 観察路を上り始める所には、ゴンズイが紅い実から黒い実を覗かせていました。 少し上ったところにあった枯木には、虹色に輝く甲虫がいました。 帰宅後に調べたところ、ヒメナガニジゴミムシダマシのようでした。 私は初めての出会いだったので、何かという質問には、分かりませんと答えました。 初めての生きものについては、写真を撮ったり、日時、天候、場所、大きさ、形状、色彩などをメモしておいて、後日、ゆっくり調べるのが良いと思います。 安直に、名前を教えてもらっても、直ぐに忘れてしまうことが多いと思います。 帰宅後に記録を調べたら、形状としては丸い、ニジゴミムシダマシに、生田緑地で出会っていました。 しかし、この虹色の輝きは独特ですね。 コミスジが現れました。 コミスジは、雑木林の林縁で、よく出会うタテハチョウ科のチョウです。 食草はマメ科植物で、年1〜4化のようです。 芝生広場に出て、木陰で、一休みして、集合写真を撮りました。 ベンチの下のアリジゴクでも遊びました。 そのベンチに、キマダラカメムシ幼虫が現われました。 キマダラカメムシは、江戸時代に東南アジアから入ったと言われている大きなカメムシです。 関東地方で見られるようになったのは近年のことです。 幼虫も大きいので、参加者に教えたら、「気落ち悪い」の一言でした。 田圃のイネの穂を見に、田圃に移動しました。 暑さの中、コナラの枯木に、ミスジマイマイがいました。 子どもたちも、ミスジマイマイは覚えていました。 木道に、ムラサキシジミが現れました。 幼虫の食草は、ブナ科常緑樹ですが、成虫が摂取しているものは不明です。 出現期は6月〜3月で、年3〜4化、成虫越冬します。 梅の木広場では、キンミズヒキを観察しました。 ミズヒキはタデ科植物ですが、キンミズヒキはバラ科植物です。 この実も、ヒッツキムシです。 上の田圃への導水路に土砂が溜まって、水が溢れ出していましたので、素手で泥上げを行って、パイプの掃除を行いました。 そのパイプの出口側では生きもの観察が行われていたようです。 稲穂を観察しました。 木道脇で、カラスウリが実をつけていました。 戸隠不動尊跡経由で桝形山に登り、吊り尾根を歩いて、市民活動室に帰ることにしました。 桝形山広場の少し手前で、カバノキ科のアサダを観察しました。 アサダは、神奈川県植物誌2018によれば、県内では、丹沢東部と箱根に分布となっており、県東部では、2000年以前の生田緑地の記録のみとなっています。 非常に少ない樹木ですが、生田緑地では、2ヶ所にあります。 枡形山広場で、少し休んでから、市民活動室に向かいました。 ハラビロカマキリの脱皮殻を拾った子がいました。 観察のためにミルビンに入れてきた昆虫は、逃がしました。 室内に戻ってから、お昼のお弁当を食べました。 お弁当を済ませてから、今日の活動を壁新聞にする活動を行いました。 13:30〜14:20 壁新聞を作成している間はサポーター2人に任せて、岩田は、次の2件を行うために、フィールドに出ました。 @長者穴古墳辺りまで行って、キツネノカミソリの開花を確認すること A谷戸に降りて、保護している田圃雑草の開花を確認すること @残念ながら、キツネノカミソリの生育地の辺りに、その姿は確認できませんでした。 A午後にならないと開花しない田圃雑草が開花していることを確認しました。 これが種子になってくれれば、今年で絶滅とにはならずに済みます。 整備事務所に戻る途中、木道から見た湿地地区の水路に、大きな水漏れ穴が開いていることが分かりましたので、これは、素手で塞ぎました。 そこまで、済ませてから、市民活動室に戻りました。 私は外出している間に、伊澤と広瀬が、皆が壁新聞を書き終えたのを確認して、一人ずつ、発表してもらっていました。 ♪だいきさんです。 岩田が戻りました。 ♪かなさんです。 ♪こうたさんです。 ♪めりさんです。 遅れた岩田のために、もう一度、だいきさんが説明してくれました。 【反省】 今日の活動についての壁新聞と言っただけでは、目的が伝わっていなかったようです。 里山の自然学校は、生きものの名前を教える場ではなかったはずなのに、名前を教えて済ませてしまうようになっていました。 自分で見たこと、感じたこと、考えたことを書き出して欲しかったのですが、壁新聞という言葉を使ったのは、失敗だったかも知れません。 秋の里山では、活動のあり方、進め方などを再検討したいと思います。 15時になったので、解散しました。 次回は、稲刈りの予定です。 |