かわきた第245号(2013年8月発行)掲載「川崎の自然をみつめて」
かたつむり

かわさき自然調査団 岩田臣生

 梅雨というのはシトシトと雨が降る季節のことだと思っていましたが、今年の梅雨もそんな風情はなく、カタツムリに会えずに過ごしてしまいました。私は川崎に住みながら自然に接して生活しているつもりですが、それでもカタツムリに出会う機会は少なくなっているように思います。
 昔は、雨の日の通学路わきの生垣などには必ずと言っていいほどカタツムリがいたと記憶しています。でも、今の子どもたちの中にはカタツムリを知らない子どももいるのではないかと思ってしまう程見られなくなってしまいました。ですから、童謡の「でんでんむし」も、わざわざカタツムリを探して来て教えてあげないと意味が分からなくなっているかも知れません。カタツムリを観察したことが無ければ「でんでんむし」という呼び方を理解するのは難しいでしょう。
 カタツムリというのは、陸上に棲む巻貝で、貝殻が細長くないものの総称です。それから貝の口に蓋が無く、頭部にある大小2対の触覚のうち大きい方の触覚の先端に目があります。また、雌雄同体です。移動能力は低く、山や乾燥地、川などを越えることができませんので種分化が起こり易い生物ですが、ウスカワマイマイや外来種のオナジマイマイなどは広域に分布しているようです。
 第7次川崎市自然環境調査報告書を編集するに際して、今までの報告書を全て調べて、記録されている野生生物の目録を作成しましたが、その時に、良く見なれている生物なのに記録されていない生物があることに気がつきました。その中の一つの分野がカタツムリでした。ですから川崎のカタツムリについて語るのは難しいのですが、多摩区の生田緑地での自然保全活動を通して3種のカタツムリ、即ち、ミスジマイマイ、ヒダリマキマイマイ、ニッポンマイマイが現存することは確認しています。
 カタツムリの仲間は日本に700種いると言われ、小さいカタツムリの分類同定は難しいのですが、殻が2cmを超えるカタツムリで、川崎で見られるものは2種しかいません。しかも、それは右巻きならミスジマイマイ、左巻きならヒダリマキマイマイという共にオナジマイマイ科のカタツムリです。
 さて、巻貝が右巻きか、左巻きかの判別はできるでしょうか。その判断は、巻貝の細くなった先端が見える側を上にして横から見た時に、殻口が右にあれば右巻き、左にあれば左巻きと覚えてください。これで貴方も、大きなカタツムリを見つけた時に、「これはミスジマイマイです。」、「これはヒダリマキマイマイです。」と周りの人に教えてあげることができます。
 ミスジマイマイは関東地方南部から中部地方東部に分布する日本固有種で、ヒダリマキマイマイは本州北部と周辺の島々に分布します。
 大きさを1cm以上に広げると難しくなりますが、それでも左巻きはヒダリマキマイマイだけです。また、ニッポンマイマイ(ナンバンマイマイ科)は、殻高がある山形の形をしていて、丘陵地の林縁の草地などで見られます。
 1〜2cm大のその他のカタツムリは、ウスカワマイマイ(オナジマイマイ科)は殻が丸く、スジが無く、薄いカタツムリで、人家近くの明るい環境で見られます。殻が平たくて巻き数が少ないのがミスジマイマイで、巻き数が多いのがオナジマイマイ(同科)という東南アジア原産の外来種で、人家付近や田畑で見られます。
 少し難しくなってしまいましたが、大きなカタツムリ2種だけでも分かるようになるといいことがあるかも知れませんね。

この文章は、かわきた第245号 2013年8月発行に掲載されたものです。
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