生田緑地植生管理協議会市民部会
里山倶楽部B
 

中央地区北側の雑木林を観察し、生田緑地の自然について考えてみよう!
♪mission モニタリングしながらモニタリングを考えること

日時 2013/6/15(土) 10:00〜13:00 曇
場所 生田緑地 ピクニック広場地区、萌芽更新地区、ハンノキ林地区
参加 川田 茂、清田陽助、白澤光代、額谷悠香、平賀孝政、政野祐一、水田茂子、宮崎宗人
  (市民部会事務局)岩田臣生、岩田芳美                        10人

生田緑地整備事務所前に集合しました。


 【モニタリング A05 ピクニック広場地区】 
参加者のうち二人には樹林構造図の形で意見交換の内容を記録してみてもらうことにしました。
ピクニック広場地区では、南北方向の断面図に中央園路〜アズマネザサの斜面〜テーブルベンチのある平坦面〜カントリーヘッジ〜アズマネザサの斜面〜草地の緩斜面です。
東西方向の断面図に階段上の崖面〜階段〜階段下の斜面〜草地〜テーブルベンチのある平坦面〜アズマネザサの茂みが含まれます。



階段を降りながら、階段上の崖面の状態を観察しました。
10年前にはアズマネザサが茂っていてウグイスの通り道になっていたため、トラップを仕掛けてウグイスを捕獲している人がいました。
ベニシダやオオバノイノモトソウなどシダ植物が目立ちますが、ハンショウヅル、オカタツナミソウ、タマノカンアオイなどが観察されます。
管理としては実生を適宜取り除くこと、特に、手の届く範囲のアズマネザサ、アオキ、シュロ、ヤツデなどは気になった時に除伐しています。
・冬、木道の手すりでフユシャク類♀が観察できる。
・植栽だが、生田緑地ではここにだけメグスリノキがある。
・ハンショウヅルは保護している。
・オカタツナミソウが咲きます。



ピクニック広場地区は、2007年9月9日の市民部会での話し合いにより、「林床に草本植物が繁茂できる樹林」を目標にすることを合議しました。
しかし、当該地区はアオジ等の野鳥を観察できる場所であったためササ刈りに反対する意見が強かったことから、話し合いを継続し、 当該地区東端の木製階段部分の見通しを良くするという目的と合わせて、2008年11月15日の市民部会において、東側の斜面のみを対象に、枯損木の撤去、ヤマグワ等の小径木の除伐、 アズマネザサ刈りなどを行いました。
ところが、その後、2年経っても、3年経っても、林床にはキヅタだけが繁茂し、種子をつけてくれる草は勿論、アズマネザサも生育しませんでした。
そこで、林床を明るくするために斜面下部にあった直径15cm程のミズキなど6本の樹木を伐採し、広場部分の草地を広げ、チョウの吸蜜場所となる草地を広げるという計画案をもって話し合いを進めました。
2011年3月、半ば強引ではありましたが、反対していた人たちの了解を得て、3月22日の市民部会においてこれらの樹木を伐採しました。
その年の夏の草地斜面は切り株からの萌芽、アカメガシワなどの実生のほか、草の勢いが強く、ギャップができたことによる効果が表れました。
晩秋には枯草を刈り、残った種子は叩き落としておきましたが、そこにはアオジやシメのみならずクロジも観られたようです。
・アオジがカントリーヘッジの中に入っていた。
・シメが虫を食べていた。
・クロジがアズマネザサの茂みと草地の境目辺りで観察された。
・アトリが良く観られた。生田緑地にアトリが来るのは珍しい。

毎日のように生田緑地の野鳥を観察しているという参加者から、クロジが観察できるのは生田緑地の中でもここだけとの情報提供がありました。 ミズキの伐採については少し強引に説得して合意を得たものなので、この情報は植生管理が適切であったという評価として嬉しく受け止めました。
草地としてはチョウの吸蜜源を確保することを第一目的としましたが、この日観られたのはキチョウ、スジグロシロチョウ、イチモンジチョウだけでした。



 【モニタリング A18 ピクニック広場下地区】 
ここは冬期にアズマネザサを刈っていますが、草刈りはしていません。
草が生えることで降雨が地面にしみ込む確率は高くなったと思います。
エノキの大木から落ちた実や草の種子を食べているのか、シメ、シロハラ、アオジなどを観ることができます。


【モニタリング A06 萌芽更新地区】
萌芽更新地区は1998年12月に伝統的な里山管理手法としての萌芽更新を目指してコナラを伐採した1200平米程の区域です。
国庫補助事業で行われた伐採は皆伐ではなかったそうですが、それでも山を丸裸にしたという沢山のクレームが市に届いたと聞いています。
それだけの事業を行いながら伐採後の管理については道筋がつけられないままに経過していました。 そのため、伐採後9年経っても、萌芽更新地区という名称からは程遠い状態にあり、萌芽更新事例を見学に来園した人たちをがっかりさせていました。
2008年1月19日の市民部会では、伐採後のモニタリングを継続してきた藤間熙子さんから8年間の記録を基にした報告を戴き、 その後、現地の確認も行い、目標について話し合いました。 その結果、萌芽更新地区という名称にふさわしい、萌芽更新を繰り返すコナラ・クヌギ林を目標にすることを決めました。
具体的な方法は、林床を明るくすること、アズマネザサを刈ること、落葉かきをすること、落葉だめをつくること、モニタリングのための区画を設定することなどを話し合いました。
その後は、下図のA06-1aについては中央部に人為的なギャップをつくり、林床を明るくする活動を、 A06-1b および A06-3 についてはアズマネザサ刈りを、A06-2 については手を入れない管理を行いました。 胸高直径30cmを超えるヤマザクラやイヌシデ、ケヤキは残すことにしました。
管理を初めてから5年が経過し、区域ごとに植生の状態が大きく異なってきました。
今回の里山倶楽部では、この違いを観察し、評価して、次の段階の植生管理についての意見を聞きたいと考えていました。

A06-1b は落葉広葉樹林で、低木層〜亜高木層は殆どなく、草本層を高さ50cm程のアズマネザサが優占しています。 そのアズマネザサの中から、このような環境に生育するという腐生植物が花を咲かせていました。 神植誌2001によれば神奈川県東部には記録されていない植物です。

A06-1a はムクノキ、キリ、アカシデなど、直径20〜30cmの樹木を伐採してギャップをつくり、林床を明るくしました。 これにより、様々な実生が発芽し、生育して、低木層〜草本層が賑やかになっています。 また、ヤマユリも咲いています。
2008年に決めた目標植生に向けては、範囲を決めて、その範囲の皆伐を行う時期になったのではないかと思います。 このことについて意見を聞きたいと思いました。

A06-2 は手を入れない管理をしてきた区域ですが、何本かの樹木が倒れ、疎らな林になったと思います。




【モニタリング A07 ハンノキ林地区】
ハンノキ林の林床の水辺や湿地には、かつての多摩丘陵の谷戸に生息していた生物が生き残っています。 その生物たちの棲息環境を保全し、将来に渡って生き続けられるようにすることを目的に、取り返しのつく範囲でやってみて考えるを基本に、水田ビオトープ班は活動を始めました。
2006年12月に、植物班の協力を得て、毎木調査を行い、手の入れ方を検討しました。
調査の結果、当該地区の南の方にはハンノキが少ないことが分かりました。
そこで、2007年1〜2月に、南の方の木製デッキに面した場所のアカメガシワやヤマグワの茂みを伐採し、水流沿いに生えていたアオキを数千本抜き取りました。 そして、5月に、湿地に生えてきた実生のハンノキを5本移植してみました。
このハンノキは、様々な昆虫の攻撃を受けて、残るは2本になりました。 また、明るい場所に生えた実生のハンノキと比べて成長が悪く、育っていません。 もう少し広い範囲のアカメガシワなど、ハンノキ以外の樹木の伐採を検討する時期になっていると思います。
2009年1月から、陸地化が進んでいた林床には水溜りになるような穴をいくつか掘りました。 これらは、湧水量が潤沢な時期には水溜りになっていますが、少ない時期には涸れています。
降雨時に増水した水流は多くの土砂と一緒に流れていて、所々に土砂を溜めたり、伏流したり、水面を失うことが頻繁に起こっています。 このため、泥あげを行って開放水面をつくったり、流れを管理することが、水流部分の主な活動になります。 この時、泥の中には様々な生物がいるものと考えて泥あげを行わなければなりませんが、小さな生物は視認困難なため時期や方法を工夫しなければなりません。


【モニタリング ワークショップ】
指定管理者がきれいにしてくれたベンチで休憩し、ワークショップを行いました。
意見交換の内容を樹林構造図としてメモしていた二人が報告しました。
このような経験を積むと、何を記述しなければならないかが分かってくると思います。 モニタリングの指標となるものをどのように表現するかも大切です。 この日は、あくまで試みとしてであり、皆が楽しんでくれたことで良かったと思います。

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特定非営利活動法人かわさき自然調査団
Kawasaki Organization for Nature Research and Conservation

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