川崎の自然、生田緑地の自然



かわきた第217号(2009年1月発行)掲載 川崎の自然をみつめて
川崎の自然、生田緑地の自然

かわさき自然調査団 岩田臣生

 生田緑地の谷戸で保全活動をしていると、ケラ、シュレーゲルアオガエル、ホトケドジョウ、シマヘビ、トカゲ、シオヤトンボ、マユタテアカネなどが、かなり普通に棲息していることが分かる。しかし、市街地の中では、こうした生物に出会うことは難しい。神奈川県レッドデータ生物調査報告書2006では、これらは要注意種とされた。かつては市町村レベルでみれば普通に棲息が確認されていたが、それが危ぶまれる状況になってきたということである。棲息地域ということで見ると、更に地域的な偏りは顕著となるだろう。生田緑地では普通に出会えるということは里山らしい環境が残っていることの証と考えられる。
尤も、川崎に棲息している生物は全国的に見れば、特別な種ではない。川崎市は自然環境としては特異な環境にはないのだから希少種はない。しかし、環境省の指定する絶滅危惧種は多数見られる。このことは全国的な規模で里山環境が喪失しつつあること、それに伴って今まで普通に棲息していた生物が各地から消えつつあるということを表している。
また、社会環境を考えれば、生田緑地は半世紀にわたる都市化を経験し、大都市の市街地の中の孤島の如き存在である。それにも関わらず、半世紀前の里山の環境と生物を辛うじて残しているのである。神奈川県東部地域の都市化は水辺を消失させ、水生昆虫は危機的状況にあると専門家は指摘している。第5次川崎市自然環境調査(2003/3報告)では、川崎市内に49種のトンボの棲息が記録され、10種の絶滅が報告されたが、現在は更に減少していると推察される。
生田緑地の生物相は湧水によって支えられている。多様な生物が棲息する環境は川崎としては貴重な資源といえる。人工的には造ることのできない社会資本として考える必要があるだろう。
谷戸の水辺には4月頃、先ずシオヤトンボが現れる。その後、シオカラトンボ、オオシオカラトンボ、クロスジギンヤンマ、ヤマサナエ、そしてオニヤンマが谷戸の上空に群れる頃に夏を迎える。盛夏を過ぎるとリスアカネ、マユタテアカネが現れ、アキアカネが晩秋の水辺に群れる。
シオヤトンボ、ヤマサナエ、マユタテアカネ、リスアカネなどは県東部で激減しているとして要注意種とされた。今のところ生田緑地に来れば普通に出会えるが、ある日気がついたら絶滅していたということの無いように、少しだけ手を貸してあげてもいいだろうと思う。私たちが今、川崎で出会える在来の生物が次代においても棲息していることを願っている。



この文章は、かわきた第216号 2009年1月発行に掲載されたものです。
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