生田緑地観察会　2012/8/5

生田緑地サマーミュージアム
夜の生き物観察

日時　2012/8/5(日) 18:30～21:00　晴
ガイド講師　水田ビオトープ班　岩田臣生、岩田芳美　
サポート　神山歩未、小泉恵佑、下口達夫
観察会参加者　　11家族30名

平成24年の生田緑地サマーミュージアムに、水田ビオトープ班としては＜夜の生き物観察＞を行うことにしました。
プログラムへの参加受付は広報に掲載した「科学館前時計塔」で行い、スタートは 18:30 枡形山としました。 18時ころの中央広場は、片付け作業が行われていて、落ち着けません。
参加者は、就学前または小学校低学年の子供１～3人を連れた親子ばかりでしたので、この子どもたちに、市街地の中の里山の夜の自然観察を味わってもらうことにしました。
参加者の居住地は、市内多摩区から 2家族 5人、宮前区から 4家族 12人、麻生区から 1家族 2人、横浜市青葉区から 2家族 5人、世田谷区から 1家族 2人、千葉県松戸市から 1家族 4人でした。

枡形山広場は、このプログラムの参加者だけしかいなかったので、周囲に気を遣うこともなく、観察会を始められました。
観察は、地面の穴から出てくるアブラゼミの幼虫を探すことから始めました。
川崎で見られるセミは7種、ニイニイゼミ、アブラゼミ、ハルゼミ、ヒグラシ、ミンミンゼミ、ツクツクボウシ、クマゼミの7種ですが、生田緑地では　ニイニイゼミ、アブラゼミ、ヒグラシ、ミンミンゼミ、ツクツクボウシの5種類が生息しています。
このうちアブラゼミとツクツクボウシは鳴き始めたばかりですが、5種の鳴き声が聞かれる季節になっています。
枡形山広場ではアブラゼミが多く羽化しますし、足場が良いので観察会には適しています。
歩いている幼虫を踏み潰さないように注意して、一つ一つ穴を調べていきましたが、穴から顔を出す場面は見つけられませんでした。
しかし、地面を歩いている幼虫を見つけて、サクラの幹に登るところを観察しました。

＜地面の穴から出てきて樹に登り始めたアブラゼミの幼虫＞

調査団では「皆でできる自然調査」として川崎市域のセミを10年間調査しています。この結果から得られた知見について、岩田芳美が説明しました。
これだけでも、夏休みの自由研究にすることができるというので、子どもたちは真剣に聞いていました。

＜ニイニイゼミの抜殻＞
　セミの脱殻のオス、メスの見分け方を話したところ、ニイニイゼミの脱殻を持ってきて、オスか、メスかと聞いてくる子がいました。
でも、ニイニイゼミの脱殻は小さくて、表面に泥がついています。残念ながら、見分けられませんでした。アブラゼミは分かりやすいのですが、ニイニイゼミは難しく、いきなり恥ずかしい思いをしてしまいました。

＜ヤブキリ♀＞
どこにいたのか、ヤブキリを捕まえてきた子がいました。
ヤブキリは藪に棲むキリギリスというところからの名前で、主に夜間に活動する肉食性の昆虫です。この個体には直線的で大きな産卵管がありましたので、明らかにメスでした。

＜樹液に集まるカブトムシ、カナブン、、クロカナブン、蛾類など＞
次に、夜間、樹液に集まる昆虫を観察しました。
生田緑地の樹液が出ている樹は多くはありません。夏になると、樹液に集まる昆虫を採集するために雑木林に入る人がいるため、大事に管理している植物が踏み潰されていたりします。生田緑地のような大都市の市街地の中の野生生物は、その場で観察するだけにしてほしいと思います。その意味からは、このような樹液ポイントは教えない方がいいのかも知れません。
迷った結果、樹液を求めて昆虫が集まっている様子を園路から観察してもらうことにしました。樹液の出る樹を目指して雑木林に入る一部の大人たちには知られているポイントですので、虫好きの子どもたちには観察してもらうことにしました。
丁度、カブトムシ2匹、カナブンやクロカナブンが多数止まっていて、蛾の仲間が目を金色に光らせて樹の周りを飛んでいる光景を、ライトを照らすことで観察することができました。私たちにとっても感動できる光景でしたが、参加者（大人）からも「こういうのを見たかった。」、「参加して良かった。」という声が聞かれました。

＜手摺りを歩いていたヒグラシの幼虫＞
何を考えているのか、園路の手すりの上を歩いているヒグラシの幼虫がいました。樹に登るつもりで柵に登ってしまったようです。羽化のために地上に出てきたセミの2種目です。

＜オオゲジ＞園路の柵には、こんな生物もいました。
ムカデの仲間で、ゲジ目ゲジ科に分類され、夜行性、肉食の生物です。
ちょっと気持ち悪いと思うのですが、皆さん、真剣に観察していました。

＜キマワリ＞
甲虫目ゴミムシダマシ科の昆虫で、特に夜行性ということはないのですが、サクラの幹に出ていました。

＜昆虫を捕食するために樹に登っていたニホンヤモリ＞
参加者がヤモリを見つけました。
爬虫綱有鱗目ヤモリ科の生物です。平安時代以降にユーラシア大陸から来た外来種と考えられています。江戸時代に来日したシーボルトが新種として報告したため　Gekko japonicus　と名付けられましたが、日本固有種ではないようです。しかし、群馬県、埼玉県では準絶滅危惧種に、東京都区部では絶滅危惧Ⅱ類に指定されています。
人家周辺など、人の生活に近い所に棲息していて、夜行性です。

＜クワカミキリ？＞
木道脇のオオミゾソバの葉上にクワカミキリ？がいました。こんな所で何をしているのかは分かりません。観察会のために出てきてくれたのでしょうか。

＜カラスウリの花＞
今年はカラスウリの開花が遅いように思われます。でも、辛うじて、カサスゲの中に2輪咲いていました。
ほんの一部しか見えていませんでしたが、雌雄異株であること、受粉にはスズメガの仲間が働いていること、名前は唐朱瓜、実の朱色から来ていることなどを説明しました。

＜コフキコガネ＞
甲虫目コガネムシ科のコフキコガネがいました。夜行性で、生田緑地でライトトラップをすると多数集まってきます。
子供たちには一人一人手に取って、感触を確認してもらいました。

＜シュレーゲルアオガエル幼体＞
木道脇のオオミゾソバの葉上に寝ているシュレーゲルアオガエルを見つけました。上陸して間もないシュレーゲルアオガエルの子どものようです。
かわいいので、参加者の子どもたちの興味を引いていました。

＜カマキリ幼虫＞
カマキリは、この季節、まだ幼体です。
カマキリの目は夜も見えるので、狩りをしていたのかも知れません。

＜コクワガタ♀＞
木道の手すりの上にコクワガタ♀がいました。
クワガタと聞いて、子どもたちは大騒ぎとなりました。子供たち全員が目で確認してから、一人一人手に取ってもらいました。掴む時の力加減は体験しないと分かりません。

＜スジグロボタル幼虫の発光＞
木道脇でスジグロボタルの幼虫が発光するところを観察してもらいました。
スジグロボタルは寒冷地の生物で、氷河期の生き残りといわれています。生田緑地の宝の一つだと思っています。
「子どもたちにはカブトムシの方が上のようですが、本当は、こっちの方が凄いことですね。」と言ってくれる参加者がいて、嬉しくなりました。

＜ナナフシモドキ＞
ナナフシ（ナナフシモドキ）がいました。子どもたちは大好きなようです。
植物食ですが、夜間、敏捷に活動します。

＜キマワリ＞
また、キマワリがいました。

＜手摺りで羽化しているヒグラシ＞
木道の手すりにぶら下がるように羽化しているヒグラシがいました。
ヒグラシの羽化はなかなか観察できません。今日の参加者は幸運です。

公園管理事務所に近い谷戸の降り口まで来ましたが、もう8時半です。こんなに沢山、いろいろな生物に出会えるとは予想していませんでした。
樹液が殆んど出なくなったクヌギに、カブトムシ♀1、カナブン、ケシキスイなどがいました。西口駐車場に車をとめている人もいたことから、ここで、樹液に集まる昆虫を観察して、解散にしました。

東口に帰る人はクスノキの辻まで送り、時間を気にしないという家族はニイニイゼミの羽化を観察できる場所に案内しました

アブラゼミの死骸を食べているアオオサムシがいました。
甲虫目オサムシ科の昆虫です。
素早く歩き回りますが、飛べません。
ミミズやイモムシ、小動物の死骸を食べます。雑木林の掃除屋で、本州の関東地方、中部地方以北に分布します。
アブラゼミの死骸を食べるアオオサムシ

観察会参加者と別れた帰り道でもアオオサムシが出てきました。

日時　2012/8/5(日) 18:30～21:00　晴ガイド講師　水田ビオトープ班　岩田臣生、岩田芳美　サポート　神山歩未、小泉恵佑、下口達夫観察会参加者　　11家族30名平成24年の生田緑地サマーミュージアムに、水田ビオトープ班としては＜夜の生き物観察＞を行うことにしました。プログラムへの参加受付は広報に掲載した「科学館前時計塔」で行い、スタートは 18:30 枡形山としました。 18時ころの中央広場は、片付け作業が行われていて、落ち着けません。参加者は、就学前または小学校低学年の子供１～3人を連れた親子ばかりでしたので、この子どもたちに、市街地の中の里山の夜の自然観察を味わってもらうことにしました。参加者の居住地は、市内多摩区から 2家族 5人、宮前区から 4家族 12人、麻生区から 1家族 2人、横浜市青葉区から 2家族 5人、世田谷区から 1家族 2人、千葉県松戸市から 1家族 4人でした。枡形山広場は、このプログラムの参加者だけしかいなかったので、周囲に気を遣うこともなく、観察会を始められました。観察は、地面の穴から出てくるアブラゼミの幼虫を探すことから始めました。川崎で見られるセミは7種、ニイニイゼミ、アブラゼミ、ハルゼミ、ヒグラシ、ミンミンゼミ、ツクツクボウシ、クマゼミの7種ですが、生田緑地では　ニイニイゼミ、アブラゼミ、ヒグラシ、ミンミンゼミ、ツクツクボウシの5種類が生息しています。このうちアブラゼミとツクツクボウシは鳴き始めたばかりですが、5種の鳴き声が聞かれる季節になっています。枡形山広場ではアブラゼミが多く羽化しますし、足場が良いので観察会には適しています。歩いている幼虫を踏み潰さないように注意して、一つ一つ穴を調べていきましたが、穴から顔を出す場面は見つけられませんでした。しかし、地面を歩いている幼虫を見つけて、サクラの幹に登るところを観察しました。＜地面の穴から出てきて樹に登り始めたアブラゼミの幼虫＞調査団では「皆でできる自然調査」として川崎市域のセミを10年間調査しています。この結果から得られた知見について、岩田芳美が説明しました。これだけでも、夏休みの自由研究にすることができるというので、子どもたちは真剣に聞いていました。＜ニイニイゼミの抜殻＞　セミの脱殻のオス、メスの見分け方を話したところ、ニイニイゼミの脱殻を持ってきて、オスか、メスかと聞いてくる子がいました。でも、ニイニイゼミの脱殻は小さくて、表面に泥がついています。残念ながら、見分けられませんでした。アブラゼミは分かりやすいのですが、ニイニイゼミは難しく、いきなり恥ずかしい思いをしてしまいました。＜ヤブキリ♀＞どこにいたのか、ヤブキリを捕まえてきた子がいました。ヤブキリは藪に棲むキリギリスというところからの名前で、主に夜間に活動する肉食性の昆虫です。この個体には直線的で大きな産卵管がありましたので、明らかにメスでした。＜樹液に集まるカブトムシ、カナブン、、クロカナブン、蛾類など＞次に、夜間、樹液に集まる昆虫を観察しました。生田緑地の樹液が出ている樹は多くはありません。夏になると、樹液に集まる昆虫を採集するために雑木林に入る人がいるため、大事に管理している植物が踏み潰されていたりします。生田緑地のような大都市の市街地の中の野生生物は、その場で観察するだけにしてほしいと思います。その意味からは、このような樹液ポイントは教えない方がいいのかも知れません。迷った結果、樹液を求めて昆虫が集まっている様子を園路から観察してもらうことにしました。樹液の出る樹を目指して雑木林に入る一部の大人たちには知られているポイントですので、虫好きの子どもたちには観察してもらうことにしました。丁度、カブトムシ2匹、カナブンやクロカナブンが多数止まっていて、蛾の仲間が目を金色に光らせて樹の周りを飛んでいる光景を、ライトを照らすことで観察することができました。私たちにとっても感動できる光景でしたが、参加者（大人）からも「こういうのを見たかった。」、「参加して良かった。」という声が聞かれました。＜手摺りを歩いていたヒグラシの幼虫＞何を考えているのか、園路の手すりの上を歩いているヒグラシの幼虫がいました。樹に登るつもりで柵に登ってしまったようです。羽化のために地上に出てきたセミの2種目です。＜オオゲジ＞園路の柵には、こんな生物もいました。ムカデの仲間で、ゲジ目ゲジ科に分類され、夜行性、肉食の生物です。ちょっと気持ち悪いと思うのですが、皆さん、真剣に観察していました。＜キマワリ＞甲虫目ゴミムシダマシ科の昆虫で、特に夜行性ということはないのですが、サクラの幹に出ていました。＜昆虫を捕食するために樹に登っていたニホンヤモリ＞参加者がヤモリを見つけました。爬虫綱有鱗目ヤモリ科の生物です。平安時代以降にユーラシア大陸から来た外来種と考えられています。江戸時代に来日したシーボルトが新種として報告したため　Gekko japonicus　と名付けられましたが、日本固有種ではないようです。しかし、群馬県、埼玉県では準絶滅危惧種に、東京都区部では絶滅危惧Ⅱ類に指定されています。人家周辺など、人の生活に近い所に棲息していて、夜行性です。＜クワカミキリ？＞木道脇のオオミゾソバの葉上にクワカミキリ？がいました。こんな所で何をしているのかは分かりません。観察会のために出てきてくれたのでしょうか。＜カラスウリの花＞今年はカラスウリの開花が遅いように思われます。でも、辛うじて、カサスゲの中に2輪咲いていました。ほんの一部しか見えていませんでしたが、雌雄異株であること、受粉にはスズメガの仲間が働いていること、名前は唐朱瓜、実の朱色から来ていることなどを説明しました。＜コフキコガネ＞甲虫目コガネムシ科のコフキコガネがいました。夜行性で、生田緑地でライトトラップをすると多数集まってきます。子供たちには一人一人手に取って、感触を確認してもらいました。＜シュレーゲルアオガエル幼体＞木道脇のオオミゾソバの葉上に寝ているシュレーゲルアオガエルを見つけました。上陸して間もないシュレーゲルアオガエルの子どものようです。かわいいので、参加者の子どもたちの興味を引いていました。＜カマキリ幼虫＞カマキリは、この季節、まだ幼体です。カマキリの目は夜も見えるので、狩りをしていたのかも知れません。＜コクワガタ♀＞木道の手すりの上にコクワガタ♀がいました。クワガタと聞いて、子どもたちは大騒ぎとなりました。子供たち全員が目で確認してから、一人一人手に取ってもらいました。掴む時の力加減は体験しないと分かりません。＜スジグロボタル幼虫の発光＞木道脇でスジグロボタルの幼虫が発光するところを観察してもらいました。スジグロボタルは寒冷地の生物で、氷河期の生き残りといわれています。生田緑地の宝の一つだと思っています。「子どもたちにはカブトムシの方が上のようですが、本当は、こっちの方が凄いことですね。」と言ってくれる参加者がいて、嬉しくなりました。＜ナナフシモドキ＞ナナフシ（ナナフシモドキ）がいました。子どもたちは大好きなようです。植物食ですが、夜間、敏捷に活動します。＜キマワリ＞また、キマワリがいました。＜手摺りで羽化しているヒグラシ＞木道の手すりにぶら下がるように羽化しているヒグラシがいました。ヒグラシの羽化はなかなか観察できません。今日の参加者は幸運です。公園管理事務所に近い谷戸の降り口まで来ましたが、もう8時半です。こんなに沢山、いろいろな生物に出会えるとは予想していませんでした。樹液が殆んど出なくなったクヌギに、カブトムシ♀1、カナブン、ケシキスイなどがいました。西口駐車場に車をとめている人もいたことから、ここで、樹液に集まる昆虫を観察して、解散にしました。東口に帰る人はクスノキの辻まで送り、時間を気にしないという家族はニイニイゼミの羽化を観察できる場所に案内しましたアブラゼミの死骸を食べているアオオサムシがいました。甲虫目オサムシ科の昆虫です。素早く歩き回りますが、飛べません。ミミズやイモムシ、小動物の死骸を食べます。雑木林の掃除屋で、本州の関東地方、中部地方以北に分布します。観察会参加者と別れた帰り道でもアオオサムシが出てきました。

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