生田緑地観察会
主催 青少年科学館
“里山の自然”


日時 2016/10/16(日) 10:00〜12:00 晴
ガイド講師 水田ビオトープ班(岩田臣生)、事務局(岩田芳美)
観察会参加者 13人(大人 12人、子ども 1人)
    市内 12人: 麻生区 2、多摩区 0、宮前区 6、高津区 2、中原区 0、幸区 1、川崎区 1
    市外 1人: 横浜市 1

生田緑地観察会「里山の自然」は、川崎の市街地に囲まれた生田緑地に保全されている多摩丘陵在来の自然を観察して歩くものです。
今回の参加者は 13人でしたので、ゆったりと楽しめたことと思います。

まずは、中央広場北側の雑木林から観察しました。
ここでは、コナラ林の林床に咲く、カシワバハグマ、コウヤボウキなど、秋の花を観察しました。
年1回程度のアズマネザサ刈りによって、これらの花が楽しめる雑木林として保全されています。

七草峠付近では、ヒゴスミレなどの保護を目的に、年1回程度の草刈りをしている崖面のノガリヤス、ホトトギス、ヤマユリ、オトギリソウ、ヒゴスミレ、カニクサ、サルトリイバラなどを観察しました。
黄色一色の秋型キタキチョウが5〜6匹、ハギに飛来していました。ヤマトシジミもいました。

中央園路沿いの植栽の上に、ヒヨドリジョウゴの赤い実が観察できました。また、ヨウシュヤマゴボウの実も観察できました。
また、カニクサ、イノモトソウ、ハナワラビの仲間、ベニシダなど、シダ植物の中でも外見が特徴的なものは観察しました。 ○○の仲間程度でも見当がつくと、自然観察がより楽しくなります。
イヌコウジュも観察しました。

今年はドングリが少ないのですが、落ちていたクヌギのドングリ拾いを楽しんでもらいました。
生田緑地の雑木林は、クヌギやコナラが最も多い構成種です。
クヌギのドングリは初めて見るという人もいました。
ただ、残念ながら、数が少なく、また、表面に穿孔があるものばかりでした。 落下してから時間が経っているような、完全に乾いたドングリが多かったのが残念でした。

谷戸への階段を降り始めた辺りでは、キブシが、もう来春の開花の準備を始めて、蕾をつけているのを観察しました。
生田緑地の雑木林の低木層に多く見られるヤブムラサキの葉を触って、その毛の感触を味わってもらいました。 ムラサキシキブに出会った時に、その違いを体感できるでしょう。
ヤブムラサキには、チャバネアオカメムシがいました。
ハンショウヅルの冠毛をつけた種子を観察しました。 里山管理で毎年刈ってしまうと、花をみることができません。ここでは、花や種子を観察できるように管理しています。
花の時期ではありませんが、タマノカンアオイは大事な観察対象です。 川崎を標本原産地とする植物は、他には無いと思います。
オカタツナミソウのオタマのような種子殻を観察し、春には、谷戸の各所で観察できることを話しました。

草地を目指して植生管理をしている斜面も観察しました。
ヤブミョウガ、ハギ、ヤブマオ、コメナモミ、ツリフネソウ、イノコズチ、チカラシバ、ヤブタバコ、ハナタデ、キツネノマゴなど、昆虫が飛び出してくれないと植物の観察会になってしまいます。
しかし、この辺りから、ツリフネソウの実が弾けるようになりましたので、子どもも退屈することがなくなりました。

萌芽更新地区付近では、見上げるとオニグルミの実がなっています。犯人は不明ですが、葉が全て食べられてしまっています。
メヤブマオ、ジョロウグモなども観察しました。

ここは、自然林であるハンノキ林の上端部ですが、目前にはコナラ林が観察されます。
冬なら見分けるのは容易ですが、この季節では、木肌を見ても、クヌギとハンノキを見分けるのは難しいようです。
生田緑地の湧水は、この辺り(標高)から滲み出し始めています。

ハンノキ林上の池は、自然の湧水溜まりに見られました。
公園整備によって造られた溜まりであることを説明すると驚く参加者もいました。
参加者の身近な場所でも、よく見られるようで、流れ込みの部分が赤茶色になっているのを見て、鉄バクテリアの話になりました。
水面に油膜が見られる原因は分かりません。
谷戸の一番奥の水溜まりは、特別な環境で、ヤブヤンマなども観察される話をしました。
水路や池の整備についての質問があったことから、水路を掘ることが湿地の陸地化を促進することもあることなど、水辺管理の話なども少し行いました。

サンショ、ヤクシソウ、オトコエシ、カラムシ、ノダケ、シロヨメナ、マンリョウ、リョウメンシダを観察しました。

秋の里山を歩いていると、つる性のマメ科植物が楽しめます。
ところが、ピクニック広場下から気をつけていたものの、見つかるノササゲには実がありませんでした。
ハンノキ林から少し出た所で、やっと、ノササゲの実を観察することができました。 ただ、残念ながら、紫色は鮮やかなものではありませんでした。

梅畑には、コブナグサが咲いていました。
黄八丈の染料になることを話すと、途端に、皆さんが関心を示しました。

キンミズヒキの実もヒッツキムシです。特異な形に参加者の関心を集めました。

オオバコ、ヤブマメなども観察しました。

ツリフネソウの花は盛りを過ぎました。
葉を食べ尽くされたジュズダマが参加者の関心を集めました。
これは、クロコノマチョウの幼虫が食べたものですが、その成虫が見られないかと探したところ、羽化して間もない成虫と抜殻となった蛹が、同じ場所に見つかり、観察しました。
成虫は、こんな色ですが、幼虫や蛹は、輝くような黄緑色で美しいことは説明しました。

その直ぐ後ろ、木道から覗ける場所に、シュレーゲルアオガエルが見つかりました。
谷戸を代表する生物です。
谷戸に田圃を再生したことで、アズマヒキガエル、シュレーゲルアオガエル、ホトケドジョウ、止水性のトンボ類などの繁殖の場になっている話をしました。
農業の田圃ではなく、かつてあった田圃という水辺環境を再生・保全しているものです。

クサギの実が鮮やかな色を、緑に添えていました。
下の田圃付近では、木道の両側に、ヨシ、オオミゾソバ、ミゾソバの花が観察できました。
ここでは、野鳥のために、ヨシが枯れても、4月までは、そのまま刈らずにいることを説明しました。
川崎の市街地の中で、このような景観に出会えることは素晴らしいことだと考えています。

観察会の途中、ヒヨドリ、ガビチョウなどの声が聞かれましたが、解散直前に、近くのモウソウチクの先端で、モズが囀っていました。


特定非営利活動法人かわさき自然調査団
Kawasaki Organization for Nature Research and Conservation