生田緑地の自然保全活動


モニタリング
日時 2014/3/28(金) 9:50〜14:00 晴
場所 生田緑地 
参加者 岩田臣生

アオイスミレは既に確認済でしたが、何人もの方から「スミレが咲き始めた」という連絡を戴きましたので、状況を調べておくことにしました。

ケマルバスミレは毎年衰退しています。
花をつけている株は14でした。 まだ、これから発芽するものもあると思いますが、今年は夏場に、保護のための除草をしてみようと思います。 どなたか、生態についてご存知の方がいらっしゃいましたら、ご教示ください。


ナガバノスミレサイシンは、開花している場所もあれば、発芽もしていないような場所もあり、狭い範囲での環境の違いを表しているかも知れません。
しかし、今回のように広い範囲を見て歩くと、生田緑地ではかなり広い範囲に分布していることがよく分かります。


同じように、狭い範囲での違いがみられたのがヤマルリソウでした。
既に咲いている株が集まっている場所と蕾さえつけていない株ばかりの場所があります。
神植誌2001によると、県内では丘陵〜山地のシイ・カシ帯〜ブナ帯下部にやや普通とあります。 言い換えると、県内の低平地には見られない植物です。 川崎の生物多様性の特徴の一つは、多摩丘陵があるために、このような山地の植物が見られることだと思います。


ヒゴスミレは来園者に楽しんでもらうための管理を始めてから随分年月が経ちました。 初めは植物班や北部公園事務所の職員が一緒になってアズマネザサ刈りなどをしていましたが、時期を間違えなければ全てを刈ってしまうことも可能だと分かり、 その後は行政による管理をお願いし、様子を見て、補足的に手入れをしています。
当初はヒゴスミレの保護目的で始めた活動でしたが、ヤマユリ、オトギリソウ、ホトトギス、ヒメハギなども見られるようになりました。
また、アズマネザサの勢いが弱くなった半面、ススキやハギが勢力を強くしています。 このため、管理の仕方を少し変えることも検討した方がいいかも知れません。
今回、ヒゴスミレを調べてみたら、花をつけている株が30、まだ葉のみのものと合わせて、70〜80株ありました。


コスミレはまだ早いのだと思います。 舗装園路の隙間などに小さな株が5〜6、花をつけていました。 多分、舗装面の温度上昇が早く起こっているためだと想像されます。
いつも沢山の花が見られる場所に何も無いのが気になりますが、これこそ2週間、様子を見なければならないでしょう。


アカネスミレは神植誌2001によれば、県内では全域に最も普通に見られ、雑木林や草地、畑の土手などに生えるとあります。 しかし、生田緑地の場合は広い範囲には分布していないようです。
アカネスミレの無毛のものをオカスミレといいますが、日当たりのいい場所に1株、オカスミレを見つけました。


ニオイタチツボスミレは、神植誌2001には、県内では海岸から丹沢、箱根、小仏山地まで、夏緑樹林内や草地に生えるとあります。
生田緑地で観察されるのは、崖地など乾燥気味の場所に見られますが、個体数としては非常に少ないスミレです。 今回も環境的に限られた場所で、1ヶ所あたり1〜3株が見られました。


この他、勿論、タチツボスミレは非常に広い範囲で見られました。 また、葉脈が赤いアカフタチツボスミレもありました。

アズマネザサ刈りをして保護管理しているフデリンドウが蕾をつけ始めていました。


ウグイスカグラは概ね、どこでも盛りを迎えていて、沢山の花をつけていました。
園路の中で咲いているシュンランがありました。

残念なのは、枡形山のヤマアジサイがアズマネザサ刈りによって伐られてしまったことです。
私は、この光景を見て、頭の中が真っ白になり、詳細に調べることができませんでしたので、1本も残っていないかどうかは確認していません。 そして、1本ぐらい残っていてくれることを願っています。
指定管理者との「アズマネザサだけを刈り、アズマネザサ以外のものは刈らない」という約束は守られませんでした。
神植誌2001によれば、県内では丘陵地や山地の林縁や樹林内にやや普通に生えるとあります。 しかし、生田緑地では別の生育地から消えたことで、ここだけになっていたと記憶しています。
県内分布図を見ると、多摩丘陵から三浦半島にかけて、点々と分布していることが読め、植生としての多摩・三浦丘陵連携を示しているようにも思われる植物です。
目立たない花ですが、生田緑地ではファンの多い植物の一つです。

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特定非営利活動法人かわさき自然調査団
Kawasaki Organization for Nature Research and Conservation