生田緑地の植生管理

2010年度市民部会
第6回《飯室山〜長者穴古墳地区の植生管理を考える》


日時 2010/9/14(火)10:00〜12:00 晴
場所 生田緑地
参加 安達翔平*1、阿出川稲子*2、井口 実*2、大貫はるみ*1、久保田浩二*2、水津龍耶*1、瀧 孔一郎*1、
   前田 宏*1、水田茂子*1、藪 哲二*2
市民部会事務局 岩田臣生*1、岩田芳美*1
             *1 かわさき自然調査団、*2 生田緑地の雑木林を育てる会

第6回市民部会は飯室山〜長者穴古墳地区(A15)を対象に、植生の状態を見て、実施した植生管理を評価することを試みた。
当該地区は昨年度の市民部会での意見交換をもとにして植生管理計画を立案し、比較的広い範囲の植生管理を実施した場所である。 生物への負荷が懸念されたが、昔、あったというキツネノカミソリが復活し、 晩夏には谷底部に広がって咲いてくれた。 市民部会のような活動を継続するためには、このような植生管理の効果を実感する回も大切だと考えての市民部会である。
残念ながら、キツネノカミソリは実の状態となり、花は僅かに残っているだけであったが、代わりに ヤマホトトギスが広がって、蕾をつけていた。

旧北部公園事務所前に集合して、この日の課題の説明と自己紹介を行ってから現地に向かった。

配布した資料は次のものである。


飯室山山頂広場はかなり大きな落枝が散乱していた。 先日の台風の影響だろうか。 こういうものが広場に散乱している状態は適切ではないだろう。 荒天後の管理の悪さは、生田緑地に北部公園事務所が無くなって顕著になっている。


A15−2
飯室山北側の頂部斜面にあたる(A15-2)地区から検討を始めた。
アズマネザサの勢いは強く、細いながら1m程の高さに育っている。 計画通り、今年度もササ刈りを実施した方がよいと判断された。
低木〜高木層についての植生管理の検討が課題として残してあった。
更めて観察すると、アカメガシワやヌルデなどが集中している場所がある。 その部分は何本かを間引いてみる価値はありそうである。
これらの実は野鳥の好物なので伐らないでほしい、どうしても伐るのであれば実のなっていない小さい木を伐って、 実のなっている大きな木は残して欲しいというのが野鳥班の意見であった。
何故か、アカメガシワも、ヌルデも、ヤマハゼも、雌雄異株である。実がなるのは雌の木なので雄の木なら間伐してもいいということになる。 但し、区別は難しいだろう。


A15−1
園路沿いの部分は毎年末に全て刈り取ることを計画したところである。
ここも、アズマネザサが育ち、ヤツデなども萌芽している。
ヤマユリが何本かあり、咲いた痕跡を留めている。 高木層の樹冠に隙間(ギャップ)は見当たらないが、ヤマユリが咲ける明るさはあるということだろう。


A15−3
飯室山〜長者穴古墳の中間にあるデッキから眺めて、話し合った。
ここは国士館大学の磯谷達宏先生に教えて戴いた谷頭凹地である。中央にエノキの大木がある。 土壌が安定していないために植生が特異になっている。
ササ刈り時に赤い実がなっていたためアオキを残したが除伐したいとの意見があった。
野鳥班からは、実がなる木なので残してほしいとの意見があった。


A15−4、A15−1

昨年度の市民部会の際に伐るということで結論を出したはずのニワトコの古木が残してあった。
長者穴古墳の少し上の辺りには何本ものニワトコが見られる。 見上げると樹冠が切れてギャップが生じていることが分かる。 日向の好きなスイカズラ科の落葉低木である。A15−4地区はA15地区の中では、林床が一番明るい場所のようである。 今年この部分にキツネノカミソリが咲かなかったのは、まだ刈り方が不十分ということだと思われる。 急斜面で作業は大変だと思うが、今年度も下草刈りが必要と思われた。
ニワトコの赤い実も野鳥の好物だが、周辺に何本もあるためか伐採に反対する意見は出なかった。
大きく成長したニワトコは周辺を暗くしているかも知れない。
先程のデッキの少し下から小さな水流が生じている。 この水流は涸れていることが多いのだが、水流に面した小さな崖面にはシダ植物が繁茂しているので、ササ刈り時に刈らないようにしてほしいという意見が、シダ植物班から出された。 植生管理計画の中では水流沿いの部分を別の管理区分にしておく必要があるだろう。

長者穴古墳の前で、シダ植物班班長にシダの説明をしてもらった。 このような動植物についての観察会が行われることは大歓迎である。
園路の水流側には一面にシャガが生えている。
シャガは中国原産の帰化植物である。日本のシャガは種子ができないことから、人為的に植えられたものが広がったと考えられる。
このシャガの中にキツネノカミソリが混ざって出ていた。また、ヤマホトトギスは園路にはみ出して蕾をつけていた。
キツネノカミソリなどの在来の野草のためにシャガを苛めることが話し合われた。
また、水流沿いにあるヤマグワ2本の伐採についても合意された。


予定を終えて、中間部のデッキに戻り、お茶とお菓子で休憩し、暫しの歓談を楽しんだ。



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特定非営利活動法人かわさき自然調査団
Kawasaki Organization for Nature Research and Conservation