生田緑地の雑木林の植生管理 〜生田緑地植生管理協議会市民部会の活動〜



かわきた第224号(2010年1月発行)掲載 川崎の自然をみつめて
生田緑地の雑木林の植生管理
〜生田緑地植生管理協議会市民部会の活動〜

かわさき自然調査団 岩田臣生

2004年秋に、生田緑地の自然を保全するためのイメージを共有するためのシンポジウム「市街地の中の里山“生田緑地”の自然をどう考え、どう保全するか」を開催しました。
里山の明確な定義は別として、田んぼと水流、そして斜面の雑木林が里山の要素として考えられます。 かつての里山は薪や炭の材料を採ることで管理されていました。生田緑地は生活利用目的で管理されることはありません。しかし里山としての手入れは必要です。雑木林は遷移が進み、あちこちに常緑樹の暗い林ができつつあります。遷移を促進するというのも一つの選択肢ではありますが、それは意識的に区域を特定して管理しなければ次第に広がっていくでしょう。
生田緑地の雑木林が鬱蒼とした、暗くて下草も生えない樹林になることは殆どの人が望んでいないと思います。早春の木々が芽吹き始める前に地表では冬の日照を受けていくつもの植物が開花し、木々の芽吹きは樹林の微妙な美しい色合いを変化させ、やがて濃い緑色に変化し、様々な花を咲かせ、昆虫類が活発に飛び回り、秋の訪れとともに木々は黄葉し、冬には葉を落とす、そんな季節の変化がある景色、それが雑木林であり、生田緑地は多様な生物で賑わう雑木林であり続けて欲しいと思います。
そのためには適切な管理が行われる必要があります。前述のような生活のための利用という目的は成り立ちません。しかし、大都市の市街地には人という資源があります。都会の大勢の人の中には、雑木林の手入れをすること、今いる生物が生き続けられるように棲息環境を保全すること、消えてしまった植物を復活させること、様々な在来の昆虫や野鳥が棲み着いて生物が増えてくれること、等々を目的にボランティアとして汗を流してもいいと思う市民がいるはずです。そんな人たちを受け入れて、計画的に植生管理を進めようというのが市民部会の一つの柱です。
多様な生物が棲息する場(ビオトープ)は豊かな社会を象徴する新しい社会資本であると思います。大都市に生活する人にとって里山の自然は気持ちをリフレッシュさせ、都市のストレスを解放して安らぎをもたらします。都会だからこそ、身近に自然に接することができる場があることの意味は大きいと思います。
2006年に発足した市民部会は、生物の生息する場である雑木林の植生管理を話し合いによって計画し、市民と行政の協働によって推進しようとしています。計画づくりや植生管理に参加してくれる市民はまだ僅かですが、誰でも参加できる開かれた合意形成に基づいて進めることが大切であり、市民が主体的に関わることで持続可能な植生管理のシステムになると考えています。
デスクワークに疲れた頭を休めたくなったら、市民部会に参加してみませんか。

この文章は、かわきた第224号 2010年1月発行に掲載されたものです。
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特定非営利活動法人かわさき自然調査団
Kawasaki Organization for Nature Research and Conservation