生田緑地の自然保全活動

 

水辺調査
日時 2012/9/20(木) 12:30〜13:25 晴
場所 生田緑地 城山下谷戸〜稲目谷戸の水辺
岩田臣生

この日は市公園緑地まちづくり調整室によるヒアリングがあります。約束の13:30まで、少し時間があったので、水辺を見ておくことにしました。 特に、11日に土嚢を並べたところが、どうなっているか見ておきたいと思いました。
オニヤンマが浅い水流の上を飛んでいました。
水辺には、ヤブランやヤマホトトギスが咲いています。

稲目谷戸では、ツリフネソウが益々盛んに咲いて草地一面に広がりそうな勢いです。

コノシメトンボが棒の先端に止まっていました。
コノシメトンボ♀


生田緑地の自然に手をつける活動をしている団体への
ヒアリングがありました! part.2

日時 2012/9/20(木) 13:30〜16:30 晴
場所 生田緑地 中央地区
ヒアリング担当 (川崎市総合企画局公園緑地まちづくり調整室)和田、荻原、磯部
        (多摩区道路公園センター)佐藤、井上、齋藤
        生田緑地マネジメント会議準備会担当コンサルタント 1人
(特定非営利活動法人かわさき自然調査団)岩田臣生、岩田芳美



集合は東口ビジターセンター2階として、まず、東口北側雑木林から始めることにしました。

【A13】(東口北雑木林)
この林は典型的なコナラ林です。
高木層にはコナラ、クヌギ、ヤマザクラ、イヌシデ、ハリギリ、アカマツ、モミの7種が15mほどの高さで茂り、その下にはシラカシ、コブシ、エゴノキも育っています。
低木層にはヒサカキ、ネジキ、ヤマツツジ、マルバウツギ、ムラサキシキブなど20種の木が被度60%で茂っています。
ネジキ(ツツジ科)は、県内では、丹沢、箱根、小仏山地の岩尾根に分布している植物です。(神植誌01)生田緑地で見られるのはここだけです。
さらに、草本層にはアズマネザサ、ヒメカンスゲ、タマノカンアオイ、アキノキリンソウなど54種類もの植物が生育しています。
調査した360uほどの林(調査区)に、70種の植物が生育しています。 林を構成する種類から、この林は関東地方に多いクヌギ−コナラ群集と規定されます。(藤間煕子調査)

また、この林に生育する植物のうち1種は、神奈川県内では小仏山地(藤野町)と生田緑地のみに生育する(神植誌01)もので、県の絶滅危惧TA類に指定されています。
この植物を保護するために、水田ビオトープ班+植物班は、年1回程度の選択的下草刈りなどを行っています。


【A21】(菖蒲池北雑木林)
菖蒲池北側の中央園路の北側の崖面にはホラシノブやコモチシダが分布しています。
ホラシノブは、日の当たる石垣や崖に生育するシダ植物です。 県内では比較的広く分布しているものの、個体数は余り多くないようです。
コモチシダは、県内各地に普通に見られるシダ植物ですが、葉に子どもができるという特異な生態から、シダ植物に関心を持ってもらう切っ掛けづくりに使えます。
シダ植物班では、この崖面のホラシノブとコモチシダの調査と保護を、2008年11月から毎月1回行っています。
ただ、今日の崖面の様子を見ると、シダ植物ばかりが元気で、リュウノウギクなど、秋の野菊が衰退しているように思われます。 また、ヤマグワなどの実生やモミジが崖面に育っています。 崖面については、木本は早いうちに除伐し、シダ植物以外の植物も花を咲かせるように、管理した方がいいと思われました。


(クスノキの辻周辺)
東口から中央広場にかけては外来植物が多く見られます。 2010〜2011年の中央広場の改修では、今まで生田緑地では見られなかった植物が多数持ち込まれたようです。
植物班では、第6次川崎市自然環境調査の中で、生田緑地のフローラ調査を行っており、2008年から始まったモニ1000植物相調査で同じ調査ルートの植物相調査を実施しています。 これらの調査ルートが中央広場を含んでいるため、こうした変化が明らかにされてきました。
こうした調査によってあきらかになった中央広場周辺の外来種の駆除についても、植物班が年1〜2回実施しています。
また、中央園路沿いの草刈りは8月末〜9月初旬には実施してほしいと思います。 メリケンカルカヤが勢力を伸ばしていて、クスノキの辻から公園管理事務所まで広がってしまいました。


(菖蒲池周辺地区)
・滝下の池
青少年科学館の外構工事のうち、不要となった階段を撤去した後の土留工事が適切でなかったのか、最近の降雨強度が強いためか、階段跡から土砂が流れて、池が埋まっていました。
水面が消えてしまったため、カワセミなどを観察することができなくなっています。


・菖蒲池北側斜面
ここには毎年、セイタカアワダチソウが繁茂します。
セイタカアワダチソウは、明治時代に鑑賞用に北米から輸入された植物で、昭和初期には帰化が記録されています。
繁殖力が強く、外来生物法により要注意外来生物に指定され、また、日本生態学会によって侵略的外来生物100にあげられています。
菖蒲池の周囲は全て植栽で、庭園的管理がなされている所ですので、セイタカアワダチソウの刈り取りも、行政側で実施してほしいと思います。

菖蒲池
菖蒲池には、国の準絶滅危惧種であり、県の絶滅危惧TB類でもあるシダ植物が生育しています。
この保護については、2009年7月3日に、当調査団、北部公園事務所、菖蒲の栽培管理を担当している業者が現地で協議し、その方法を決め、保護管理を業者が行っています。
この日は、当該植物を保護していた区域が無くなり、端に、一列に並べられている状態が観察されました。
保護区といっても、1平方メートルもあればいいので、菖蒲池の片隅に確保しておいて戴きたいと思います。


【A19】(菖蒲池南谷戸)
ここは、2008年7月の市民部会の勉強会「微地形と植生の対応関係を見る」を開催し、現地に直接、微地形の区分線を描く活動を行った所です。
その後、2009年10月の市民部会で植生管理について話し合い、植生管理計画を作成し、12月の市民部会、翌2010年1月の市民部会で、上部谷壁斜面の亜高木層を優占していたヒサカキを伐採しました。
ここは草本層に何も見られない状態でしたが、この植生管理を実施後も、一部の植物がみられるだけの状態が継続しています。
伐採したヒサカキの樹齢は50年弱でした。 林床に草本の無い状態は短期間のものではなかったようです。 この時は微地形の区分の単位で伐採を行いましたが、亜高木層を優占するヒサカキの除伐は、外側から少しずつ行った方が良いと、今は、考えています。



【A20】(菖蒲池南斜面)
菖蒲池南側の斜面は、一面にアオキが密生していた所でしたが、2008年11月の市民部会で、このアオキを除伐しました。
その後、アオキの切り株からの萌芽は掻き落としていますが、草本層は一向に賑わってきません。 毎年、数本のコナラの実生が発芽しますが成長しません。
南側の崖上に生えているヒサカキや斜面下のスギが斜面を暗くしていると思われます。
今年4月の市民部会での意見交換で、これらの樹木の伐採が提案されています。 その後の植生管理協議会において、この計画は承認されています。 そこで、今年10月から2013年2月までの間に実施しようと考えています。


【A01】(野鳥の森)、【B01】野鳥の森の水辺
野鳥の森地区については、2007年4月の市民部会で目標植生について意見交換を行い、「常緑樹が、夏、園路に涼しい木陰をつくる、少し暗い雑木林」を目指すことになりました。
具体的な植生管理については、植栽のサザンカは不要という意見が多かったものの、反対意見もありました。
また、アオキが多くて、アズマネザサが負けているという意見があったものの、アオキの除伐は反対する人もいました。。
上の出入り口付近の植栽の常緑樹(ツバキ)は除伐した方がいいという意見がありました。
その後、アオキの実生が増えて目立つようになったことから、園路沿いの実生については、水田ビオトープ班が抜除しています。
今年4月の市民部会をもとに具体的な植生管理を計画し、植生管理協議会に諮り、野鳥班との協議調整ができたらという条件付きで承認を得ています。
野鳥班との話し合いでは、サザンカについては1本1本、一緒に確認しながら、剪定して、可能な範囲で低くすることなどの変更をすることで合意できました。
ただ、今回検討している植生管理計画の全てを今期に実施するというのは適切ではないと考えていて、最短でも5年はかけて、少しずつ進めることにしたいと思っています。

水流については、棲息する生物の棲息環境を保全する活動を水田ビオトープ班が行っています。
活動は10月〜2月に行っています。
側溝に湧水が流れていて、本来の水流が消えかけていました。側溝の一部に穴をあけて、水流に流し入れてほしいと思います。
また、都市計画街路の整備に伴う関連道路整備に伴う補償としてポンプ設備を、2010年3月に整備していただきました。 これは、必要になった時に使えるようにしたもので、菖蒲池からの排水をくみ上げる形になっています。


【A16】(おし沼峠地区)
おし沼峠地区で行われる都市計画街路の整備に伴う関連道路整備に関して、2007年11月21日の生田緑地植生管理協議会において、市民部会が協力することが決められました。
そこで、2007年12月に、おし沼峠で市民部会を開催し、造成後の植生管理について意見交換を行いました。
この合議に沿って、2008年2月の市民部会で、ハンノキ林のアズマネザサの根を採取し、おし沼峠の造成法面に植えました。
また、2008年5月の市民部会で、ハンノキ林に発芽したコナラを採取して、おし沼峠の造成地に植えました。
その後、水田ビオトープ班では、植えた苗の保護のための草刈りをしていましたが、近所の方から「ドングリのなる木を植えるなんてとんでもない。止めてほしい。」と、 続けて2回も文句をいわれたため、ボランティア意欲を失い、この人に会いたくないとの気持ちから手入れを怠ることになりました。
市民部会の植樹に参加してくれた数家族の子どもたちには申し訳ない結果になってしまいました。


(ばら苑南西樹林)
ばら苑の南西の雑木林については、北部公園事務所から頼まれて、昆虫調査を実施しています。 多摩丘陵の雑木林の住人であるヤマトガガンボモドキなどが棲息していました。
また、2005年1月には樹林調査を行い、同年2月に2回、生田緑地の雑木林を育てる会と合同で、アズマネザサ刈りを行いました。
ところが、アズマネザサが刈られたら、犬に糞をさせる人が現れて、犬の糞だらけになってしまいました。 このため、暫く放置することにしました。
樹林としては、生田緑地の中ではトップクラスの良好な雑木林でしたが、 この日、現地を外側から見た限りでは、アズマネザサが大きく育ち、気持ちのいい雑木林だった昔日の面影はどこにもありませんでした。
適度な頻度での下草刈りが必要だと思います。
当該地区は閉鎖管理されていますが、植生管理協議会の協議対象地区に加えていただきたいと思います。


【A24】(おし沼地区)
当該地区は生田緑地に編入されてから雑木林を育てる会が活動を始めていて、モウソウチクの除伐を行っていました。
2011年6月に市民部会を開催し、目標植生や植生管理のあり方について話し合い、現在の管理を継続することを決めています。


【A03】(つつじ山地区)
2009年5月に市民部会を開催し、当該地区の植生管理について話し合いました。 また、同年9月にも、市民部会を開催し、区域を細分化した植生管理計画を作成しました。
今年、2012年5月にも市民部会を開催し、具体的な植生管理について話し合っています。

(つつじ山D区)
目標植生を、「園路際にシラヤマギクなどの野草がたくさん見られ、自然観察が楽しい雑木林」としています。
このためには、年1回、冬期の下草刈りを行うことになると思いますが、現在、この植生管理の実施主体は未定です。


(つつじ山A区)
草地広場の部分です。
7月初旬と8月末の年2回の草刈りを、行政(業者)が実施することになっています。
しかし、この日の草地の状態を見る限り、8月末の草刈りは行われていないと判断されます。 メリケンカルカヤが広がっていました。
メリケンカルカヤは、1940年頃に愛知県で帰化が確認された北米原産のイネ科の外来種で、外来生物法によって要注意外来生物に指定されています。
9〜10月に稈を伸ばして多数の穂をつけるので、8月末〜9月初めの草刈りが対策になります。


(梅園東側の園路)
2012年5月の市民部会で、アセビの生垣を木柵の高さに剪定することを話し合いました。
植栽の生垣としての管理なので、行政に任せればいいと思いましたが、雑木林を育てる会から実施したいという申出がありましたので、お願いすることになりました。

中央広場に降りる園路沿いの植生管理についても、最近の市民部会において話しあったことなどを説明し、クスノキの辻で別れました。
2回にわたって、生田緑地の自然の保全活動について現地を案内し、説明を行いました。 初めての経験でしたが、くたびれました。


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特定非営利活動法人かわさき自然調査団
Kawasaki Organization for Nature Research and Conservation