生田緑地の谷戸の自然保全活動



ヨシ原のハンノキ伐採

日時 2015/11/28(土) 10:00〜13:20 晴
場所 生田緑地 ヨシ原
参加者 岩田臣生

ヨシ原のハンノキ 3本のうちの 1本を伐採しました。
ここのハンノキは生田緑地に自生していたハンノキではありません。
ホタルの里整備事業によって、この場所に階段と木道が設置されました。
この辺りを散策する人たちの中には、双眼鏡を使って、辺りを眺めている人も大勢います。 そのため、この木道の直ぐ近くに住んでいたTさんから、「家の中を覗かれているようだ。目隠しが欲しい。」という声が出されました。
一方、隣地で畑を耕作していたYさんからは、「樹木など植えられては困る。止めてくれ。」という主張があり、対立していました。
北部公園事務所としては、木道整備による実害を評価して、目隠しのためにカツラの苗木を植えました。 しかし、これは直ぐに枯れてしまい、その後に、替わりにハンノキを植えました。

やがて、諸事情からTさんが引っ越し、目隠しを求める人がいなくなりました。
これを待っていたかのように、2008年夏には、Yさんから、ハンノキを伐ってくれと北部公園事務所に要望が出されました。
2007年1月からヨシ原のヨシの管理などを水田ビオトープ班が始めていましたので、このハンノキの伐採について、北部公園事務所から現地立会を求められ、造園業者を入れた3者で現地協議を行い、 いくつかの注意事項を付して伐採することを決めました。
確かに、これらのハンノキは大きく成長していました。 しかし、持ち込みの樹木とは言え、絶滅危惧種のミドリシジミが生息するようになって、谷戸の末端部でもミドリシジミに出会えるようになっていました。 このハンノキを除伐してしまえば、この辺りでミドリシジミに出会うことはできなくなるでしょう。
2009年6月頃、Yさんに会った時に「北部公園事務所は伐採すると約束したのに、まだ伐採してくれない。」という話が出てきましたので、「私が年内に伐採する」と約束しました。
伐採するとは言っても、除伐ではなく、萌芽更新を繰り返して、大きくしなければいいだろうと考えていました。
そして、5本ぐらいなら簡単に伐採できると思い、2009年11月27日に、一人で伐採することにしました。 (活動参照)
しかし、始めてはみたものの、隣地側の2本は住宅側に傾いていたため、垣根を壊したら大事になると思い、木道側の3本のみ伐採し、残りの2本は北部公園事務所に任せることにしました。
この活動によって、伐採作業しながらミドリシジミの卵を見つけるのは困難だと分かりました。 そして、伐った枝を積んでおいて、後から、関心のある昆虫班のメンバーに卵を見つけて保護してもらいました。
翌年(2010)、3本は萌芽更新が成功しましたが、2本は枯れてしまいました。

2013年になって、また、Yさんが伐採しろと言い出しました。 この時は、生田緑地には指定管理者が入っていましたので、指定管理者から相談されて、年に1本ずつの伐採で勘弁してもらうことにしました。
2014年11月28日に、1本伐採し、伐採した枝などは、別のハンノキの根元に積みました。 (活動参照)
その枝についていた卵が孵化した時に、生命力のあるミドリシジミなら自力で、そのハンノキに上って生き延びてくれるだろうと考えてのことです。
また、1本なら比較的容易く伐採処理ができるだろうと考えました。
伐採した枝にあった卵がどうなったかは不明ですが、伐採したハンノキからは萌芽枝が伸びています。

今年もまた、「まだ伐採しないのか」と催促を受けたと指定管理者から話を聞きました。
この日のハンノキの伐採は、こうした状況による伐採です。
通りがかりの来園者が「何でハンノキを伐採するのか」とクレームをつけてくれることを期待していましたが、残念なことに苦情を言ってくれる人はいませんでした。 ミドリシジミの発生時期でもなければ、そんな人はいるはずがないのですが、...。
絶滅危惧種の保護よりも、隣地からの「畑に不都合だから伐れ」というクレームを優先させるという生田緑地整備事務所の方針に納得しているわけではありません。
このクレームは、ハンノキを植えた時の経緯に対する感情的なものが原因だと思われ、実際に作物に影響があるのかは疑問視しています。
川崎市の生物多様性地域戦略は、こうした地域の個別の課題に対しては、解決の糸口を与えてはくれないようです。

帰り道、田圃脇の草の上で、オオアオイトトンボ♀を見かけました。

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特定非営利活動法人かわさき自然調査団
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