生田緑地サマーミュージアム
奥の池の外来生物調査


日時 2010/7/31(土)9:00〜15:30 晴
場所 生田緑地の谷戸
講師 勝呂尚之
参加者 生田緑地の谷戸とホトケドジョウを守る会(金子雅典、竹内久登、成島弘国、村田良平)
    相川健志、小幡翔吾
    かわさき自然調査団(毛部川弘行、小泉恵佑、佐藤利奈、下口達夫)
コーディネート 岩田臣生、岩田芳美

生田緑地サマーミュージアムに参加するのは2度目です。
今回は生田緑地が抱えている外来種問題を来園者に知ってもらう試みとして、奥の池の外来生物駆除をイベント化してみました。
外来生物を採集すること、
採集した生物を手にとって見てもらうこと、
外来生物についてのパネルを展示して、見てもらうこと
野外ミニ・シンポジウムとして意見交換を行うこと
同時に夏休みの子どもたちにも調査そのものに参加してもらい、奥の池に入って、生物採集をしてもらうこと、
また、夏休みの自由研究として、外来生物についてのレポートづくたに取り組んでもらうこと
等々を1日で行うことを計画しました。

当日は、外来種についての問題提起などのパネルを並べる作業から開始しました。パネルを立てる台は生田緑地のアズマネザサを使って作りました。
神奈川県立生命の星・地球博物館の苅部主任学芸員からもメッセージ・パネルを戴きました。
神奈川県立水産技術研究所内水面試験場からも、外来魚についてのパネルを展示がありました。
準備を終えたところで、一休みして、活動参加者の自己紹介を行いました。
生田緑地サマーミュージアム「奥の池の外来生物調査」に事前の参加申込みがあったうちの2人がキャンセルとなり、尾崎、工藤、豊島、森田の4名がイベントへの参加となりました。
神奈川県立生命の星・地球博物館の苅部主任学芸員からメッセージを戴きました。
神奈川県立水産技術研究所内水面試験場から外来魚についてのパネルを展示して戴きました。 準備を終えたところで、一休みして、活動参加者の自己紹介をしました。
生田緑地サマーミュージアム「奥の池の外来生物調査」に参加申込みがあったうちの2人がキャンセルして、尾崎、工藤、豊島、森田の4名の参加となりました。

ホトケドジョウを守る会とかわさき自然調査団水田ビオトープ班の参加者が生物を採集していきました。


同時に、通り掛かった来園者に外来生物の説明をしたりする活動も絶え間なく続きました。


採集した外来生物はウシガエル、アメリカザリガニ、ミシシッピーアカミミガメでした。
ウシガエルのオタマジャクシ 30
アメリカザリガニ 大76、中99、小124、合計299
ミシシッピーアカミミガメ 1
コイ           2
オオアメンボ       3
コマツモムシ       1
モツゴ        259
メダカ         72
スジエビ       176
ヌカエビ       101
ホトケドジョウ      1
フナ          10

簡単に片づけをして、お弁当を食べました。
午後は野外ミニ・シンポジウムです。
シンポジウム参加者は少なかったので、並べたパネルの前で、パネルを使って行うことにしました。
まず、勝呂先生から神奈川県の外来魚などの話をして戴きました。

勝呂/ 今日は外来生物を考える野外シンポジウムということで、皆がポスターをつくってくれたので、これの説明から始める。
これは内水面試験場でつくった外来魚のポスターだ。

外来魚というのは多くて、川に行けば普通に外来魚ばかりとれる。
外来魚の定義だが、昔は、国の外から入ってきたものを指していた。最近、環境省、農水省などで統一して、地域の外から入ってきたものを外来種ということになった。
例えば、琵琶湖にいる魚が多摩川に入ってくれば、それは外来種になる。
外国から入ってきたものを国外外来種、国内の移動によって入ってきたものを国内外来種という。
国外外来種で有名なものは、ブラックバス、ブルーギル、テラピア、ガーパイク、ニジマスなどだ。
国内外来種では、意外と知られていないが、オイカワ、タモロコなど、昔は東日本にはいなかった。かなり昔に入ってきたので分からなくなっている。
ムギツク、ゲンゴロウブナなども、いなかった。
だから、多摩川で魚捕りをすると半分ぐらいは外来種になる。
その他、最近困ったことに鑑賞魚、熱帯魚を放す人が出てきた。ピラニア、アロアナ、ガーパイクなど、何が出てもおかしくない。

この外来魚、外来生物の影響を簡単に復習してみる。
まずは、直接捕食することがある。
それ以外の影響として、例えば、ゼニタナゴの保護をしていたが、少しずつタイリクバラタナゴが増えて、5年で入れ替わってしまった。
この2種は餌が同じ、産卵する二枚貝も同じ。
日本の生物は競合に弱いのかも。
小さくても、何かが入れば必ず影響がある。直接的、間接的影響がある。
対策、魔法は使えない。地道に駆除を行う以外に方法は無い。
取っても、取っても、減らない。
こんなことをして意味があるのかと、よく聞かれるが、意味はある。
今、アメリカザリガニを取っても,来年の夏には同じぐらいに増えてしまうかも知れない。でも、一時期、数を減らすことができる。
一時期数を減らすことができれば、その間に、シオカラトンボとか、アカネの仲間とか、イトトンボの仲間とか、短期間で羽化できる種は救える。やれば、効果はある。
もう一つは生態系全体の復元が必要だということ。
外来種だけを取っていても仕方ない。外来種が増えたということは、川や湖の環境が悪くなってきたということだ。
安定した生態系のところでは、僅かの外来種で大きく影響を受けることはない。
神奈川県内の河川は、どこも水が汚染されたり、川をコンクリートで造り替えてしまったりとか、水を取り過ぎたりとか、周りの森が駄目になっているとか、次から次に悪いことが重なっている。
そこに外来種が入ったので影響が大きくなっている。
だから、外来種を駆除しながら河川の環境を元に戻すということを、河川管理者などと協調しながらやっていくことが大事だ。

生田緑地のホトケドジョウについては今まで保全してきているが、岡本太郎美術館を建てた時に生息地を壊してしまった。
教育委員会ということでもあったので、予算もついて、関係者、市、県ぐるみで保全が行われた。
この上の方の池ではホトケドジョウの復元をしている。
ここのホトケドジョウは結構、下に落ちてくるので、下の池でも増えてほしいが絶対増えない。

生田緑地には生田緑地憲章という大事な基本的ルールがある。生き物を持ち込まない、持ち出さないというルールで、地元の生き物を守るための大事なルールだ。

今日採集した生き物についてみよう。
アメリカザリガニは、最初に日本に入ったのは1927年、ウシガエル養殖用の餌として入ってきた。
大船にアメリカザリガニ発祥の地という石碑が建っている。
これが日本全国に広がったことになっている。本当かどうか、DNAを調べた方がいいと思う。
アメリカザリガニは魚を食べるし、水生昆虫を食べる。
余り知られていないが大きくなると植物を食べる。稲を食べたり、陸生の植物が被っていたり、根が出たりしているのを食べる。水草も食べる。
植物を食べることが、河川や湖の生態系にダメージを与える。
多くの魚類が水草を利用している。産卵や稚魚が隠れる場になっている。
この水草が無くなると、生き物は3分の1くらいに減ってしまう。
コイも同じ影響がある。
しかし、これが人気者だから困っている。
藤沢メダカを守る会というのがある。彼らは地元のメダカを守っているのだが、先日、ビオトープをつくる相談を受けた。
その時に、そこに残す生き物について相談した。 
そしたら、「ザリガニは昔からいるから残してもいいですよね。」というのだ。
アメリカザリガニしかいないような所で育ったことが可哀そうだ。
大きなゲンゴロウとか、タガメとか、テナガエビとか、そういうものが沢山いたところで育ってきていない。
アメリカザリガニの巣窟のようなところで、アメリカザリガニと接して育ってきたから、アメリカザリガニに対して悪いイメージを持っていない。
このイメージを変えることが課題だ。啓発が大切だ。

ウシガエルも同じ時期に入ってきた。
ウシガエルは魚も食べる。体が大きいので、他のカエルも食べる。在来のツチガエルとかダルマガエルなどが食べられてしまう。ウシガエルが入ると、魚も減るが、両生類がいなくなる。
今、日本のカエルはピンチにある。まともに残っている種類がない。ツチガエル、シュレーゲルアオガエル、トウキョウダルマガエルなど、本当に減ってしまった。
オタマジャクシが大きいのは越冬するタイプが多い。日本のカエルは余程条件が悪くなければ越冬するものはない。
ウシガエルは越冬して、1年ちょっとでカエルになる。冬に大きなオタマジャクシがいたらウシガエルだ。
ウシガエルは特定外来種に指定されている。特定外来生物というのは、環境省にホームページがあるが分かりにくい。
これは採って何処かに移してはいけない。飼育してもいけない。販売しても、譲渡してもいけない。許されるのは、採って、その場で殺す、その場に戻す、これだけだ。
違反者には3年以下の懲役、3百万円以下の罰金と重い罰が課せられる。

奥の池で見られる外来種の3つ目はミドリガメ。
ミドリガメが、これだけ増えたのには日本の文化が関係している。日本人にとってカメは神がかり的な存在で、殺せない。
夜店で買っても2〜3年すると後足の爪が伸びて、危険を感じるようになる。このために放してきなさいということになる。浦島太郎のイメージで亀を放すのはいいことだと思っている。
都市部の公園はアカミミガメだらけになっている。
どうして特定外来生物に指定されていないのか不思議に思う生物、ミシシッピーアカミミガメとかアメリカザリガニ、水草ではオオカナダモなど、がいる。環境省の説明だと、今更やっても仕方ないという諦めがあるらしい。穿った見方をすると、裏に業界がついているのだと思う。



続いて、良い機会なので参加者からも意見をもらうことにしました。

岩田/かわさき自然調査団水田ビオトープ班では、この北側の谷戸の保全活動をしている。そこではアメリカザリガニが凄い。今回、県立生命の星・地球博物館の苅部さんからもメッセージを戴いた。
アメリカザリガニは人気者なので特定外来生物に指定されなかったということで、駆除し辛いが、私たちは、昨年は5千匹ぐらいを駆除した。
2004年に田圃を再生した。その水域にトンボが産卵に来て、田圃一面がヤゴだらけになった。そのヤゴを餌にして、アメリカザリガニが一気に増えてしまった。
先程、アメリカザリガニは植物も食べるという話があったが、この谷戸で復活したミズニラをはじめとする大事にしたい植物が、復活して間もなく食べられて消えてしまうという状態で困っている。

〇奥の池は水生昆虫が全然いない。アメリカザリガニはいるし、モツゴ、メダカなどは怪しい。土日に、調査や駆除の活動をするのは、人目にもつくのでいい。

岩田/今日は、生田緑地サマーミュージアムという普通の人が来園する時に合わせて行った。

〇採ったアメリカザリガニを見た人が「まだザリガニがいたんだ。懐かしいな。」と言っていた。ザリガニは身近な生き物なんだと思った。移入されてから百年以上経つので仕方ないのかとも思う。外来生物に罪はないということが駆除を難しくしている。
下の池にホトケドジョウが棲むようになるといいと思う。

岩田/下の池に落ちたホトケドジョウは皆、食べられているということですか。

勝呂/そうですね。それから水温の問題もある。下の池の方が水温が高いので弱っているところを食べられてしまう。

勝呂/水が濁っているのは特定のプランクトンが増えているということだ。公園のビオトープではよくある。生物の多様性が低い。安定した水域ではないので特定の種だけが増える。

〇アメリカザリガニも生態系の一部として安定するように持っていくことも一つの方法ではないか。ザリガニが減ると、今までザリガニに食べられていた生物が増えてしまって、生態系が崩れるのではないか。ザリガニを含めた生態系バランスを考えてはどうか。

勝呂/アメリカザリガニを入れた生態系というのはオオクチバスなども入れた北米の生態系にするということになる。 完全に駆除することはできないから、その状態で考えなければいけないということか。

〇奥の池に初めて入った。種数が少ない。水生昆虫がいない。異常な感じがした。
田圃の方ではアメリカザリガニが多い。子どもの頃はこんなにいるとは思わなかった。こんなに多いのは異常だ。地道に駆除を続けないといけないと思った。

〇奥の池の外来生物駆除は2度目だが、アメリカザリガニが多いと思った。水生昆虫が見られるかと思って活動しているが全然見られない。今回のような大勢の目に触れる機会に活動して、人を取り込んでいけるような活動を続けるべきだ。

〇初めて外来生物駆除の活動に参加した。アメリカザリガニの多さに更めて驚いた。
ポスター展示というのも聞いたことが無かったが、大学では教えてもらえないことを知ることができた。

〇アメリカザリガニやウシガエルは生態系に大きな影響を与えるものだと思うが、子どもの頃にはアメリカザリガニはアイドル的な存在だった。そういうアメリカザリガニの駆除は大変だと思う。

〇フナが可愛かった。

〇去年よりウシガエルが減っていたので、やらないより、やった方がいい。

〇ホトケドジョウとアメリカザリガニについての研究をしているが、ホトケドジョウの尾びれに傷があったり、今日のように水生昆虫がいなかったりするのをみるとアメリカザリガニの影響は大きく、駆除は必要と感じた。

〇田舎の出身だが、今の子どもは魚はブラックバス、エビはアメリカザリガニ、カエルはウシガエルしか知らない。本当の自然を知らない。こういう機会は本来あるべき自然を知るきっかけになる。地道な作業だが、続けていかなければならないと思う。

〇今、葉山でも保全活動をしている。そこでもアメリカザリガニの駆除を始めた。アメリカザリガニとともにアライグマもいる。アライグマのせいでヘビが減ったと聞いている。水生昆虫や魚類はまだ調査ができていない。調べないと変化が分からないから調べることを始めようと思う。

〇初めて外来生物駆除に参加した。作業をしていると、通り掛かった人が何をしているのかと聞いてくる。外来生物とは何かということを知らない人が大勢いると感じた。この様な活動は、これからもやった方がいいと思った。

〇昨年、菖蒲池の活動では水生昆虫が見られたので、期待していたが、水生昆虫類は見られなかった。子どもたちはアメリカザリガニ池は嬉しいのかも知れないが、大人にとってはトンボ池であって欲しい。駆除を続けて、トンボ類が棲めるようにしたいと思った。

勝呂/上の池では調査の度にアメリカザリガニを駆除しているので、トンボも3種類ぐらいのヤゴを見られる。やればやっただけの効果はある。

〇以前に調査した時にオオアメンボがいたが、その後見ていない。自然は他からいろいろなものが飛んできて多様になろうとしている。それをアメリカザリガニのような外来生物が止めている。

岩田/先程本来あるべき姿の自然という話があったが、奥の池の本来あるべき姿とはどんなものと考えるか。

勝呂/ここは谷戸田の一番奥のため池のイメージだ。
本来の自然とは異なるかも知れないが、江戸時代ぐらいのため池のイメージだ。
湧水があって、ギンブナがいて、タナゴの仲間がいて、上の方にはホトケドジョウがいる。トンボもいろいろな種類がいて、ミズカマキリとか、タイコウチがいる。そんな状態になったら最高だ。



本当に忙しいプログラムでした。初めての試みだったので、参加してくれた子どもが少なかったのは幸いだったかもしれません。
参加してくれたボランティアが、駆除だけの活動ではなく、こうした普及啓発活動が大切だということを理解してくれたことは嬉しい。
外来生物駆除という観点だけからでも、これだけ多様なプログラムが可能であること、また、それらを連携させることの意味も感じ取ることができたと思います。

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