生田緑地植生管理協議会有志による
指定管理者についての勉強会
八王子市立長池公園、都立長沼公園


日時 2011/2/26(土) 10:10〜16:00 晴
場所 八王子市立長池公園
講師 内野秀重(長池公園自然館副館長)
   富永一夫(フュージョン長池公園 代表)
   石黒富江(多摩丘陵の自然を守る会 会長)、岩本嘉之(同会)、池田丈三(同会)
参加者 倉本 宣、かわさき自然調査団(岩田臣生、岩田芳美、小泉恵佑、雛倉正人)、
    生田緑地の雑木林を育てる会(5人)、飛森谷戸の自然を守る会(2人)、管理運営協議会(4人)
    川崎市(3人)   

川崎市は生田緑地を指定管理者の管理に委ねることを決めていますが、生田緑地の植生管理に関わっている市民団体としては、 今まで直接、協議してきた行政との間に指定管理者が割り込んでくる形になることに不安を感じています。 また、指定管理者では自然の保全はできないという意見を複数の人から聞いています。
そこで、明治大学教授であり、生田緑地植生管理協議会会長でもある倉本先生を中心に生田緑地植生管理協議会有志による勉強会を行うことを昨年12月の生田緑地植生管理協議会運営会議において決めました。
今後、先生と交流のあるいくつかの公園を見学し、どの様な公園で、どの様なシステムで、どの様なボランティアの活動が行われているのか、自然はどの様な状況にあるのか等を勉強していき、生田緑地のフィールド部分の指定管理者のあり方についての現実的な話し合いに結びつけたいと思っています。

今回訪問させて戴いた公園は、八王子市の東南部にある長池公園で、同公園の指定管理者であるフュージョン長池公園の内野副理事長、富永理事長から話を伺いました。 また、同じ市内の長沼公園で活動しているボランティアの方たちには長池公園まで来て戴いて、お話を伺いました。
ヒアリングの結果については、勉強会の内部で整理させて戴きます。

長池公園は多摩ニュータウン開発の中で整備された公園で、2000年に開園しています。 センター施設の自然館や里山ボランティアのための作業小屋、田圃への水を汲み出すポンプ施設など、機能として必要なものは全て公団が整備しています。 しかし、開園から10年経過していますので部分に応じた修繕、改修などは必要で、改修できずに使用不可とするものも出始めていました。

自然条件については、多摩川水系大栗川支流別所川の源流域で、面積20ha、公団が最源流部の長池とその周辺4haは特別保全地域としてフェンスを設置して保護していて、公団の設定したゾーニング(特別保全地域 4ha、保全区域観察ゾーン 3.7ha、保全区域体験ゾーン 4ha、利用区域)が用いられています。
特別保全地域の長池の奥にハンノキ林(20本程度)があります。
今までに確認されている植物は735種、哺乳類は8種(アナグマ、ノウサギが棲息)、鳥類は78種、爬虫類は8種、両生類は5種(ヤマアカガエルが棲息)、魚類6種(トウヨシノボリが棲息)、蝶71種、トンボ45種です。
公園の南側は多摩ニュータウンの尾根幹線を挟んで町田市小山田地区、鶴見川源流域の広大な緑の領域に繋がっているので、当該公園の生物相はビオトープネットワークに支えられていると思われます。水辺環境としては長池、築池、姿池という止水域が主でありますが、オオクチバス、ブルーギル、アメリカザリガニ、ウシガエル、ミシシッピーアカミミガメなどが棲息しています。

指定管理者であるフュージョン長池公園は、NPOフュージョン長池を中心に、(株)富士植木が規模の大きな管理作業を、(株)プレイスが植物の専門家である内野氏を派遣して自然の保全に配慮した公園管理を行っており、自然館が拠点施設となっています。
また、作業小屋を拠点に、体験ゾーンをフィールドとして長池里山クラブというボランティア団体が田圃活動や植生管理、炭焼きなどを行っていますが、年度単位の登録会員は300人だそうです。 ただ、子どもが田植えをする場面などを写真に撮るのが目的で、撮影する時しかいないという会員も多いようで、主体的に活動しているのは10人ぐらいのようです。
下の写真にある観察ゾーンのササ刈りや間伐は指定管理者が実施しているとのことでした。

内野さんから長池公園についての説明を伺った後、園内を案内して戴きました。

ササ刈りは園路沿いを残して内部を刈り、そのまま刈った場所に放置してありました。

公団は築池の上に突き出す形で木製のデッキを整備していましたが、10年経過する中で木部が腐ってしまい、八王子市はかけ替えるための予算措置を取らなかったようです。

草地の斜面の草刈りを一様に行うことを止めて、島状に刈り残したところをつくっていて、そこに、こんな看板を設置していました。

道案内の標識や落ち葉溜めに犬の糞やゴミを捨てないでくれという標識など、みな手作りで工夫されていました。

体験ゾーンは長池里山クラブの活動フィールドでした。

植物のガイド標識も工夫されていました。

雑木林の林床のササ刈りが行われてありましたが、パッチワーク状に行うことで生物の保護を考えているようでした。

萌芽更新を目指して今年伐採したという地区です。観察ゾーンなので、指定管理者であるフュージョン長池のスタッフが伐採したとのことでした。 樹齢は太いものでも、40年ぐらいのようでした。 また、「里山再生間伐実施のお知らせ」という看板が設置されていました。

ササ刈りは刈払機を使っているようですが、刈った場所に「危険」の標識を設置していました。

大きな落ち葉溜めが設けてありました。

自然館に戻って昼食を済ませてから、富永館長から指定管理者に求められる能力などについてのお話を伺いました。


続けて、長沼公園と平山城址公園で活動している多摩丘陵の自然を守る会の石黒さん、岩本さん、池田さんから 長沼公園でのボランティア活動が指定管理者制度の導入によってどの様な影響があったかについてお話を伺いました。

片倉から桜ヶ丘公園に至る多摩丘陵北端の多摩川水系浅川に面する丘陵地は昭和25年に都立多摩丘陵自然公園に地域指定されていましたが、 公園とはいっても民有地であったために、多摩ニュータウンの開発が始まった1970年頃からの住宅地開発の波に洗われて、 多摩丘陵自然公園の緑は寸断されてしまいました。 その中で残ったのが、長沼公園、平山城址公園、多摩丘陵自然公園、桜ヶ丘公園などの公園だったようです。
長沼公園は1980年に都立公園として開園しました。面積は32haです。
地形は、多摩川水系浅川に面した北向きの斜面の部分で、急な支尾根と沢がありますが、所謂、谷戸田が形成されるような谷底部はありません。
ここの自然を守るために活動しているのが「多摩丘陵の自然を守る会」の皆さんです。
東京都は、2006年度から、都立公園に指定管理者制度を導入しました。 長沼公園は単独ではなく、長沼公園、平山城址公園、小山田緑地、小山内裏公園、桜ヶ丘公園の多摩丘陵グループ( 5公園)という扱いで、 (財)東京都公園協会が指定管理者となりました。 長沼公園内には管理事務所等のセンター施設は無く、桜ヶ丘公園サービスセンターが管理する形になっています。
指定管理者制度導入以前の都立公園の管理は(財)東京都公園協会が行っていました。 従って、実質的な変化は無いように想像されましたが、そこで活動しているボランティアから見た意見や感じていること等を聞きました。

(財)東京都公園協会は1999〜2005年度、(株)自然教育研究センター(略称/ CES)に、長沼公園・平山城址公園保全保護管理という業務を委託して里山環境保全活動のコーディネイトおよび管理業務を行っていました。
同会にとっては、経験の無かった雑木林の管理を指導してくれ、一緒に活動してくれる身近な存在だったようです。
CESの業務が終了することで、お役所的なボランティアの管理が始まったようです。
指定管理者である東京都公園協会は、長沼公園、平山城址公園、桜ヶ丘公園については「丘陵地レンジャー」を配置して、 園地に残る生物多様性を有する貴重な環境の保全管理を行うことで利用者サービスの向上を図ることを計画し、 この丘陵地レンジャーのサポートを行う「丘陵地ボランティア」を位置づけて、募集し、配置しているようです。
桜ヶ丘公園のボランティアの待遇は私たちが羨ましくなるぐらい手厚いものですが、長沼公園はだいぶ条件が異なるようです。 5つの公園を管理するという立場と長沼公園のボランティアの立場との考え方の差は大きいかも知れませんが、調整されてきたこともあるようです。


事例見学は、今まで気がつかなかった視点や考え方などを気づかせてくれるので大切な活動だと感じています。

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特定非営利活動法人かわさき自然調査団
Kawasaki Organization for Nature Research and Conservation