里山の自然学校



多摩川 第109号( (財)とうきゅう環境浄化財団、2006/3/1発行 ) 4頁
里山の自然学校

特定非営利活動法人かわさき自然調査団
里山の自然学校事務局、水田ビオトープ班班長
岩田臣生

「里山の自然学校」のおいたち

里山の自然学校は平成17年度に始めたばかりの事業である。
その前年、公園の児童プールのヤゴの救出を体験したり、子どもたちを公募して生田緑地の夜の昆虫観察会を開催したり、生田緑地で田んぼを再生し、稲を収穫したり、様々に子どもたちに体験させたいと思うことを私たちが体験する機会が多くあり、更に、かわさき自然調査団の活動拠点である青少年科学館の新館長から子ども向けの事業を計画してほしいという話があったことから、かわさき自然調査団にしかできない子どもを対象とした事業として企画した。

カリキュラム作成の留意点

特定の小学4〜5年生を、年間通して相手にすることができるという状況を最大限に活かしたいと考えた。教育的視点から十分検討しようと、長年、市内の小学校の校長を歴任し、退官後、植物社会学の論文博士を取得した団員にこの学校の校長になってもらい、カリキュラムと我々講師側の指導をお願いした。また、四季の里山体験、田植えから脱穀までの米づくり、昆虫についての基本的なことを学習することの3本の軸を組み合わせた。

動機付けや工夫

かわさき自然調査団は20年以上にわたって川崎の自然を調査研究してきた団体である。プログラムによっては、その分野を専門とする団員に講師になってもらい、出会った生き物などについて専門的な話をしてもらった。子どもたちが、実際に動植物に触れて、五感を使って観察すること、納得するまで堪能させること、自分で考えることを基本とした。田植えや稲刈りでは基本的なことは教えたが、後は子どもたちにまかせた。ヤゴの救出作戦では、ヤゴに触れなかった子どもが友達の行動に刺激されて、いつの間にか触れるようになっていた。各回の内容の構成が様々であるため、各回で主役になる子どもも替わる。主役になれる機会をたくさん用意してやることも大事だと思った。

里山の自然学校を通して変わってきたこと

はじめのうち知識をひけらかせていた子どもが自然体験を通して素直に話を聞ける様になったり、触れなかった生き物を平気でつかめるようになったり、生き物を捕まえても観察したら逃がすということを当たり前のこととして行動するようになった。 子どもたちは皆、非常に個性的であり、毎回非常に楽しい時間を過ごさせてもらった。企画段階では子どもたちとどの様に接すればいいのか不安であったが、今では子どもたちと一緒に活動することを楽しめる様になった。大きく変わったのは私たちかも知れない。


この文章は、多摩川 第109号( (財)とうきゅう環境浄化財団、2006/3/1発行 ) 4頁に掲載されたものです。
《事務局へのメール》
特定非営利活動法人かわさき自然調査団
Kawasaki Organization for Nature Research and Conservation