生田緑地ホタルの国のホタル・ガイド・ボランティア



かわきた第215号(2008年7月発行)掲載 川崎の自然をみつめて
生田緑地ホタルの国のホタル・ガイド・ボランティア

かわさき自然調査団 岩田臣生

 今年も生田緑地ホタルの国を開国しました。
日本の農業が大量の農薬を使用するようになって、様々な生物が身近な場所から消えていきました。それでも川崎のゲンシボタルは谷戸の奥深くに、ひっそりと、そして逞しく暮らしていました。その一つが生田緑地の谷戸です。
この谷戸は、国の補助事業として木道が整備されましたが、ホタルの里という名称によって近隣からホタル目当ての人を呼び込むこととなりました。
そこで、川崎市と私たちボランティアが協力して、夏至をはさむ3回の週末を含む2週間強の期間をホタルの国として、安全に、誰でも安心して観賞できる場所にする努力をすることとなりました。
当初はホタル指導員という名称を使い、ホタルを見に来る人達のマナーの向上を目指していました。
しかし、僅か数年で見違えるようにマナーが良くなりました。今では来られた方々のケアや自然についての情報の提供に重点が移行しつつあり、ホタル・ガイド・ボランティアという名称を使っています。
繰り返し来られる方が“ホタル優先、人は少し我慢”という生田緑地ルールとでもいうべき精神を当たり前のこととして広めてくれているようです。ホタル・ガイド・ボランティアは、こうした方々と会話をすることで、ホタルを暖かく見守る人の心の輪が広がっているのを実感していることと思います。
これは身近に棲息するホタルを皆で守ろうとする気持ちが着実に定着しつつあることの証だと考えています。
川崎のような大都市にも、生田緑地では自然の状態でホタルが棲息しています。そして、そのホタルとその棲息環境を大勢の市民がそれぞれの立場で大切にして、次の世代に継承していくことができたら、それこそ世界に自慢できる地域文化であると思います。
ホタルは季節ある日本の文化です。かつてのような螢狩りとは異なる形で、大都市川崎の文化として発信できるようになったらいいなと思っています。



この文章は、かわきた第215号 2008年7月発行に掲載されたものです。
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