生田緑地植生管理協議会市民部会
里山倶楽部A
第1回《里山の春を体験する》


日時 2011/4/2(土)10:00〜15:00 晴
場所 生田緑地 皆伐更新地区〜萌芽更新地区
参加 金子文隆、工藤思由(小学5年)、長岡泰造
   (多摩区道路公園センター)山口泰民、齋藤真吾 
   (市民部会事務局)岩田臣生、岩田芳美、佐藤利奈

生田緑地植生管理協議会市民部会では、昨年度、飯室山南地区で皆伐更新を計画し、準備し、400uほどの範囲を皆伐しました。
目標植生は若いコナラ・クヌギ林です。
雑木林は更新しなければ老熟していきます。老熟した雑木林を好む生物もいますが、若い雑木林でないと生きられない生物もいます。
生田緑地の生物多様性のためには若い林も必要だと考えました。
問題は伐採後の植生管理でした。
50年を超えたコナラは萌芽更新できないと多くの専門家から言われました。
コナラ林の皆伐更新をしたはずが、できた林はコナラ林ではなかったという事例を多く見ました。萌芽更新地区も、コナラ林ではなくなっていました。
飯室山南地区の皆伐更新は、生田緑地の雑木林の更新を可能にするための技術やシステムの構築のための大きな実験でもあるのです。
このために、今年度の生田緑地植生管理協議会市民部会“里山倶楽部”では、この皆伐更新地区の蘖(ひこばえ)の保護、実生の保護、 苗木の移植などを担当してくれるボランティアを欲しいと思いました。
そして、里山倶楽部Aという活動を始めることにしました。
これを楽しく、積極的に行ってもらうためには、生田緑地の雑木林について知ってもらうこと、 ボランティア同士が雑談をする機会をつくること等々が必要だと考えました。
そこで、お弁当持参で、10〜15時の活動とし、雑木林の中での自然観察を組み込むことにしました。
また、時間に余裕のある時には、萌芽更新地区(A06)も対象にすることにしました。
萌芽更新地区では、コナラ林ではなくなってしまった林をコナラ林に戻すための活動を進めています。
この両方を見比べることが良い結果をもたらしそうな気がしています。
いろいろ悩みながら、手探りで、やってみて考えることにしましたが、皆さんからの助言を戴ければ幸いです。

参加申込みをしてくれた人は12人ほどでしたが、最初から4月は欠席という人、急な仕事や病気で参加できなくなった人などがあり、 この日は多摩区役所道路公園センターの2人を含めて、全員で8人となりました。 次回からは職員の参加はないと思いますが、余り大勢で行う活動ではないと思いますので、進めやすい人数だと思います。
公園管理事務所裏に集合して、自己紹介を済ませてから活動についての簡単な説明を行いました。
また、今年度から水田ビオトープ班の佐藤利奈にも里山倶楽部の事務局になってもらうことにしました。


まず皆伐更新地区に移動しました。
枡形山の桜はまだ一分咲きといった感じの中、花見客が何組も来ていました。枡形山から長者穴古墳口までは、 東北地方太平洋沖地震で被災したため復旧工事を進めていて、一般の通行が止められていました。 その通行止めの標識のところを抜けて行きましたが、多摩区役所道路公園センターから2人も参加してくれたのは、このことがあったためと理解しています。
飯室山南側手前で園路を離れて雑木林に入りますが、この活動のためにつくった山路は一応機能していて、子どもを連れても安心して歩くことができました。
皆伐更新地区に入って、ここが活動場所であることを説明しましたが、保護対象である蘖(ひこばえ)も、刈るべきアズマネザサも、まだ出ていません。
周囲の雑木林を眺めても、シデ類の雄花序が漸く伸び始めたところで、コナラやクヌギなど他の高木はまだ芽吹いていません。
伐採してある樹木があると年輪が気になるのは誰も同じようですが、小学5年生の工藤くんが1本1本数えてくれて、 大部分の切株が56齢、一番高齢の切株が70齢を超えていたことが分かりました。
工藤くんは里山の自然学校の卒業生です。

多摩区役所道路公園センターで活動中に張るための旗をつくってくれました。 これからは植生管理の活動中には、これを張って、何をしているのかを分かるようにしたいと思います。


皆伐更新地区を確認してから枡形山、戸隠不動尊跡に降りました。 途中の雑木林は、10年以上前にササ刈りをした後に一面にシュンランが出てきたところで、その後次々に盗掘され、 3年目には無くなっていたという場所であることを話しました。 植生管理の難しさは、保護措置まで考えておかなければならないことにあるということを理解しておいてもらいたいと思いました。

戸隠不動尊跡には丁度、シキミが咲いていました。


戸隠不動尊跡を経由して、城山下谷戸の苗木畑を確認しました。
生田緑地の雑木林の更新に必要となるコナラやクヌギの苗木を育てています。 現状は、かわさき自然調査団水田ビオトープ班で管理していますが、里山倶楽部で育成管理ができるといいと思っています。

城山下谷戸のアブラチャンは丁度満開でした。
昨年度の里山倶楽部で城山下谷戸を取り上げました。 今までは少し気味悪い感じの場所だったところを、明るい気持ちの良い樹林にしようという目標を決めました。
この植生管理を実施した結果、アブラチャンがよく見えるようになり、沢山のアブラチャンが生育していることが更めてよく分かりました。
満開のアブラチャンを見ていると、これを活かすことで魅力的な場所になりそうな予感がしてきます。 ここを歩いている来園者も増えているように感じます。


芝生広場に登る自然探勝路の両側には、アオイスミレが咲いていました。 開花の遅れが、今回の参加者には幸いしました。工藤くんは、丹念に観察して、スケッチをしていました。


こんな枯葉が落ちていました。何かの卵でしょうか。


雑木林の植物の観察をしながら芝生広場を越えて梅畑に行き、テーブルベンチでお弁当にしました。

今まで無かったと思うのですが、ここにもアオイスミレらしきスミレが1株、花を咲かせていました。
ポカポカ陽気に誘われてか、草地では、翅がボロボロになったテングチョウが自分の縄張りとばかりに、近くに来るキタテハを追い立てていました。
谷戸の景観は水面があることで里山らしい雰囲気がかもし出されているように思われます。この田圃はそろそろ本格的な田起こしの時期になります。
ここに座っていると長閑な気分になってきます。


食後、ハンノキ林を観察し、萌芽更新地区に入りました。

萌芽更新地区には、タチツボスミレとオカスミレが広がって咲いていました。 この3年間の樹木伐採などの植生管理によって、草本層が面白くなってきたような気がしています。
モミジイチゴやウグイスカグラも咲いていました。

オオタカに襲われたと思われる野鳥の羽が散乱していました。


少しだけササ刈りを体験してもらうことにしました。
Aチームのササ刈りは他の植物等を保護するためのササ刈りなので、小さな桑切鎌を用意しました。
小さいので、持ち運びが楽なことも便利です。でも、小さな鎌なので広い範囲を刈るのには適していません。
30〜40分のササ刈り体験です。昨年出たコナラの実生の周囲や、ササ刈りをし残してあった場所の、大きく伸びたアズマネザサなどを刈りました。
スミレ類があちこちに出ているので、足の踏み場が無く、なかなか困難でした。春はササ刈りに適さないということを感じてもらえたら嬉しいのですが。

赤い実をつけているヤブコウジもありました。
イヌシデの太い幹から出た側枝の先には幾つものイヌシデメフクレフシができていました。 ソロメフクレダニというダニの一種がイヌシデの頂芽に寄生し鱗片が肥大化した虫こぶです。

細いコナラに巻きついた太いクズの葉痕は可愛くない顔をしていました。
ヒメヤブランの実がついていたと思われる茎が残っていました。ニワトコの花芽が大きくなり始めました。

最後にお茶を入れて雑談し、1日の活動を終了しました。

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特定非営利活動法人かわさき自然調査団
Kawasaki Organization for Nature Research and Conservation