生田緑地植生管理協議会市民部会
飯室山〜長者穴古墳地区を考える

2009/6/1 更新

日時 2009年5月31日(日)10:00〜12:30 曇、終わる頃に雨が降り始めた
場所 生田緑地 飯室山〜長者穴古墳地区
参加 かわさき自然調査団/佐々木和子、佐野悦子、八尾百香
   生田緑地の雑木林を育てる会/井口 実、井口かおる、喜多大己、久保田浩二、白澤光代、
                 土屋邦雄、土居治子、藪 哲二
   市民部会事務局/岩田芳美、岩田臣生
   北部公園事務所/山口泰民
                  参加者人14人

10時に北部公園事務所前に集合して、活動内容について説明、自己紹介を済ませてから飯室山へ向かいしました。
下図の右上の赤丸印の部分が飯室山〜長者穴古墳地区で、この日はここの植生管理を計画しようというプログラムです。 当該地区の下草刈りを実施したいと考えている「生田緑地の雑木林を育てる会」から8名の参加がありました。 集合した北部公園事務所は図の左下であり、全員で歩いて飯室山に向かいました。

途中、枡形山〜飯室山の辺りの樹林は遷移が進み、常緑樹林に変わりつつあります。
秋以降の市民部会で扱う予定ですが、夏の状態も園路から観察しておいて戴きました。

飯室山に登る途中でミズイロオナガシジミに出会いました。
ミズイロオナガシジミは、落葉ブナ科、生田緑地ではコナラ、クヌギの雑木林に棲息し、卵で越冬、 幼虫はこれらの新葉を食べて成長し、年1回、6〜7月に出現するチョウです。北海道から九州まで広く分布し、かつては雑木林に普通に見られたチョウです。



飯室山の広場から、いよいよ対象地区になります。
飯室山から北東に向かって、飯室山の頂部斜面、谷頭急斜面を経て谷頭凹地、谷底部が殆ど無い小さな狭い谷になっています。
園路は山頂から谷頭凹地までは南側の尾根筋に丸太階段で整備されており、中間から下は谷筋を木製階段等が整備されています。 この園路は長者穴古墳の横穴が園路沿いにいくつもあること、樹木等が鬱蒼と繁って見通しが悪いことなどから、 慣れない来園者からは恐い道、気持ち悪い園路としての評価を戴いています。 反面、野鳥に出会える機会の多い園路として野鳥のファンからは良い評価を戴いています。

この地区については、かわさき自然調査団植物班、野鳥班や行政と相談しながら「生田緑地の雑木林を育てる会」が、頂部斜面〜谷頭凹地の下草刈りをしてきました。 前回のササ刈りから数年が経過し、ササ、実生のアカメガシワやヤマグワなどが伸びてきたことから、下草刈りをしたいとの申出に対して、 市民部会を開催して、植生管理計画づくり、植生管理、モニタリングというサイクルをつくることとしたものです。
この市民部会の目的は、気持ちの良い園路景観づくりと生物の棲息環境保全との調整をしながら将来に向かっての目標植生を明らかにしていくことです。 そこで、考える対象区域は園路から見える範囲としました。 また、野鳥の繁殖期でもあることから、園路からの観察による話し合いとしました。


頂部斜面〜谷頭凹地
飯室山の見晴台の前が頂部斜面にあたる部分で標高70〜78mの範囲と思われます。 アズマネザサが1m以上の高さに密生し、アカメガシワ、ヌルデ、ヤマハゼなどが繁茂しています。
丸太階段の園路を降りながら、周辺を観察して行きました。
コナラの林を縫うように降りていくと、園路脇に1本だけスギがありました。
左手に谷頭急斜面が見えだすとエノキやエゴノキが目立つようになりました。
右側に急斜面が迫っている部分にはカシ類が繁茂しています。
中間にあるデッキの辺りは平坦な開けた感じのササ原になっています。
デッキの部分は標高51m程、夏は適度な木陰になっていそうです。蚊の襲来を防げれば、気持ちの良い休憩場所になると思われます。
区域中央部のデッキに集まって、目標イメージを描き、植生管理について話し合いました。

途中、大きなヤマザクラが倒れていました。


急な谷筋の園路
デッキから下の区域です。園路沿いにクマザサが繁茂しています。クマザサについてはいろいろ意見も分かれるところだと思いますが、古い葉が汚らしくなっています。このまま放置するのは問題がありそうです。
少し降りると、水流側にニワトコの大木が何本も集まっています。木道の上に枝を広げている大木は伐ろうという合議がなされました。
谷の両側の谷壁斜面は勾配がきつく、上の方のアズマネザサは長期間放置されているようで荒れた感じを与えます。 この園路の雰囲気を悪くしているのは長い間人の手がはいっていないためのように思われます。 ガビチョウが何羽も見られたことと関連があるかも知れません。


長者穴古墳の看板は汚れて、何が書いてあるのか判読が難しくなっています。
この古墳は古墳時代、7世紀後半〜8世紀初頭に築かれたもので、30程の横穴が斜面に開いています。 外側から見る穴は小さいものの、内部はちゃんと羨道と玄室に別れており、河原石で敷き詰められた本格的な古墳です。 鉄鏃(てつぞく)・直刀・釘・銅釧・金環・勾玉・管玉・小玉などが出土しています。 調査によって、家族ごとに埋葬されていたらしいことも分かっています。
急な斜面にはアズマネザサが生えていますが、枯れて倒れているものがあったりして、荒れた印象を与えます。
反対側の斜面も急ですが、下の方はクマザサが繁茂しています。古い葉が汚らしい印象を与えます。 上の方はアズマネザサで、これも随分荒れた感じになっています。

斜面下部を占めるクマザサが汚らしくなっています。


長者穴口を出て、外から観察します。 長い間、殆ど適切な管理はされていなかったようです。 中央にアカメガシワの大木が生えています。 両側に植栽されたと思われるリョウブがありますが、片方は弱り、片方は枯れています。 夏にはクズやフジの繁茂も酷かったのだろうと思われる残骸が残っています。
生田緑地の入口にアカメガシワの大木は似合わないという意見が強かったのですが、伐採する前に説明書きの掲示が必要との意見が出ました。

飯室山見晴台まで戻る途中の園路脇にあるスギです。 目標とする樹林のイメージには合わないので伐りたいという意見が出されました。


話し合った事柄を確認しながら飯室山まで戻りました。
雨が降り始めました。ここから下山した方が都合がいい人もいることから飯室山山頂で解散にしました。

話し合った結果などについては別に植生管理計画として整理し、植生管理協議会に諮りたいと思います。
今年度実施する植生管理の内容、範囲、実施主体などは、更に調整を行って決めていきたいと思います。
参加してくださった皆さん、有り難うございました。

   かわさき自然調査団の活動
特定非営利活動法人かわさき自然調査団
Kawasaki Organization for Nature Research and Conservation