川崎の野生生物
トンボ科のトンボ

シオヤトンボ  シオカラトンボ  オオシオカラトンボ
マユタテアカネ  ミヤマアカネ  リスアカネ  ヒメアカネ  アキアカネ
ノシメトンボ  コノシメトンボ  ネキトンボ
ショウジョウトンボ
ウスバキトンボ


シオヤトンボ
Orthetrum japonicum japonicum 
トンボ科 シオカラトンボ属
 神奈川県RL要注意種
特に県東部での減少が著しい。
平野部から丘陵地にかけての水深の浅い止水域に棲息。

(上)2004/5/2 生田緑地、岩田臣生


(上)2006/4/30 生田緑地、岩田臣生




シオカラトンボ
Orthetrum albistylum speciosum Uhler, 1858
トンボ科 シオカラトンボ属
田んぼや湿地に普通に見られるトンボ。
生田緑地では5月から10月と長期間見られる。♂は田んぼなどの水面を縄張りとして、
オオシオカラトンボ などを追い払ってしまう。

シオカラトンボ♂
(上)2007/8/18 生田緑地にて、岩田臣生撮影

シオカラトンボ♂
(上)2006/8/21 生田緑地にて、岩田臣生撮影

シオカラトンボ♀
(上)2009/8/20 生田緑地にて、岩田臣生撮影




オオシオカラトンボ
Orthetrum triangulare 
トンボ科 シオカラトンボ属
北海道、本州、四国、九州、沖縄に分布。
オスは止水域に縄張りをつくる。シオカラトンボに似ているが、全体に青黒い灰色で、後翅の付け根付近が黒くなっている。

(上)♂ 撮影/2006/8/21 川崎市多摩区、岩田臣生


(上)♂♀ 撮影/2008/7/2、川崎市多摩区、岩田臣生




ヒメアカネ
Sympetrum paruvulum (Bartenef)
トンボ科 アカネ属、
神奈川県 要注意種
北海道〜九州に分布。丘陵地の湿地や休耕田に生息。
日本最小のアカトンボ。

写真/ 2009/8/12 川崎市多摩区生田緑地にて、岩田臣生撮影
生田緑地では消滅したと思っていましたので驚きました。撮ってくださいとばかりに目の前に現れて逃げませんでした。




マユタテアカネ
Sympetrum eroticum 
トンボ科 アカトンボ亜科 アカネ属、
神奈川県RL要注意種

北海道、本州、四国、九州に分布。平地や丘陵地の木陰があるような池、湿地に棲息する。
翅が透明、無斑の赤トンボ。一部メスにはノシメトンボのように翅の先端に黒褐色の斑がでる個体もいる。前額に2つの黒斑が眉のようにある。

レッドリストの指定を受けている(要注意種)のは神奈川県だけですが、関東地方では全体的に個体数が減少傾向にあるそうです。
減少の原因は、幼虫の生息環境である湿地・止水の減少・環境悪化と思われると聞きました。
神奈川県でレッドリストの指定を受けているのは、他県に比べ水辺環境がより貧弱となっているからだそうです。


(上)♂ 2010/10/07 生田緑地にて、岩田臣生撮影

(上)♂ 2009/11/07 生田緑地にて、岩田臣生撮影

(上)♀ 2008/9/3 生田緑地にて、岩田臣生撮影

(上)♀ 2007/9/24 生田緑地にて、岩田臣生撮影




ミヤマアカネ
Sympetrum pedemontanum elatum  Selys 1872
トンボ科 アカトンボ亜科 アカネ属 
神奈川県準絶滅危惧種
本州、四国、九州に分布。丘陵地や低山地の水田、湿原などの緩やかな流れの所に棲息。

(上)2006/10/8 川崎市麻生区黒川谷ツ公園にて、岩田臣生撮影




リスアカネ
トンボ科 Sympetrum risi risi Bartenef,1914
腹長23〜30mm、後翅長27〜34mm。翅端(縁紋の内角から先)に顕著な黒褐色帯がある。 眉斑はない。成熟した♂は腹部のみが赤くなる。翅胸側面の真ん中の黒色条が上にとどかない。
和名はスイスのトンボ学者F.Risに献呈されたもの。
本州東北部〜九州南部、朝鮮半島、中国、ロシアに分布。
平地から低山地にかけての木立で囲まれたようなやや暗い池沼で見られる。ただし、ある程度自然度の高い環境でないと見られない。成虫は7月中旬〜11月上旬に見られる。


(上)2008/9/8 生田緑地、岩田臣生撮影




アキアカネ
Sympetrum frequens 
トンボ目トンボ科アカネ属
 繁殖するのは通常平地または丘陵地、低山地の水田、池沼、溝などであるが、まれに標高2000m代の高所からの羽化記録もある。5月末から6月下旬にかけて夜間に羽化した成虫は、朝になると飛び立って水辺を離れ、1〜2日間草に止まったまま体が十分固まるのを待つ。その後近辺の樹林、植栽木などに集合して群れとなり、4〜5日間を摂餌に費やして様々な小昆虫を空中で捕食し、長距離飛翔に必要なエネルギーの蓄積を行う。
 十分体力がついた個体は単独で、あるいは群れを成して、日中の気温がせいぜい20〜25℃程度の3000mぐらいまでの高標高の高原や山岳地帯へ移動して、7〜8月の盛夏を過ごす。未成熟成虫が水辺を離れて生活するのは他のアカネ属の赤とんぼのみならず、非常に多くのトンボに共通した習性ではあるが、アキアカネの場合この移動が極端に長距離となる。低温時におけるアキアカネの生理的な熱保持能力は高く、活動中の体温は外気温より10〜15℃も上昇するが、高温時の排熱能力は低い。そのため暑さに弱く、気温が30℃を超えると生存が難しくなり、このことが季節的な長距離移動の原因と考えられている。酷暑の年には移動先はより高い標高の地域となり、冷夏の年にはそれほど高いところまでは移動しないことが示唆されている。
夏に高地で摂食を続けている間に、生殖腺などの内部組織が発達、充実し、最終的に体重が2〜3倍に増加する。昆虫などの節足動物は脱皮後に体の大きさは増大するが、それは消化管内にのみこんだ水や空気の圧力で外側の外骨格だけを膨張させているため、しばしば内部はすかすかの状態である。そのため、脱皮後は成長しないように思われがちだが、実は外骨格の膨張に伴っていなかった内部組織の成長が起こる。
 十分成熟した成虫、特に雄は体色がオレンジ色から鮮やかな赤に変化し、通常秋雨前線の通過を契機に大群を成して山を降り、平地や丘陵地、低山地へと移動する。成虫の群れは低地に到着すると雌雄が結合したまま飛びまわり、稲刈りの終わった水田の水溜りのような産卵適所を探索する。このような浅い水溜りを発見すると、近くの草むらや地面で約10分ほど交尾を行い、交尾が終了するとやはり雌雄がつながったまま水面の上に移動する。産卵は水面の上で上下に飛翔しながら雌が水面や水際の泥を腹部先端で繰り返し叩き、その度に数個づつ産み落とす。産卵が終わると雌雄は連結を解き飛び去り、夕方は単独行動を行うが朝になると再び雌雄が連結して生殖活動に移る。成虫は11月まで見られ、中には12月上旬まで生き延びるものもいる。
 卵は水中や湿った泥の中で越冬し、春に水田に水をはる頃になると孵化し、幼虫(ヤゴ)となる。
 アキアカネのヤゴは、体は短いが肢は非常に細長く、クモのような姿をしている。 頭部は横長で複眼は前側方に突出している。終齢幼虫に達した段階のヤゴの体長は17〜20mm、頭幅は6.5〜8mm。 ヤゴは田植え直後の水田に大発生するミジンコなどを活発に捕食して急速に大きくなり、初夏の夜にイネなどによじ登って羽化する。
 神奈川県昆虫誌では、「生田緑地(林,1990; 林・小林,1991; 増渕,1999; 苅部他,2000; 2003」と記録されている。
写真/ 2009/6/6(土) 稲田公園児童プールから救出、岩田臣生撮影
ヤゴは背棘が第4〜8腹節にあり、第8腹節の側棘が第9腹節後端にとどいている。

アキアカネ♂ 2006/9/28 生田緑地にて岩田臣生撮影

アキアカネ♀ 2005/10/1 生田緑地の田圃で岩田臣生撮影

アキアカネ 2011/9/23♂ 生田緑地の田圃で岩田臣生撮影




ノシメトンボ
Sympetrum infuscatum (Selys)
トンボ科
国内では北海道から九州南部にかけて分布し、国外では朝鮮半島、中国、ロシアに分布する。
成熟成虫は、おもに平地から低山地にかけての開けた池沼、水田などで見られる。 例年6月後半頃より羽化し、その後開けた場所からいったん姿を消すが、秋季に入ると再び平野部の水域に戻ってくる。
八ヶ岳少年自然の家には多数群れており、このような高原で夏期を過ごしていることが分かる。

(上)2007/8/11(土) 八ヶ岳少年自然の家のビロードモーズイカの先端にとまっていたものを岩田臣生撮影

(上)♀ 2008/10/3 生田緑地、岩田臣生




コノシメトンボ
Anax parthenope julius Brauer, 1865
トンボ科 アカネ属 
成虫の翅の先端部は黒褐色。雌は顔面上部に小さな眉斑。
7〜12月に出現。何も無い水面に打水産卵する。

幼虫(ヤゴ)の特徴は、(1)背棘が第4〜8腹節にあること、(2)第8側棘が第9腹節後端にとどかないこと、(3)腹部第9節の側棘が第9節の長さと同じことなどである。
2009/6/6 プールから採集した幼虫 2009/6/6 プールから採集した幼虫 撮影/2009/6/6
2009/6/15 羽化 2009/6/15 羽化 2009/6/14 2009/6/15 撮影/2009/6/15

2009/9/22 撮影/2009/9/22 生田緑地下の田圃、岩田臣生




ネキトンボ
(根黄蜻蛉) Sympetrum speciosum speciosum 
トンボ科 アカネ属 
5〜11月に出現。打水産卵。幼虫越冬。
未熟なうちは雌雄とも黄褐色を基調とした体色で、成熟した雄は全身が赤化し、雌は腹部背面のみ赤化する。

下の写真は、里山の自然学校の「プールのヤゴの救出作戦」で稲田公園児童プールから採集した幼虫(ヤゴ)が羽化するところを撮影したものです。 ヤゴの特徴は腹部第4〜7節に背棘があり、腹部第9節の側刺の長さが節の長さにほぼ等しい。
2009/6/6 プールから採集した幼虫 2009/6/6 プールから採集した幼虫
撮影/2009/6/6
2009/6/15 羽化 2009/6/15 羽化
2009/6/15 羽化
撮影/2009/6/15
2009/6/16
2009/6/16
撮影/2006/6/16




ショウジョウトンボ
Crocothemis servilia mariannae 
トンボ科 ショウジョウトンボ属



(上)♂ 2013/7/23 生田緑地、岩田臣生撮影

(上)♀ 2008/7/17 生田緑地、岩田臣生



ウスバキトンボ
 
トンボ科 ウスバキトンボ属

体長 5cm。
ヤゴは水温 4℃で死滅すると言われ、毎年、東南アジアから渡って来て、世代交代を繰り返しながら北上しています。
川崎では、5〜6月に飛来し、田圃などで産卵、孵化、そして羽化しています。


 (上) 2005/7/21 生田緑地(岩田臣生)

 (上) 2009/7/25 生田緑地(岩田臣生)


特定非営利活動法人かわさき自然調査団
Kawasaki Organization for Nature Research and Conservation