第08−11回生田緑地植生管理協議会市民部会
「尾根の園路(北部公園事務所〜枡形山〜飯室山)の植生管理を考える」

2009/2/23 更新

日時 2009年2月22日(日)10:00〜13:00
場所 生田緑地(北部公園事務所〜枡形山〜飯室山)
参加 かわさき自然調査団水田ビオトープ班/尾形達也、佐藤利奈、下口達夫、田中 渉
   川崎市北部公園事務所/堀江洋
   市民部会事務局/岩田臣生、岩田芳美
                  参加者7人

北部公園事務所前に集合して、今日の活動について説明しました。
前半はA1〜A5地区について、休憩を挟んで後半はB1〜B5について現地を調べて考え、話し合うことにしました。
地形学的には頂稜にあたる部分の植生管理を考えようということですが、この部分は緩傾斜部分が殆どありません。 また、野鳥班や植物班の参加も得られませんでしたが、天気には恵まれました。 今年度最終回の市民部会ということで、来年度の活動に向けてという視点も持ちながら、歩きました。

A2地区は中央園路に面している造成切土平面。
昔は駐車場として利用されていたそうで、地面には砂利を敷いた痕跡が残っている。 サクラの幹に棲息するコヤガの仲間などの観察会に使われている。
高木/サクラ(胸高直径76cm)4本、ヒマラヤシーダ2本
亜高木/サワラ2本
草本/アズマネザサが下側斜面から這い上がってきている。
評価/やや良い(2票)、普通(3票)、やや悪い(2票)
長所は明るいこと、見晴らしが良いこと、欠点は砂利敷き。
植生管理案/南側の眺望を確保するため下側急斜面の上部2〜3mの下草刈り、落葉は落葉溜めを設けて集める。

A1地区は中央園路北側の切土法面。
業者による除草作業が定期的に行われている。
高木/シラカシ1本
亜高木/マツ5本
低木/ドウダンツツジ
評価/やや良い(1)、普通(4)、やや悪い(2)
長所はよく管理され、見苦しくないこと。欠点は表土まで削るような除草作業のため良好な草地にならず地面が露出していること。

A3地区はA2同様の切土平面だが、園路とは区別されている。(下の写真の園路の右側)
高木/サクラ12本、ユズリハ1本
亜高木/マテバシイ4本
低木/サザンカ、ツツジ
その他/野鳥の通り道になっている。
評価/良い(3)、やや良い(3)、普通(1)
長所/人工的だけど良く管理されている。眺望が活かされている。安らぎを感じることができる。
植生管理案/下側斜面の上部2〜3mの下草刈り。南側の見晴広場の中央にあるマテバシイは無い方が良い。ベンチが欲しい。

A4地区は、中央園路を挟んでA3の反対側、アズマネザサ密生の雑木林である。 ここは園路によって3つの区域に分かれ、状況も異なる。

A4−3地区は中央園路に面した切土法面と思われる。上の写真の中央園路左側の斜面がそうである。
除草管理がされているが、実生樹木は放置されているため見通しが悪くなっている。
植生管理案等/実生樹木の整理、七草峠の名前にふさわしい草地づくり。

A4−2地区は南北に伸びる尾根の頂稜である。
高木・亜高木/コナラ、サクラ、アカマツ、シラカシ、ツバキ
低木・草本/アズマネザサ(部分的に極端な密生状態にあり、枯れかけている)
評価/良い(2)、やや良い(1)、やや悪い(4)
長所/野鳥の移動の通り道。欠点/気持ちよくない。鬱蒼としている。アズマネザサが枯れ出している。
植生管理案/野鳥に影響の無い方法で、アズマネザサを少しずつ更新する。

A4−1地区は丘頂であるが、斜面の勾配は急である。 南側斜面は園路に面している。
高木/コナラ(胸高直径54cm)
低木・草本/アズマネザサ密生
評価/やや良い(3)、やや悪い(4)
長所/コナラ、アズマネザサの構成。欠点/長所を活かしていない。実生樹木が生えている。ネザサが伸び過ぎている。
植生管理案/南側斜面のササ刈り

A5地区は園路の外は急斜面となっている。
高木/コナラ、ヤマザクラ
評価/良い(5)、やや良い(2)
長所/雑木林を代表するコナラの路となっている。欠点/両斜面上部のアズマネザサが繁茂し、常緑樹も入って、見通しが悪くなっている。
植生管理案/10年後を考えた手入れが必要、今が良ければいいというのは間違い。
コナラが老熟している。更新を考えないといけない。
雑木林全域の更新を考えるためにこうした活動を始めている。目立たない所から実験を始めている。

前半の活動を終えて、枡形山で小休止。
天候に恵まれて来園者が大勢いました。

後半のスタートです。枡形山広場東端の一段下がった所とその間の斜面について考えました。 空間としては一体の広場であり、その広場の樹木に関心が向いてしまう。
評価/普通(5)、やや悪い(2)
欠点/綺麗に掃除され過ぎていて、サクラの保護が考えられていない。
植生管理案/サクラの根元の保護。この部分は人が少ないので、この地区でサクラの保護策を実験的に実施する。

B2、B3地区は枡形山と飯室山を結ぶ吊り尾根の部分である。 大部分は園路の両側とも急斜面となっているが、部分的に多少傾斜の緩いところも見られる。 この様なところは下方で支尾根になっている部分と思われるが、コナラなどの高木が下方へ続いている。
評価/良い(2)、やや良い(3)、やや悪い(2)
長所/野鳥が多い。
欠点/見晴らしが悪い。尾根の良さが活かされていない。アズマネザサが衰退している場所も多く、健全な状態ではない。暗い。適切な管理がされていない。
常緑樹林への遷移が進んでいる場所が数ヶ所ある。この部分ではコナラやアズマネザサが枯れたりして、地被植物の無い急斜面となりつつある。 地被植物が無くなることで浸食の速度が速まるのではないかという心配もある。
植生管理案/尾根部のシラカシなど常緑樹の植生管理についての実験的試み。

B4地区は飯室山頂部平坦面です。
枡形山広場とは異なり、落葉を残してあり、自然を感じられます。
北側のアズマネザサは高さもあり、気持ち悪いと感じる人もいるかも知れませんが、平坦面の植生保護のために当面は刈らずにおきたいところです。
植生管理案/石畳の園路の内側の植生回復・保護のため、簡単な柵も設けて、人の立ち入りを制限する。

B5地区はB4の平坦部の東端にある見晴台の眼前の頂部斜面です。 今回はB5地区の中央にある尾根状の部分より東側半分を調べた。 この下部に、昨年5月に磯谷先生に案内して戴いた谷頭急斜面、谷頭凹地が続いている。
長者穴古墳へ降りる丸太階段の周辺にはコナラなどが分布しているが、 谷状地形の上部にあたる見晴台の前にはアズマネザサが繁茂しているほかは、 実生と思われる3〜5m高のアカメガシワなどが一面に広がっている状態。
評価/やや悪い(7)
欠点/ササが伸び過ぎている。アカメガシワなどのパイオニアが侵入している。
植生管理/頂部斜面のササ刈り、アカメガシワなどの伐採

今日の活動を終えて、お茶を飲みながらの反省会を行いました。
今回検討してきた範囲でも実施すべきことはたくさんありました。
生田緑地の雑木林の更新を考えるためにも、できるだけ多くの場所の状態を知る必要があります。 要所要所の園路沿いの急斜面上部の植生管理を実施し、見通しを良くすることも、本格的な植生管理の準備として必要という認識を共有しました。
また、常緑樹林に遷移することで地被植物が消えることは、七草峠〜枡形山〜飯室山の尾根路の両側斜面においては、 尾根路の維持という視点からは望ましくないという認識も共有しました。

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