日時 2016/1/10(日) 10:00〜12:00 快晴
ガイド講師 水田ビオトープ班(岩田臣生)
サポート 事務局 岩田芳美
観察会参加者 25人(大人21人、子ども4人)
(麻生区 4、多摩区 4、宮前区 7、中原区 4、東京都 5、横浜市 1)
観察会の下見をした時には、材料になるものが何も見当りませんでしたが、今朝は木道の手摺の上にフユシャク♀を3個体見つけることができました。
普通の観察対象が無い状態の中で、冬にしか出会えない昆虫がいてくれたことで、安心して観察会のガイドに向かうことができました。
勿論、基本的には、季節を選べば、こんな動植物に出会えるという観察会となることは仕方ないと思っていました。
また、時間を余らしてしまいそうなので、挨拶がてら、生田緑地や里山についての話を少ししました。
生田緑地の雑木林は環境省の特定植物群落として50haが指定されています。
多摩丘陵の雑木林は、標準的には、コナラ・クヌギ群集といわれ、生田緑地でもコナラを主とする落葉広葉樹林として保全することを合議しています。
その雑木林の観察から始めることにしました。
中央広場は2012年3月に改修工事を終えましたが、これに合わせて、ヤマツツジの咲く、明るい雑木林を観察できるように管理してきた中央広場北側の雑木林を観察しました。
葉を落としている季節は木肌の観察が容易にできます。コナラを観察することから、里山の自然の観察を始めました。
広場から手の届く場所に、種子をつけたコウヤボウキが観察できました。
枯草にしか見えませんが木本であり、蚕室などで箒として使われていたことからの名前だということですが、蚕の繭から生糸を紡ぐという文化を思い出す機会になれば良かったと思います。
七草峠付近の崖面には、春、桜が咲く頃には、ヒゴスミレが咲き、初夏にはヤマユリが咲き、初秋には萩が咲くという話をしましたが、
観察対象が無い長い坂道を歩いてきたので、詳しくはシダ植物班によるシダの観察会に参加してほしいとことわって、生田緑地でよく見られるべニシダ、イノモトソウなどのシダも観察しました。
実をつけているヤドリギの観察も行いました。
野鳥のファンの人もいて、キレンジャクの話に及びました。
冬に繁殖活動をする昆虫は冬の観察会の重要な観察対象です。
翅が退化していて飛べないフユシャク♀を観察しました。
谷戸へ降りる階段の崖面は観察会を意識して保全管理を行っていますが、今回はハンショウヅル(種子)、タマノカンアオイ、ウグイスカグラ、オオバノイノモトソウなどを観察しました。
ピクニック広場の南側斜面にキイロスズメの大きな巣を観察しました。
空巣であっても、大きいだけで観察対象になります。
活動するスズメバチがいないことで、安心して観察できます。
例年だとキブシの蕾が膨らんでいるのですが、昨秋の激しい気温変化のためか、蕾は枯れたように見えました。
その後は萌芽更新地区の上側の探勝路を歩き、アオキの葉痕、イワガネソウ、ミヤマガマズミ(実)、ヤマホトトギス(実の殻)、カシワバハグマ(実)、コウヤボウキ(実)、年越ししたジョロウグモなどを観察しました。
萌芽更新地区の下に出て、ニワトコやオニグルミの葉根を観察しました。
また、この辺りから湧水が見られますので、生田緑地の湧水についての話をしました。
付近に、少しですが、アオバトの羽が落ちていました。
生田緑地では通過鳥として毎年記録されていますが、珍しいものです。
生田緑地のハンノキ林も環境省の特定植物群落に指定されています。
ハンノキ林にはミドリシジミが生息していることを写真で紹介しました。
林床の水辺は、生田緑地の生物多様性保全において重要な場所だと考えて保全をしていることを話しました。
冬は、春まで枯葉を着けている落葉樹のヤマコウバシが目立ちます。
参加者は、どうして落葉しないのかという不思議に関心を持ってくれました。
田んぼは里山の重要な要素だと思います。
生田緑地の谷戸に再生した田んぼを観察しました。
万葉集にも出て来るような「ひつじ」、「ひつじ田」という言葉を紹介しました。
アズマヒキガエルの蛙合戦の話は、参加者の興味を引いたようです。
この田んぼでは、アズマヒキガエル、シュレーゲルアオガエル、ホトケドジョウ、トンボ類、マメゲンゴロウ、クロセンブリなどが繁殖に利用しています。
田んぼの下側の草地に野鳥の羽が散乱していました。
オオタカに襲われたキジバトの羽でした。
冬から春にかけては、よく見られる光景です。
参加者は、里山のドラマを想像しているようでした。
付近には谷戸を横切る獣道がくっきりと付いていました。
タヌキに出会ったわけではないのに、参加者は、タヌキの通り道だという話に興味津々の様子でした。
観察対象が無い季節だというのに、時間が過ぎてしまい、ここで解散としました。
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